高額療養費制度とは?申請しないと損・2026年8月の改正で何が変わるかをわかりやすく解説

入院や手術などで高額な医療費がかかったとき、その一部が後から戻ってくる制度があることを知っていますか。「高額療養費制度」といって、1か月に支払った医療費がある一定の金額を超えたとき、その超えた分を健康保険から受け取れる仕組みです。しかしこの制度、申請しなければ1円も戻ってきません。手続きを知らずに損をしている方が、残念ながらまだ多くいると考えられます。

さらに2026年8月からは、自己負担限度額が引き上げられる見直しが予定されています。今と同じ治療を受けても、自己負担が増える可能性があります。そうなる前に、今のうちに制度をきちんと理解しておくことが大切です。この記事では、仕組みから申請方法、2026年8月以降の変更点まで、順を追って説明します。

30秒でわかる要点

  • 高額療養費制度は、1か月の医療費が自己負担限度額を超えたとき、超えた分が支給される制度です。
  • 医療費100万円・3割負担で30万円を支払うケースでも、所得区分によっては自己負担が約8万〜9万円程度に抑えられることがあります。
  • 2026年8月から自己負担限度額の引き上げが予定されており、今と同じ治療でも自己負担が増える可能性があります。
  • 入院前は限度額適用認定証やマイナ保険証、支払い後は高額療養費の申請で負担を抑えられる場合があります。

高額療養費制度とは?まず仕組みを理解する

高額療養費制度とは1か月の医療費に上限がある制度

1か月の医療費に「上限」がある制度

厚生労働省によると、高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った医療費が、1か月(月の初めから末日まで)の間で上限額を超えた場合に、その超えた額を支給する制度です。

医療費の「3割負担」というのはよく知られていますが、実はその上にさらに「月ごとの上限額」があります。たとえるなら、スマートフォンの通話料に月上限がついているイメージに近いかもしれません。いくら使っても一定額を超えたら払わなくていい、という仕組みです。

具体的なイメージで考えてみましょう。医療費が100万円かかった場合、3割負担なら窓口での支払いは30万円になります。ところが高額療養費制度を使うと、年収約370万円〜約770万円の方(区分ウ)であれば、実際の自己負担は「80,100円+(100万円-267,000円)×1%」という計算式で、約87,430円まで抑えられます。残りの212,570円は高額療養費として支給されます。30万円と約87,430円では大きな差がありますね。

対象になるもの・ならないもの

高額療養費制度の対象となるのは、保険が適用される診療に対して患者が支払った自己負担分です。外来・入院・調剤薬局での支払い(処方薬の自己負担分)が対象になります。

一方で対象にならないものもあります。差額ベッド代(個室や少人数部屋への入院を選んだときの追加費用)、入院中の食事代、先進医療の技術料などは、この制度の対象外です。「病院で払ったお金なら全部対象」というわけではないので、注意が必要です。

対象になるもの対象にならないもの
保険診療の自己負担分差額ベッド代
入院・外来・調剤薬局での支払い入院中の食事代
複数の医療機関の合算(条件あり)先進医療の技術料
保険適用の処方薬の自己負担分健康診断・予防接種

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また、同じ公的医療保険に加入している家族が同じ月に医療費を支払った場合、それぞれの自己負担額を合算して上限額と比べることができます(世帯合算)。ただし、70歳未満の方の場合は、医療機関ごとの1か月の自己負担額が21,000円以上のものに限られます。1人では上限額に届かなくても、家族で合算すれば超える場合があります。

自己負担限度額はいくら?所得区分で変わる

高額療養費制度の自己負担限度額は所得区分で変わる

70歳未満の場合(2026年7月まで・現行)

自己負担の上限額は、年齢と所得に応じて決まります。70歳未満の方は、現行制度で次の5つの区分に分かれています(協会けんぽの場合)。

区分年収の目安月の上限額
区分ア約1,160万円以上252,600円+(医療費-842,000円)×1%
区分イ約770万〜約1,160万円167,400円+(医療費-558,000円)×1%
区分ウ約370万〜約770万円80,100円+(医療費-267,000円)×1%
区分エ約370万円以下57,600円
区分オ住民税非課税35,400円

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標準報酬月額28万〜50万円(年収の目安が約370万〜約770万円)の方が区分ウに該当します。給与所得者の方の多くはこの区分に当てはまるケースが多いでしょう。

70歳以上の方の場合

70歳以上の方は所得区分の考え方が異なります。「現役並み所得者」「一般」「住民税非課税世帯」という区分に分かれており、さらに「外来(個人ごと)」と「入院を含む世帯全体」でそれぞれ上限額が設定されています。

たとえば一般区分の方の外来上限は月18,000円(年間14.4万円の上限あり)、入院を含む世帯全体の上限は月57,600円です。また、住民税非課税世帯の方は外来が月8,000円、世帯全体では月24,600円となっています。70歳以上の親御さんがいる方は、親の所得区分をあわせて確認しておくとよいでしょう。

70歳以上の区分例外来(個人ごと)入院を含む世帯全体
一般区分月18,000円月57,600円
住民税非課税世帯月8,000円月24,600円

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多数回該当という救済措置

長期の治療が続いている方に特に知ってほしいのが「多数回該当」という仕組みです。直近12か月の間に高額療養費を3回以上受けた場合、4回目からは自己負担限度額がさらに引き下げられます。

たとえば区分ウの方であれば、通常は月80,100円+1%の上限が、4回目以降は44,400円まで下がります。がん治療など、月をまたいで長期的に医療費がかかる方にとって、負担が積み重なるのを軽減してくれる大切な仕組みです。

なお、多数回該当は同じ保険者(健保組合や協会けんぽなど)の中でのカウントです。転職などで保険者が変わると、それまでのカウントが引き継がれない点に注意が必要です。

【重要】2026年8月から何が変わる?

2026年8月から高額療養費制度で変わること

自己負担限度額が引き上げられる

2026年8月から、高額療養費制度の自己負担限度額(月の上限額)が引き上げられます。厚生労働省が公表している高額療養費制度の見直し資料によると、見直しの第1段階が2026年8月から、第2段階として所得区分のさらなる細分化が2027年8月から予定されています。

現行と2026年8月以降の主な変化は次のとおりです。

区分現行(〜2026年7月)2026年8月以降
区分ア相当252,600円+1%270,300円+1%
区分イ相当167,400円+1%179,100円+1%
区分ウ相当80,100円+1%85,800円+1%
区分エ相当57,600円61,500円
非課税(70歳未満)35,400円36,900円

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たとえば現在の区分ウに相当する方(年収約370万〜約770万円)は、月の上限額が80,100円から85,800円に変わります。毎月高額療養費の上限に達するような治療を受けている方は、月に数千円単位で自己負担が増える可能性があります。

高所得層ほど引き上げ幅が大きく、低所得の方(住民税非課税世帯)の引き上げは抑えめに設計されています。これは制度を長期的に維持しながら、低所得の方への配慮を残す考え方に基づいています。

2026年8月以降の見直しで変わらないこと・新たに加わること

今回の見直しで、長期療養者への配慮として多数回該当の金額は現行水準が維持される方向です。また、新たに「年間上限」が導入される方向も検討されており、多数回該当に当たらない長期療養者の負担を年単位で抑える仕組みが加わる予定です。

現行制度では、月の上限額に到達しない月が続いても年間でまとまった医療費負担が生じるケースがありましたが、年間上限の導入によって、年を通じた累積自己負担が一定額を超えた場合に払い戻しを受けられる仕組みが加わります。

また、2027年8月には所得区分がさらに細分化される予定で、現在の5区分から13区分へと変更が見込まれています。年収による負担の差がより細かくなりますが、詳細は引き続き公式情報を確認してください。

申請方法は2パターン|事前と事後の違い

高額療養費制度の申請方法は事前と事後の2パターン

事前に「限度額適用認定証」を取得する

入院が決まった段階などで事前に準備できる方法があります。加入している公的医療保険に申請して「限度額適用認定証」を受け取り、医療機関の窓口で提示すると、最初から自己負担限度額までの支払いで済みます。

たとえば手術のため入院が決まったとき、事前にこの認定証を取得しておけば、退院時の窓口支払いが最初から上限額に抑えられます。払い戻しを数か月後に待つよりも、一時的な出費が少なくて済む点が大きなメリットです。協会けんぽの場合は電子申請も可能で、スマートフォンやパソコンから手続きができます。

認定証の有効期間は申請月の初日から1年間です。なお、住民税非課税世帯の方(区分オ相当)については、別様式の「健康保険限度額適用・標準負担額減額認定申請書」を提出する必要がありますので、ご加入の保険にご確認ください。

マイナ保険証を使えば事前申請が不要になる場合がある

より手軽な方法として、マイナ保険証(健康保険証の利用登録をしたマイナンバーカード)を利用する方法があります。厚生労働省の情報によると、オンライン資格確認を導入している医療機関・薬局でマイナ保険証を提示し、限度額情報の表示に同意することで、限度額適用認定証の申請なしに窓口での支払いが自己負担限度額に抑えられます。

オンライン資格確認は2023年4月から原則義務化されており、多くの医療機関・薬局で対応が進んでいます。ただし一部、紙レセプトによる請求が認められている施設など、未対応の医療機関も存在します。受診予定の医療機関が対応しているかは、厚生労働省のウェブサイト(マイナンバーカードが健康保険証として使える医療機関・薬局リスト)で確認できます。

また、住民税非課税世帯の方(区分オ相当)は、マイナ保険証を利用する場合でも別途手続きが必要なケースがあります。

支払い後に申請して払い戻しを受ける

限度額適用認定証を持たずに支払った場合でも、後から申請して差額の払い戻しを受けることができます。厚生労働省の公式資料によると、高額療養費の支給を受ける権利の消滅時効は、診療を受けた月の翌月の初日から2年間です。

つまり、過去に高額な医療費を支払ったけれど申請していなかった、という方も、2年以内であれば今から申請できます。「そういえば数年前に入院したことがあった」と思い当たる方は、ぜひ診療月を確認してみてください。

申請後、実際に支給されるまでには診療月から少なくとも3か月程度かかります。申請先は加入している保険の種類によって異なります。

加入している健康保険申請先
協会けんぽ全国健康保険協会の各都道府県支部
健康保険組合勤務先の健康保険担当部署
国民健康保険お住まいの市区町村窓口
後期高齢者医療制度お住まいの市区町村窓口

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払い戻しを受け取る口座は、申請書に記入する際に指定します。ご加入の保険者への申請書を確認のうえ、受け取り口座の情報を事前に準備しておくとスムーズです。なお、払い戻し口座の登録方法は保険者ごとに異なりますので、詳細はご加入の保険にお問い合わせください。

知らないと損する3つのポイント

高額療養費制度で知らないと損する3つのポイント

① 2年以内なら過去の申請が可能

高額療養費の申請期限は診療月の翌月初日から2年間です。入院や手術のあった月から2年が経過していなければ、今からでも申請できます。忙しさや知識不足で申請していなかった方は、まず診療を受けた時期を確認することから始めてみてください。

② 家族の医療費を合算できる場合がある

同じ公的医療保険に加入している家族の自己負担額は、1か月単位で合算できます。1人だけでは上限額に届かなくても、家族合計で超えれば高額療養費の対象になります。ただし70歳未満の方は、1人あたりの自己負担が21,000円以上のものだけが合算の対象です。

なお、会社員と自営業など、別々の公的保険に加入している場合は合算できません。また、後期高齢者医療制度の被保険者は、他の医療保険と合算する対象にはなりません。

③ 医療費控除と組み合わせるとさらにお得

高額療養費として払い戻された金額は、確定申告での医療費控除の計算からは除く必要があります。しかし払い戻し後の実際の自己負担分は医療費控除の対象です。高額療養費で一定額が戻ってきたうえに、確定申告で医療費控除も申請すれば、二重に節税効果を得られます。年間の医療費が多かった年は、両方の制度を組み合わせることを検討してみてください。

よくある疑問Q&A

高額療養費制度のよくある疑問

Q. 月をまたいで入院した場合はどうなる?

高額療養費制度の自己負担限度額は、1か月(1日〜末日)ごとに計算されます。入院が月をまたぐ場合、月ごとに別々に上限額が計算されます。たとえば1月下旬から2月上旬にかけて入院した場合、1月分・2月分それぞれで上限額が計算されるため、月内で完結する場合と比べて合計の自己負担が多くなることがあります。入院の時期を調整できる場合は、事前に主治医や医療事務の方に確認してみるとよいでしょう。

Q. 差額ベッド代は対象になる?

対象外です。差額ベッド代・入院中の食事代・先進医療の技術料などは、いずれも高額療養費制度の支給対象に含まれません。保険が適用される診療に対する自己負担分だけが対象です。

Q. 自分がどの区分に当たるか調べるには?

加入している健康保険の窓口や健保組合のウェブサイトで確認できます。マイナポータルでも保険証の資格情報を確認できます。

Q. 国民健康保険でも使える?

使えます。協会けんぽ・健康保険組合・国民健康保険・後期高齢者医療制度、すべての公的医療保険が対象です。

Q. 2026年8月の改正前に入院が控えている場合、何か気にすることはある?

高額療養費の上限額は診療を受けた月の制度が適用されます。そのため、たとえば予定されている手術や入院が2026年8月以降になるか7月以前に収まるかで、適用される上限額が変わることがあります。治療の必要性・スケジュールはあくまで医師の判断が最優先ですが、入院の時期に選択の余地がある場合は、担当医に相談のうえで確認しておく価値はあるかもしれません。

まとめ・今すぐできること

高額療養費制度で今すぐできること

高額療養費制度は、申請するかどうかで数万円〜数十万円の差が出ることもある制度です。それでも申請しなければ1円も戻りません。また2026年8月からは自己負担限度額が引き上げられる見直しが予定されており、今と同じ治療でも自己負担が増える可能性があります。

今すぐできることとして、次の3つを確認してみてください。

  • 自分の所得区分を確認する
  • 過去2年以内に高額な医療費を支払った心当たりがないか確認する
  • これから入院が予定されている場合は、限度額適用認定証やマイナ保険証の活用を検討する

まず、自分の所得区分を確認すること。加入している健康保険の窓口や、マイナポータルで調べることができます。

次に、過去2年以内に高額な医療費を支払った心当たりがある方は、申請できる可能性があります。診療月の翌月初日から2年間が申請の期限ですので、心当たりがある方は早めに加入している保険に問い合わせてみてください。

そして、これから入院が予定されている方は、限度額適用認定証の事前取得かマイナ保険証の活用を検討しておくと、窓口での一時的な出費を抑えられます。

なお、払い戻しの受け取り口座については、高額療養費の申請書にご自身が指定する形で登録します。申請をスムーズに進めるためにも、受け取りに使う口座の情報を事前に整理しておきましょう。口座情報の一元管理という意味では、公金受取口座の登録も合わせて確認しておくと、他の給付金の受け取りにも役立ちます。

また、ご両親が年金を受給している場合は、年金に上乗せで支給される給付金制度も確認してみることをおすすめします。申請しないともらえない制度で、条件を満たしていても気づいていない方が多くいます。詳しくは年金生活者支援給付金の記事をご覧ください。

参考リンク

この記事の著者

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mcnconety_m0wmxqtz(資金調達マップ編集部)

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