
大学卒業後、税理士法人・会計コンサルティング会社にて、延べ100社超の事業計画・会計財務支援を経験。
補助金・助成金・融資の申請支援を中心に、法人設立・許認可申請等、各専門チーム体制で事業主のお悩みについて幅広くサポートを行っている。

災害や停電、感染症の流行といった、予期しない事態が起きても事業を止めないための備えを、東京都が費用面から後押ししてくれる制度があります。それがBCP実践促進助成金です。この記事では、公式情報にもとづいて、対象となる事業者・経費、申請の流れを整理していきます。
1. BCP実践促進助成金とはどんな制度か
まず、BCP(事業継続計画)とは、災害や停電、感染症の流行といった、予期しない事態が起きたときに、事業をできるだけ止めずに続けたり、早く立て直したりするための計画のことです。
BCP実践促進助成金は、中小企業がすでに策定したBCPや事業継続力強化計画を、実際の設備投資として形にするための助成金で、運営は公益財団法人東京都中小企業振興公社が担っています。
たとえば、台風による大規模な停電が起きたとき、非常用の発電機があれば、最低限の業務を止めずに続けられます。安否確認システムが整っていれば、災害直後でも従業員の状況をすぐに把握できます。こうした「実際に使える備え」を整えることが、この助成金の役割です。BCPの計画を紙の上で作るだけでなく、そこに書かれた対策を本当に実行できる状態にする、という段階を支援する制度だと考えると分かりやすいでしょう。
2. 対象となる事業者・経費
BCP実践促進助成金を申請できるのは、東京都内で実質的に1年以上事業を行っている中小企業者・個人事業主・一定の中小企業団体・小規模企業者です。会社(法人)に限らず、個人事業主も対象に含まれます。
ただし、いきなり設備投資の申請だけをできるわけではありません。単独で申請する場合(単独型)は、東京都中小企業振興公社が実施しているBCP策定支援を受けているか、国から事業継続力強化計画の認定を受けているか、どちらかを済ませている必要があります。策定支援は講座やコンサルティングを受講する形で、認定は国への申請・審査を経る形です。いずれも助成金の申請そのものとは別の手続きなので、助成金の受付が始まってから慌てて動き出しても間に合わない可能性があります。なお、事業継続力強化計画の認定を受けている場合でも、その認定申請書をそのままBCPとして提出できるわけではありません。助成対象の設備・数量・設置場所・導入理由などを盛り込んだBCPを、別途作成する必要があります。
連携型を選ぶ場合は、自社だけでなく、グループ会社や取引先など複数の企業が連携して取り組む「連携事業継続力強化計画」の認定が前提になります。連携型は、複数の企業がそれぞれ個別に申請をまとめて行う制度ではなく、認定された計画にもとづいて、参加企業間で共同利用・共有する設備や物品を導入するための制度です。各社が個別に使う設備は、連携型ではなく単独型で申請するのが基本になります。
過去の事例として、ある企業が自社のグループ会社2社とともに、同じ防災・減災の計画で認定を受けている例があります。親会社と子会社、あるいは関連会社どうしで、備蓄品や防災設備をまとめて用意し、共同で管理・運用する体制を作る、というのが連携型のイメージです。
対象経費は、大きく分けて次のようなものがあります。
- 電源対策:非常用発電機、可搬式のポータブル電源、無停電電源装置(UPS)、可搬式のソーラーパネルなど(据置型・定置型の蓄電池は対象外です)
- 備蓄品:非常食(水・食料)、簡易トイレ、毛布、簡易浄水器など
- 安否確認:安否確認システム(導入またはサブスクリプション契約)
- 感染症対策:マスク、消毒液などの物品
- 水害・地震対策:土のう、止水板、制震・免震ラック、飛散防止フィルム、転倒防止装置
- データ・システム対策:データバックアップ用NAS、バックアップ用クラウドサービス、基幹システムのクラウド化
- その他:耐震診断
基幹システムのクラウド化については、すでに社内で稼働している基幹システムを、防災力強化を目的に、同等機能を持つクラウドサービスへ移行する場合が対象です。新しい機能を追加するための開発費や、単なるクラウドストレージの契約などは対象外とされています。また、土のうや止水板を申請する場合は、設置場所の浸水リスクが確認できるハザードマップの提出が必要です。浸水想定区域外の場所に設置する場合は、その必要性について追加の説明を求められます。このほか、申請できる設備・物品の品目数や、備蓄品・設置費・利用料などにもそれぞれ上限があります。
「申請はしたいけれど、単独型と連携型のどちらを選べばいいか分からない」「そもそもBCP策定支援や認定を、まだ受けていない」という状態からのご相談も少なくありません。弊社が提携する行政書士が、前提条件の整理から一緒に進めていきます。まずは今の状況を聞かせてください。
補助金・助成金 申し込み3. 助成上限額・助成率
助成率と上限額は、単独型・連携型でそれぞれ次のように設定されています。
| 区分 | 助成率 | 上限額 |
|---|---|---|
| 単独型(中小企業) | 1/2以内 | 500万円 |
| 単独型(小規模企業) | 2/3以内 | 500万円 |
| 連携型 | 1/2以内 | 1,000万円 |
※横にスクロールして確認できます。
申請下限額はいずれも10万円です。これは個々の設備・物品ごとの価格ではなく、同一申請に含まれる対象経費を合算し、助成率をかけて算出した「助成金額」で判定されます。目安としては、助成率1/2の場合は税抜きの対象経費が20万円以上、助成率2/3の場合は15万円以上あれば、複数の経費を組み合わせて申請できます。なお、基幹システムのクラウド化については、単独型は500万円の上限の内数として150万円まで、連携型は1,000万円の上限の内数として300万円までとされています。
補助金・助成金 申し込み4. 申請の流れとスケジュール
申請はJグランツを通じたオンライン申請です。直近の申請受付期間は、第2回が2026年9月9日9時から9月15日17時まで、第3回は2027年1月8日9時から1月15日17時までを予定しています(2026年8月時点で、第2回の詳しい募集要項はまだ公開されておらず、今夏の掲載予定とされています。また、予算の執行状況によっては受付が早期に終了する可能性もあるため、申請前に最新の募集要項を確認してください)。
受付期間はいずれも1週間程度しかありません。書類に不備があれば、その短い期間の中で修正が間に合わず、次の回を待つことになりかねません。対象経費の見積もりや必要書類の準備は、受付が始まる前から進めておく必要があります。
補助金・助成金 申し込み5. よくある質問
複数の経費を組み合わせて、申請下限額の10万円に到達させることはできますか?
できます。対象経費を合算した金額に助成率をかけた「助成金額」が10万円以上であれば申請できます。目安として、助成率1/2の場合は対象経費が税抜き20万円以上、助成率2/3の場合は15万円以上あれば到達します。
過去にこの助成金を利用したことがある場合、また申請できますか?
単独型は、過去にこの助成金(単独型)の交付を受けたことがある場合、原則として再申請できません。連携型も、連携の組み合わせが変わっても、同一事業者が交付を受けられるのは1回です。一方、連携型の交付を受けた事業者が単独型を申請することや、その逆は可能です。
専門家に申請を代行してもらうことはできますか?
行政書士等にJグランツ上の申請内容の作成を依頼することは可能です。ただし、申請内容の最終確認と提出、申請受付後の手続きは、原則として申請者ご自身が行う必要があります。前提条件の整理や書類作成といった準備の部分は、専門家に相談しながら進める方法もあります。
基幹システムのクラウド化とは、具体的にどのようなものですか?
すでに社内でオンプレミス(自社サーバー)で運用している基幹システムを、防災力強化を目的として、同等の機能を持つクラウドサービスへ移行する場合が対象です。新しい機能を追加する開発費や、単なるクラウドストレージの契約などは対象外とされています。
6. まとめ
ここまで制度の解説をしてきましたが、BCP実践促進助成金は決して簡単な制度ではありません。単独型・連携型のどちらを選ぶにしても、策定支援や認定取得という前段階を先に済ませておく必要があり、そこから逆算してスケジュールを組む必要があります。しかも実際の申請受付は1週間程度しかなく、書類の不備が命取りになりかねません。
こうした複雑さこそ、専門家と一緒に進める価値があるところです。資金調達マップでは、公社が実施するBCP策定支援事業の利用に向けた準備や、事業継続力強化計画の認定申請、助成金の申請に必要な書類作成について、提携行政書士がサポートします。まずはお気軽にお問い合わせください。
補助金・助成金 申し込み出典・参照元
会社ランキング ファクタリングシークで
今すぐ確認する



