小規模事業者持続化補助金は、販路開拓や業務効率化に取り組む小規模な事業者を後押しする、知名度の高い補助金です。

通常型と創業型があり、通常型が基本的な選択肢ですが、創業から間もなく、自治体等による所定の創業支援を受けている場合は、基本の補助上限額が高い「創業型」を選べることがあります。創業型の条件や通常型との違いは、こちらの記事をご覧ください。

タイトルにある通り申請の締め切り日までに申請を終わらせればいいわけではなくその前に第一の締め切りが存在します。その点についても解説しているので最後まで読んでみてください。

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1. 制度の概要と対象者

この補助金は、小規模事業者等が自ら策定した経営計画にもとづいて、販路開拓や、それとあわせて行う業務効率化・生産性向上に取り組む際の経費の一部を補助する制度です。たとえば、飲食店であれば新メニューの開発やテイクアウト対応の準備、美容院であれば新しい施術メニューの導入や予約システムの整備などが「販路開拓」にあたります。単なる設備の買い替えや、店内の模様替えのように売上との関係が説明しにくい取組は対象になりません。事業終了後おおむね1年以内に売上へつながる見込みがあるかどうかが、審査でも重視されるポイントです。

対象となる事業者

まず、この補助金は法人・個人事業主を問わない制度です。法人であれば日本国内に本店があること、個人事業主であれば日本国内に居住していることが前提で、海外を拠点に活動している場合は対象になりません。このほか、資本金・出資金5億円以上の法人に直接・間接に100%保有されていないこと、直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと、そして申請時点ですでに事業を開始していることが必要です。

ただし、業種により常時使用する従業員数の上限が異なります。

業種従業員数の上限
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)5人以下
宿泊業・娯楽業20人以下
製造業その他20人以下

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従業員数は、正社員・パート・アルバイトといった呼び方だけで決まるものではありません。パートやアルバイトでも継続して雇っていれば人数に含まれることがあり、反対に短期間だけ雇う人などは含まれない場合があります。会社役員や個人事業主本人、個人事業主と同居する家族従業員も原則として数えません。そのため、従業員が何人いるかだけでなく、それぞれの雇用期間や契約内容を確認したうえで判断する必要があります。

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2. 対象経費

対象経費は、次の8区分に分かれています。

区分目的上限単独使用の可否
機械装置等費販路開拓に必要な機械・設備の購入特になし(50万円税込超は2者以上見積が必要)
広報費パンフレット・チラシ・広告等での告知30万円(税込)不可(他の区分と組み合わせが必要)
ウェブサイト関連費ホームページ・ECサイト・予約システム等の構築30万円(税込)不可(他の区分と組み合わせが必要)
展示会等出展費見本市・商談会への出展特になし
旅費展示会・商談等のための移動・宿泊特になし(経済的・合理的な範囲)
新商品開発費試作品の開発(原材料・設計・デザイン等)特になし
借料必要な機器・設備のリース・レンタル特になし
委託・外注費自社で実施できない業務の委託(店舗改装工事等)特になし

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機械装置等費

補助金を使って行う販路開拓に直接必要な機械や設備を購入する費用。

設備の種類だけで対象になるわけではなく、その設備を使ってどのように新しい商品やサービスを提供し、売上につなげるのかが重要になります。たとえば、飲食店が冷凍テイクアウト商品を新たに販売するために、真空包装機、急速冷凍機、冷凍ショーケースを導入する場合は対象になり得ます。美容院が新しいヘッドスパメニューを始めるために頭皮洗浄機などの専用設備を導入する場合や、製造業者が新商品を試作するために3Dプリンターや特殊印刷プリンターを導入する場合も同様です。一方、故障したオーブンや施術機器を同じ用途の製品へ買い替えるだけでは、単なる設備更新として対象外になります。パソコン、タブレット、一般的なプリンター、スマートフォンなど、補助事業以外にも幅広く使える機器も原則として対象外です。1件の発注総額が50万円(税込)を超える機械装置等を購入する場合は、別々の事業者から2者以上の見積もりを取る必要があります。これは、公的な資金を使う以上、購入価格が市場価格から大きく外れていないかを確認するためです。見積先は申請者が選べますが、同じ、または比較できる程度に近い仕様で見積もりを取らなければなりません。中古品を購入する場合は、金額にかかわらず、中古品を販売する事業者2者以上から同等品の見積もりを取る必要があり、個人やオークションから購入した中古品は対象になりません。

広報費

パンフレットやチラシ、看板といった紙媒体のほか、Meta広告(Facebook・Instagram広告)やGoogleのリスティング広告、LINE公式アカウントを使った広告配信なども対象です。ただし、広報費だけを申請することはできず、機械装置等費など他の区分の経費とあわせて申請する必要があります。補助金の交付申請額の上限は30万円(税込)で、単なる会社紹介や求人広告、新商品やサービスの宣伝につながらない広告は対象外です。

ウェブサイト関連費

ホームページの新規制作やリニューアル、BASEやShopifyといったサービスを使ったECサイトの構築、予約システムや顧客管理システムの導入などが対象です。こちらも単体では申請できず、他の経費区分とあわせる必要があります。上限は30万円(税込)です。制作したウェブサイトやシステムは、補助事業の実施期間中に実際に公開・利用している必要があります。ここでいう「事業終了」とは、採択後に決まる補助事業の実施期間の終了時点を指し(実施期間は交付決定日から始まり、2028年3月31日までの間で設定されます)、作っただけで公開しなかったサイトや、事業終了後に公開したサイトは対象になりません。

展示会等出展費

業界の見本市や商談会への出展料などが対象です。ここでの「展示会・商談会」とは、新しい取引先や販路を見つけることを目的にしたものを指します。一方、その場で商品を消費者に直接販売することが主目的のイベント(即売会など)は、対象外になる場合があります。

旅費

展示会や商談、販路開拓に必要な移動・宿泊にかかる費用です。「最も経済的、合理的な経路」を使うことが前提ですが、必ず最安の夜行バスを選ばなければならない、という意味ではありません。新幹線の指定席料金も対象に含まれており、出張の目的や移動時間を含めて、現実的な経路を選ぶことになります。日当、タクシー代、レンタカー代、ガソリン代、高速道路料金、グリーン車の追加料金などは原則対象外です。

新商品開発費

試作品の開発に必要な原材料や金型、設計・デザインの費用が対象です。たとえば、新メニューを試作するための食材、新商品の試作用金型、新しいパッケージのデザイン費用などが該当します。外部のデザイナーへ依頼した場合でも、新商品の開発に直接必要なパッケージデザインであれば、新商品開発費として扱われ、外注したという理由だけで自動的に委託・外注費へ変わるわけではありません。試作に使う材料は、販売用商品をまとめて仕入れる費用ではなく、計画した試作に必要な量にとどめる必要があります。自社で設計・デザインを行うために導入するソフトウェアについては、その新商品の開発だけに使うものか、通常業務でも幅広く使える汎用的なソフトかによって扱いが変わってくる可能性があるため、個別に確認したほうが確実です。

借料

補助事業に直接必要な機器・設備のリース・レンタル料です。たとえば、展示会に出展する際のブース設営一式のレンタル、新商品の試作評価に使う計測機器のレンタル、店舗で新しく導入するPOSレジシステムのリース料などが該当します。通常の事務所家賃や駐車場代のように、補助事業と直接結びつかない恒常的な費用は対象外です。

委託・外注費

自社では実施できない業務を、専門の業者へ依頼する費用です。たとえば、新しい顧客層を受け入れるための店舗改装工事、バリアフリー化のためのスロープ設置工事、製造や販売を強化するためのガス・水道・排気工事などが該当します。通常業務の委託や営業代行は対象外です。契約内容や成果物が分からない「一式いくら」のような発注や、外注先が業務を別の業者へ丸ごと再委託するケースも認められません。

このほか、どの区分にも共通する注意点として、個人やフリマアプリ・オークションサイトを通じた購入、親族や役員、関連会社への発注、交付決定前に発注・契約・支払いをした経費は対象外です。専門家への申請支援費用や成功報酬も対象外で、「専門家に支払う報酬まで補助金でまかなえる」という理解は誤りです。

対象経費はどのように組み合わせて使うのか

前述で説明した通り、広報費とウェブサイト関連費は、それぞれ単独では申請できません。ただし、必ず機械装置等費と組み合わせなければならないわけではなく、取り組む事業に必要なほかの経費と組み合わせます。大切なのは、複数の経費を形式的に並べることではなく、購入する設備、開発する商品、広告、ウェブサイトなどが、すべて一つの販路開拓につながっていることです。

業種・取組経費の組み合わせ取組の全体像
飲食店が冷凍テイクアウト商品を販売機械装置等費+新商品開発費+広報費+ウェブサイト関連費真空包装機や急速冷凍機を導入し、商品の試作とパッケージを開発する。チラシやSNS広告で告知し、注文ページから販売する
美容院が新しいヘッドスパメニューを開始機械装置等費+委託・外注費+広報費+ウェブサイト関連費頭皮洗浄機などを導入し、個室化のための内装工事を行う。SNS広告で新メニューを告知し、専用予約ページから予約を受ける
小売店が店頭販売からEC販売へ進出機械装置等費+ウェブサイト関連費+広報費商品用ショーケースを導入し、ECサイトを構築する。ウェブ広告を使い、これまで来店できなかった地域の顧客へ販売する
製造業者が新商品を開発して取引先を開拓機械装置等費+新商品開発費+展示会等出展費+旅費3Dプリンターで試作品を作り、材料やパッケージを開発する。業界展示会へ出展し、新しい取引先と商談する

※横にスクロールして確認できます。ここで挙げたものは経費の組み合わせを理解するための例です。同じ設備や広告でも、計画の内容や必要性によって対象になるかどうかは変わります。

たとえば、飲食店が業務用フライヤーを購入し、それとは関係のない会社案内パンフレットを作っただけでは、一つの販路開拓計画とはいえません。一方、「新しい揚げ物のテイクアウト商品を販売するためにフライヤーを導入し、その商品をチラシやSNS広告で地域住民へ知らせる」という計画であれば、機械装置等費と広報費が同じ目的でつながります。

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3. 補助上限額と特例

補助上限額は、特例の組み合わせによって次のように変わります。

区分上限額
基本50万円
インボイス特例のみ100万円
賃金引上げ特例のみ200万円
両方の特例250万円

※横にスクロールして確認できます。

補助率は原則3分の2ですが、賃金引上げ特例を利用する赤字事業者は4分の3になります。

補助率のイメージをつかむために、具体的な金額で見てみます。

特例を使わずに75万円の対象経費を支払った場合、補助額は75万円の3分の2にあたる50万円、自己負担は25万円です。100万円を使った場合、3分の2を計算すると約66万6,000円ですが、基本の補助上限が50万円なので、受け取れる補助金は最大50万円にとどまり、残りの50万円は自己負担になります。

インボイス特例

簡単に言うと、免税事業者だった事業者などがインボイス制度へ対応する場合に、補助上限を50万円増やせる特例です。2021年9月30日から2023年9月30日までの間に一度でも免税事業者だった、または2023年10月1日以降に創業したという条件のどちらかを満たし、補助事業終了時点で適格請求書発行事業者として登録されている必要があります。

賃金引上げ特例

従業員の給料を一定以上引き上げる代わりに、補助上限を150万円増やせる特例です。第20回では、2027年4月1日から2028年3月31日までの12か月間と、その前年の同じ12か月間を比較し、従業員1人あたりの給与支給総額を平均3.0%以上増やす必要があります。対象となる従業員にはパートなどの非常勤も含まれますが、会社の代表者、役員、家族専従者は含まれません。

似た名前の制度に「賃金引上げ加点」があります。こちらは補助上限額を増やす制度ではなく、採択審査で加点を受けるための仕組みです。賃金引上げ特例を選ぶと、賃金引上げ加点も自動的に適用されます。特例は上限額を増やすもの、加点は審査で評価を受けるもの、という違いがあります。

特に注意したいのが、特例を選んだあとに条件を達成できなかった場合です。

たとえば、賃金引上げ特例を選んで補助上限額を200万円にしたものの、最終的に給料を3.0%以上増やせなかった場合、上乗せされた150万円だけが減額されるのではなく、基本の50万円を含め、補助金全体を受け取れなくなります。インボイス特例も同様です。「上限額が大きくなるから」という理由だけで選ぶのではなく、事業終了まで条件を達成できるかを確認したうえで申請する必要があります。

4. 申請前の準備から補助金の入金まで

申請には、地域の商工会または商工会議所が発行する「事業支援計画書(様式4)」が必須です。様式4の発行を依頼できる締切は2026年12月4日で、申請そのものの受付締切である12月15日17時より11日早く設定されています。12月4日を過ぎると、どのような理由があっても発行を依頼できません。12月4日に相談へ行けばよいという意味ではなく、その時点までに経営計画、補助事業計画、購入予定の設備や外注費などを、ある程度具体的にしておく必要があります。

準備から入金までの流れは、次のとおりです。

時期の目安やること
今すぐ〜10月中対象になるか確認し、何を導入してどう売上につなげるか、取組の内容を考え始める
10月中を目安にGビズIDプライムを取得する(オンライン申請なら最短即日だが、書類申請だと1週間〜1か月ほどかかる場合もあるため早めに)
10月中〜11月上旬までに経営計画・補助事業計画を作成する。あわせて、法人は直近1期分の貸借対照表・損益計算書、個人事業主は確定申告書・青色申告決算書等(決算・確定申告前なら売上台帳等で代替)を準備し、購入予定品・外注費の価格確認と概算見積もりも済ませておく
11月5日申請受付開始。電子申請システムへ経営計画・補助事業計画・経費等を入力する(このシステムはGビズIDそのものではなく、GビズIDでログインする別の申請専用システムです)
11月中旬〜下旬を目安に商工会・商工会議所へ様式4の発行を依頼する。発行までさらに数日〜2週間ほどかかることがあるため、12月4日ぎりぎりに依頼すると間に合わない可能性があります
12月4日様式4発行依頼の最終締切(これを過ぎると、どんな理由があっても依頼できません)
12月15日17時申請受付締切
12月〜2027年3月頃書類審査(面談やヒアリングはありません)
2027年3月頃採択発表
採択後すぐ計上したすべての経費について、正式な見積書等を事務局へ提出する(申請前の概算とは別です)
2027年4〜5月頃経費審査を経て交付決定。ここで初めて発注・契約ができるようになります(「採択」と「交付決定」の違いは、別の記事で詳しく解説しています)
交付決定日〜2028年3月31日補助事業を実施する(発注・契約・事業実施・支払いまで完了させる)
事業終了から30日以内(遅くとも2028年4月10日)実績報告を提出する(見積書、発注書、請求書、振込記録、成果物等)
実績報告後補助金額が確定し、請求・入金される

※横にスクロールして確認できます。

2027年4〜5月頃の交付決定は、3月頃に採択され、すぐに見積書等を提出した場合の目安です。公式に交付決定月が確定しているわけではありません。

この表からも分かるとおり、採択された時点ではまだ発注できません。交付決定前の発注・契約・支払いは原則対象外です。補助事業を実施できる期間は、交付決定日から最長で2028年3月31日までですが、これは「その日まで続けなければならない」という意味ではなく、「その日までに実施してください」という期限です。

事業者が経費を一度全額立て替えて支払う「後払い」の制度なので、実施が後ろ倒しになりすぎないように注意が必要です。

実績報告では、見積書・発注書・請求書・銀行振込の記録・チラシや広告の画面・公開したウェブサイトの画面・設備や工事前後の写真など、実際に取り組んだことを証明できる記録を提出します。必要な書類や成果物を残していなければ、実際に経費を支払っていても、補助対象として認められない場合があります。

もう一つ知っておきたいのが、誰かに申請を手伝ってもらった場合のルールです。第三者から支援を受けた場合、有償無償にかかわらず、「誰に、どんな支援を受けたか」を申請画面で申告する必要があります。それ自体が不利になるわけではありませんが、申告しなかった場合は不採択や交付決定の取り消しにつながる可能性があります。

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まとめ

小規模事業者持続化補助金<通常型>を検討する場合は、まず自社が対象となるかを確認し、補助金を使ってどのような商品やサービスを始め、誰に販売するのかを整理します。そのうえで、必要な設備、広告、ウェブサイト、外注費などが、一つの販路開拓計画としてつなげられるかを確認することが大切です。

第20回の申請締切は12月15日ですが、それまで待って準備を始めることはできません。12月4日までに、経営計画と補助事業計画をある程度完成させ、商工会または商工会議所へ様式4の発行を依頼する必要があります。GビズIDの取得、購入予定品の価格確認、決算書や確定申告書の準備もあるため、遅くとも11月より前から準備を進めておく必要があります。

実際に準備を始めると、「購入したい設備は対象になるのか」「複数の経費をどう組み合わせればよいのか」「賃金引上げ特例を選んでも条件を達成できるのか」「計画書に自社の強みや売上見込みをどう書けばよいのか」など、事業者ごとに異なる疑問が出てきます。

資金調達マップでは、提携する行政書士が、対象者に該当するかの確認、購入予定の設備や広告費の整理、必要書類のチェック、経営計画の作成支援まで、申請準備を具体的にサポートしています。「自分が対象になるか分からない」「購入したい設備が補助対象になるか判断できない」「締め切りまでに計画書をまとめられるか不安」という場合は、まずは今の状況を聞かせてください。

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この記事の著者

吉田 直樹

吉田 直樹(資金調達マップ編集部)

資金調達マップ編集部の編集責任者。ファクタリングや各種融資、補助金・助成金まで、資金調達に関する幅広いテーマの記事編集を統括している。金融・経済分野での長年の編集経験を活かし、専門的で複雑になりがちな情報を、事業者にとって正確でわかりやすいコンテンツに仕上げることを重視。編集部全体の記事品質と中立性の担保に努めている。

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