
契約社員として働いているスタッフを、そろそろ正社員として迎えたい。
そう考えていても、給与の見直しや社会保険料の負担、就業規則の整備、申請書類の準備などを考えると、なかなか一歩を踏み出せない事業者の方も多いのではないでしょうか。
神奈川県横浜市でWeb制作・広告運用支援を行う株式会社Lの代表Kさんも、その一人でした。契約社員として働いていたAさんは、バナー制作やサイト更新を中心に担当していましたが、入社から時間が経つにつれて、クライアント対応の補助や制作進行のサポートも任せられる存在になっていました。
KさんがAさんの正社員化を本格的に考え始めたのは、2025年1月ごろのことです。会社としても制作体制を強化したい時期であり、Aさんに長く安心して働いてもらうためにも、契約社員のままではなく、正社員として迎えたいという思いが強くなっていました。
一方で、正社員化には会社側の負担も伴います。給与の見直し、社会保険料の増加、雇用契約書や就業規則の確認など、事前に整理しなければならないことは少なくありません。そんなときにKさんが知ったのが、契約社員やパート・アルバイトなどの非正規雇用労働者を正社員化する取り組みを支援する「キャリアアップ助成金 正社員化コース」でした。
株式会社Lでは、2025年2月にキャリアアップ計画書を提出し、就業規則や雇用契約書、賃金条件の確認を進めたうえで、2025年3月1日にAさんを契約社員から正社員へ転換しました。その後、正社員転換後6か月分の勤務実績と賃金支払いを経て、2025年9月に支給申請を行い、2025年11月に支給決定通知を受けることができました。
この記事では、株式会社Lが契約社員Aさんを正社員化し、キャリアアップ助成金 正社員化コースを申請して、支給決定を受けるまでの流れを体験談形式で紹介します。
「正社員化を考えているけれど、いつ何を準備すればいいのかわからない」「申請までにどのくらい時間がかかるのか知りたい」という事業者の方は、ぜひ参考にしてください。
契約社員Aさんを正社員化したいと思ったきっかけ
株式会社Lは、神奈川県横浜市でWeb制作や広告運用支援を行う小規模な会社です。ホームページ制作、ランディングページ制作、バナー制作、WordPressの更新代行、SNS広告の運用サポートなど、中小企業向けのWebまわりの支援を中心に行っていました。
代表のKさんは、もともと制作現場に近いタイプの経営者です。クライアントとの打ち合わせ、見積もり作成、制作進行、納品前の確認まで、自分自身で細かく見ることも多く、会社の規模が大きくなるにつれて「このまま自分だけで抱え続けるのは難しい」と感じる場面が増えていました。
そんななかで、契約社員として働いていたのがAさんです。Aさんは、当初はバナー制作や既存サイトの更新作業を中心に担当していました。入社したばかりのころは、指示された作業を一つずつこなす立場でしたが、少しずつ業務に慣れ、デザイン修正や簡単なページ作成、クライアントへの確認事項の整理なども任せられるようになっていきました。
Kさんが特に評価していたのは、Aさんの仕事に対する丁寧さでした。単に作業を早く終わらせるだけではなく、「この部分はスマートフォンで見ると少し読みにくいかもしれません」「このバナーはクリック先の内容と少しズレている気がします」といったように、ユーザー目線で気づいた点を共有してくれることが増えていたのです。
Web制作の仕事では、デザインやコーディングのスキルだけでなく、細かな確認やクライアントとのやり取りを丁寧に進める力も大切です。Aさんは、最初からすべてを完璧にできたわけではありませんでしたが、任せた仕事を少しずつ吸収し、社内でも頼れる存在になっていきました。
2025年1月ごろ、KさんはAさんの雇用形態について本格的に考えるようになります。契約社員として働いてもらう形を続けることもできましたが、今後の制作体制を考えると、Aさんにはより責任のある仕事も任せていきたいと感じていました。
また、Aさん自身も、将来的にはWeb制作のスキルをさらに伸ばし、クライアント対応や制作進行にも関わっていきたいという意欲を持っていました。Kさんとしては、その気持ちに応える意味でも、安定した雇用環境を整えたいと考えるようになったのです。
一方で、正社員化には会社側の負担もあります。給与の見直し、社会保険料の負担、賞与や福利厚生の整備など、契約社員のままと比べて考えなければならないことは少なくありません。特に株式会社Lのような小規模な会社では、固定費が増えることに慎重になるのは自然なことでした。
それでもKさんは、「今後も会社を支えてもらうなら、契約社員のままではなく、正社員として迎えた方がよいのではないか」と考えました。Aさんに長く安心して働いてもらうことは、本人のためだけでなく、会社にとっても大きな意味があると感じたからです。
こうして株式会社Lでは、Aさんを契約社員から正社員へ転換する方向で準備を進めることになりました。ただ、その時点ではKさん自身、キャリアアップ助成金 正社員化コースについて詳しく知っていたわけではありません。正社員化を考え始めたあとで、費用面や手続き面の不安を調べるなかで、助成金制度の存在を知ることになります。
キャリアアップ助成金 正社員化コースを知り、申請を検討
Aさんを正社員として迎えたいという気持ちは固まっていたものの、Kさんには不安もありました。正社員化すれば、毎月の給与を見直す必要がありますし、会社が負担する社会保険料も増えます。さらに、今後の賞与や昇給、福利厚生のことまで考えると、小規模な会社にとっては決して軽い判断ではありませんでした。
株式会社Lは、少人数で運営しているWeb制作会社です。売上が大きく伸びる月もあれば、案件の納品時期によって入金がずれる月もあります。Kさんとしては、Aさんに安心して働いてもらいたい一方で、会社として継続的に雇用を守れる体制を整えなければならないと感じていました。
そこでKさんは、正社員化にあたって利用できる制度がないかを調べ始めました。そのなかで知ったのが、「キャリアアップ助成金 正社員化コース」です。
キャリアアップ助成金 正社員化コースは、有期雇用労働者やパート・アルバイト、契約社員などの非正規雇用労働者を、正社員などへ転換した場合に活用できる助成金制度です。Kさんは、Aさんを契約社員から正社員へ転換する今回のケースでも、条件を満たせば対象になる可能性があることを知りました。
ただし、調べていくうちに、Kさんは「正社員にすれば自動的にもらえる助成金ではない」ということも理解しました。正社員化する前にキャリアアップ計画書を提出しておく必要があり、就業規則や雇用契約書、賃金条件なども事前に確認しておかなければならなかったのです。
特にKさんが気になったのは、就業規則に正社員転換制度がきちんと定められているかという点でした。これまで株式会社Lでは、従業員数が少ないこともあり、労務関係の書類を最低限の範囲で整えている状態でした。しかし、助成金を申請するとなると、雇用形態の違いや正社員転換のルールを、書面上でも明確にしておく必要があります。
また、Aさんの契約社員時代の労働条件と、正社員転換後の労働条件を比較できるように、雇用契約書や労働条件通知書の内容も確認することになりました。給与がどのように変わるのか、勤務時間や休日、業務内容に変更があるのかなど、曖昧なままでは申請時に困る可能性があったからです。
Kさんは当初、「助成金は申請書を書いて出せばよいもの」というイメージを持っていました。しかし実際には、正社員化の前から準備しておくべきことが多く、制度の流れを理解したうえで進める必要があると感じました。
そこで株式会社Lでは、2025年2月にキャリアアップ計画書を提出することを目標に、就業規則や雇用契約書、賃金条件の確認を進めることにしました。Aさんの正社員転換予定日は2025年3月1日とし、それまでに必要な書類を整える方針を立てました。
この時点でKさんが強く感じたのは、助成金を活用するには「正社員化してから考える」のでは遅い場合があるということです。Aさんを正社員にしたいという気持ちだけで進めるのではなく、制度の要件に沿って、事前に準備をしておくことの大切さを実感することになりました。
申請準備で大変だったこと|就業規則・雇用契約書・賃金アップの確認
キャリアアップ助成金 正社員化コースの申請を検討するなかで、Kさんが最初に感じたのは、「思っていた以上に確認することが多い」ということでした。
正社員化そのものは、会社と本人の合意があれば進められます。しかし、助成金の申請まで見据える場合は、ただ雇用形態を変えるだけでは不十分です。正社員転換のルールが就業規則に定められているか、契約社員時代と正社員転換後の労働条件が明確になっているか、賃金が要件に沿って見直されているかなど、事前に整理しておくべき点がいくつもありました。
まず確認したのは、就業規則です。株式会社Lでは、従業員数が少ないこともあり、日々の業務では大きな問題が起きていませんでした。しかし、正社員転換制度について細かく確認してみると、契約社員から正社員へ転換する際の条件や手続きが、十分にわかりやすく整理されているとは言えない状態でした。
そこでKさんは、Aさんを正社員化する前に、就業規則の内容を見直すことにしました。どのような場合に正社員転換の対象となるのか、本人の希望や勤務実績、会社の判断をどのように扱うのかなど、社内ルールとして説明できる形に整えていきました。
次に確認したのが、雇用契約書と労働条件通知書です。Aさんが契約社員として働いていたときの労働条件と、正社員転換後の労働条件を比較できるように、勤務時間、休日、業務内容、給与、手当などを一つずつ確認しました。
特に注意したのは、契約社員時代と正社員転換後の条件が曖昧にならないようにすることです。たとえば、給与額だけを変えるのではなく、雇用期間の定めがなくなること、担当業務の範囲が広がること、今後は制作進行やクライアント対応にもより深く関わることなど、正社員としての位置づけを明確にしておく必要がありました。
また、賃金アップの確認も大きなポイントでした。キャリアアップ助成金 正社員化コースでは、正社員転換後の賃金について一定の要件が設けられているため、Aさんの給与をどのように見直すかを慎重に検討しました。
Kさんとしては、助成金のためだけに形式的に給与を上げるのではなく、Aさんの業務範囲や責任の変化に見合った処遇にしたいという思いがありました。そのため、これまで担当していたバナー制作やサイト更新に加え、制作進行の補助、クライアント対応、社内の確認業務なども含めて、正社員としての役割を整理したうえで給与条件を決めていきました。
この過程でKさんが苦労したのは、普段の感覚では把握できているつもりだった労働条件を、書類としてきちんと説明できる形にすることでした。小規模な会社では、代表と従業員の距離が近いため、「言わなくても伝わっている」「これまで問題がなかった」という感覚で進めてしまうことがあります。
しかし、助成金の申請では、出勤簿、賃金台帳、雇用契約書、就業規則など、客観的に確認できる書類が重要になります。Kさんは、日頃から労務関係の書類を整えておくことの大切さを、あらためて実感しました。
さらに、Aさんの勤務実績や給与の支払い状況についても、後から確認しやすいように整理しました。正社員転換後は、6か月分の勤務実績と賃金支払いをもとに支給申請を行うことになるため、転換前の段階から、出勤簿や賃金台帳の管理をより丁寧に行う必要があったのです。
Kさんは、最初は自社だけで進めようと考えていましたが、要件の確認や書類の整備に不安があったため、最終的には専門家にも相談しながら準備を進めました。特に、就業規則の文言や雇用契約書の内容、賃金アップの考え方については、第三者の目で確認してもらうことで安心感がありました。
2025年2月中には、キャリアアップ計画書の提出に向けた準備を進め、Aさんを2025年3月1日に正社員へ転換できるように、必要な書類を整えていきました。期限を意識しながら進める必要があったため、Kさんにとっては通常業務と並行しての準備となり、決して楽な作業ではありませんでした。
それでも、準備を進めるなかで、Kさんの中には「助成金の申請は、単にお金を受け取るための手続きではなく、会社の雇用ルールを見直すきっかけにもなる」という実感が生まれていました。
株式会社Lにとって、Aさんの正社員化は、会社の体制を整える大きな節目でもありました。就業規則や雇用契約書、賃金条件を一つずつ見直したことで、Aさんだけでなく、今後新しく入社するスタッフに対しても、よりわかりやすい雇用環境を示せるようになったのです。
正社員化後の申請から支給決定までの流れ
必要な準備を進めたうえで、株式会社Lでは2025年3月1日に、Aさんを契約社員から正社員へ転換しました。
正社員化にあたっては、雇用契約書を新たに取り交わし、給与や勤務条件、担当業務の範囲などを改めて確認しました。Aさんにとっても、雇用期間の定めがなくなり、会社の一員としてより長く働いていく見通しが持てるようになったことは、大きな安心につながったようでした。
一方で、Kさんにとっては、正社員化した時点で助成金の手続きが終わるわけではありませんでした。キャリアアップ助成金 正社員化コースでは、正社員転換後の勤務実績や賃金支払いの状況を確認したうえで、支給申請を行う必要があります。
株式会社Lでは、2025年3月から8月までの6か月間、Aさんの勤務状況や給与の支払いを丁寧に管理しました。出勤簿、賃金台帳、雇用契約書、労働条件通知書など、後から提出や確認が必要になる可能性がある書類についても、月ごとに整理していきました。
この期間、Aさんは正社員として、これまでよりも一歩踏み込んだ業務を担当するようになりました。バナー制作やサイト更新だけでなく、制作スケジュールの確認、クライアントからの修正依頼の整理、社内スタッフへの共有など、制作現場を支える役割が少しずつ増えていきました。
Kさんは、Aさんの働きぶりを見ながら、「正社員化してよかった」と感じる場面が増えていったそうです。以前よりも責任感を持って仕事に向き合う姿が見られ、社内でも相談しやすい存在になっていきました。
ただし、助成金の支給申請に向けては、気を抜けない部分もありました。給与の支払い日、勤務実績、賃金台帳の記載内容などに不備があると、申請時に確認が必要になる可能性があります。Kさんは、通常業務に追われながらも、申請に必要な書類を後回しにしないよう意識していました。
2025年8月分までの賃金支払いを終えたあと、株式会社Lでは支給申請の準備に入りました。キャリアアップ計画書、就業規則、雇用契約書、賃金台帳、出勤簿などを改めて確認し、正社員転換前後の条件がわかるように整理していきました。
特にKさんが慎重になったのは、契約社員時代と正社員転換後の賃金条件の比較です。申請書類上で、Aさんの処遇がどのように変わったのかを説明できるようにしておく必要がありました。単に「正社員にしました」と伝えるだけではなく、給与や雇用条件の変化を、書類で確認できる形にすることが大切でした。
そして、2025年9月に支給申請書類を提出しました。提出後は、すぐに結果が出るわけではありません。書類の確認や審査に一定の時間がかかるため、Kさんは「不備がなかっただろうか」「追加で確認を求められるのではないか」と、少し不安な気持ちで結果を待っていました。
実際、申請後には一部の書類について確認が入る場面もありました。ただ、事前に就業規則や雇用契約書、出勤簿、賃金台帳を整理していたため、大きな修正に発展することはなく、求められた内容に落ち着いて対応することができました。
その後、2025年11月に支給決定通知が届きました。Kさんにとっては、正社員化を考え始めてから約10か月、キャリアアップ計画書の準備から数えても長い期間をかけて進めてきた取り組みが、ようやく一つの結果につながった瞬間でした。
もちろん、助成金の支給決定を受けられたことは、会社にとって大きな安心材料になりました。正社員化に伴う給与や社会保険料の負担を考えると、助成金による支援は小規模な会社にとって心強いものです。
しかし、Kさんが最も大きな成果だと感じたのは、Aさんが正社員として定着し、以前よりも前向きに仕事へ取り組んでくれるようになったことでした。助成金はあくまで支援制度であり、目的そのものではありません。株式会社Lにとっては、Aさんが安心して働ける環境を整え、会社の制作体制を強化できたことが、何より大きな意味を持っていました。
今回の経験を通じて、Kさんは「正社員化を考えるなら、助成金の有無だけで判断するのではなく、会社としてどのような雇用環境を作りたいのかを考えることが大切だ」と感じたそうです。
キャリアアップ助成金 正社員化コースの申請には、事前準備や書類管理など、手間のかかる部分もあります。それでも、計画的に進めることで、従業員の待遇改善と会社の体制づくりを同時に進めるきっかけになる制度だと、株式会社LのKさんは実感することになりました。
まとめ|正社員化を考えるなら、早めの準備が大切
株式会社Lがキャリアアップ助成金 正社員化コースを申請した体験談を振り返ると、正社員化は単に雇用形態を変えるだけではなく、会社の雇用ルールや労務管理を見直す大きなきっかけになることがわかります。
代表のKさんは、契約社員として働いていたAさんの成長を見て、「長く安心して働いてもらいたい」「会社の制作体制を支える人材として育ってほしい」と考えるようになりました。その一方で、正社員化には給与の見直しや社会保険料の負担、就業規則や雇用契約書の整備など、会社側にも準備すべきことが多くありました。
今回のケースでは、2025年2月にキャリアアップ計画書を提出し、2025年3月1日にAさんを正社員へ転換。その後、6か月分の勤務実績と賃金支払いを経て、2025年9月に支給申請を行い、2025年11月に支給決定通知を受けることができました。
この流れからもわかるように、キャリアアップ助成金 正社員化コースは、「正社員にしたあとで急いで申請すればよい」という制度ではありません。正社員転換の前から、キャリアアップ計画書、就業規則、雇用契約書、賃金条件、出勤簿、賃金台帳などを確認し、制度の流れに沿って準備しておくことが大切です。
また、助成金はあくまで従業員の待遇改善や人材定着を後押しするための支援制度です。助成金を受け取ることだけを目的にするのではなく、「この人に長く働いてもらうために、どのような環境を整えるべきか」「会社としてどのような雇用体制を作っていきたいか」を考えることが重要だといえます。
株式会社Lにとって、Aさんの正社員化は、助成金の支給決定だけでなく、社内体制を整える大きな節目にもなりました。Aさんが正社員としてより責任を持って業務に関わるようになったことで、Kさん自身の負担も少しずつ軽くなり、制作チームとしての安定感も高まっていきました。
キャリアアップ助成金 正社員化コースの申請を検討している事業者の方は、まず自社の就業規則や雇用契約書、賃金台帳などを確認し、正社員化のタイミングから逆算して準備を進めることが大切です。
契約社員やパート・アルバイトとして頑張っているスタッフを正社員として迎えたいと考えているなら、早めに制度の要件を確認し、無理のないスケジュールで準備を進めてみてください。
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