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出産後は赤ちゃんのお世話で睡眠も満足に取れず、身体の回復も追いつかないまま育児が始まります。「こんなに辛いのは自分だけ?」「誰かに頼りたいけど、どこに相談すればいいかわからない」——そんな産後の孤独や不安を少しでも和らげるために、国が制度として整備しているのが「産後ケア事業」です。
この記事では、産後ケア事業の概要から3つのサービス形態の違い、費用の目安、申請の流れまでをわかりやすく解説します。
30秒要約
- 産後ケア事業は、出産後のお母さんと赤ちゃんを支える公的な支援事業です。
- 主な形態は「宿泊型」「通所型」「訪問型」の3つで、自治体ごとに内容や費用が異なります。
- 原則として出産後1年以内が対象ですが、対象要件や利用上限は市区町村によって違います。
- 生活保護世帯・住民税非課税世帯は、利用料が減免される場合があります。
- 妊娠中から申請できる自治体も多いため、早めに住民票のある自治体へ確認しておくと安心です。
産後ケア事業とは
産後ケア事業は、出産後一定期間のお母さんと赤ちゃんを対象に、身体の回復・心のリフレッシュ・育児のサポートを行う公的な支援事業です。
助産師・保健師・看護師などの専門スタッフが、授乳や乳房のケア、赤ちゃんの発育チェック、育児の不安への相談対応などを行います。入院治療とは異なり、「専門家に寄り添ってもらいながら、自分のペースで産後の生活に慣れていく」ための場です。
法律上の根拠
産後ケア事業は、母子保健法および成育基本法に基づき、妊娠期から子育て期にわたる「切れ目のない支援」の一環として位置づけられています。令和元年(2019年)の母子保健法改正により、市町村の努力義務として法定化され、令和3年(2021年)4月から施行されました。
さらに令和6年(2024年)の子ども・子育て支援法改正により、令和7年度(2025年度)以降は「地域子ども・子育て支援事業」に位置づけられ、国・都道府県・市町村それぞれの役割が整理されました。産後ケア事業のガイドラインも令和7年3月に最新版が改定・公表されており、制度としての充実が進んでいます。
実施主体は市区町村
産後ケア事業は、お住まいの市区町村が実施主体です。そのため、サービスの内容・利用できる施設・費用・利用できる日数や回数の上限は、市区町村ごとに異なります。
都道府県の役割
都道府県は市区町村を広域で支援する立場にあります。たとえば宮城県では、令和6年度から各市町村が医療機関・助産所の代表団体と一括して契約する「集合契約方式」を導入しており、加入している市町村の住民は、契約施設を広域で利用できる仕組みが整えられています。
里帰り出産中の利用について
原則として、住民票のある自治体への申請が必要です。ただし、住民票のある自治体から里帰り先の自治体へ依頼文・費用負担がある場合に限り、里帰り先で利用できることがあります。まずは住民票のある自治体の窓口に相談してみましょう(大阪市)。
対象者
産後ケア事業の対象は、原則として出産後1年以内のお母さんと赤ちゃんです。
流産・死産を経験した方も対象
流産(赤ちゃんが妊娠22週未満に亡くなること)や死産(妊娠22週以降に亡くなること)を経験した方も、産後ケアの対象に含まれます。ただし、同じ施設で他の赤ちゃんと過ごすことが精神的な負担になる場合もあるため、訪問型など本人の状況に合った支援方法を相談することが大切です。大阪市では、訪問型(アウトリーチ型)に流産・死産経験者専用の申請書を用意しています。
対象要件の変化
自治体によって対象要件は異なります。従来は「心身の不調や育児不安がある方」が主な対象でしたが、大阪市では令和8年(2026年)4月から対象を「産後ケアを必要とする者」へ拡充し、希望する方が幅広く利用できるようになっています。
利用できない主なケース
以下のような状況では利用できないことがあります。
- 感染症(インフルエンザ・胃腸炎など)に罹患(かかっている)中
- 入院が必要な状態や、医療的な処置・介入が必要な状態
3つのサービス形態とケア内容
産後ケア事業には、大きく分けて「宿泊型」「通所型」「訪問型」の3つの形態があります。どの形態でも、お母さんへのケア(健康管理・乳房ケア・授乳指導・心理的ケア)と赤ちゃんへのケア(発育・発達チェック、沐浴・スキンケアの指導)が共通して行われます。
なお、産後ケア事業はあくまでお母さんと赤ちゃんへの専門的なケアを行う事業であり、育児の代行・保育・家事サービスではありません。入院と異なり、育児や身の回りのことは基本的に自分で行います。
宿泊型(ショートステイ型)
病院や助産所などの施設に数日間宿泊して、助産師などの専門スタッフからケアを受けるサービスです。
退院直後でまだ身体が回復しきっていない時期や、誰かそばにいてくれる環境で休息したいときに適しています。名古屋市では「退院後から生後2か月頃」の利用を想定したプランが案内されています。
基本的に母子同室での利用ですが、施設によっては一定の時間帯に託児(赤ちゃんを預かってもらう)スタッフが対応しているところもあります。利用を検討する際は、予約時に施設に確認してみましょう。
通所型(デイサービス型)
病院・助産所・市区町村の施設などに日帰りで通うサービスです。個別またはグループでサポートを受けることができます。
昼食を提供している施設もあり、1日ゆっくり育児相談ができます。熊本市では1日型(おおむね5時間)・3時間型・2時間型と複数の時間区分が設けられており、その日の体調や都合に合わせて選びやすくなっています。
訪問型(アウトリーチ型)
助産師や保健師などが自宅を訪問してサポートするサービスです。「アウトリーチ(outreach)」とは「手を伸ばして支援に行く」という意味で、外出が難しい時期でも自宅でケアを受けられるのが大きな特徴です。
川崎市では宿泊型・通所型が生後4か月未満を対象とするのに対し、訪問型のみ1歳未満まで利用できます。また、大阪市では流産・死産を経験した方も訪問型での利用が可能です。
費用と申請の流れ
費用の目安
産後ケア事業は公的事業のため、利用者が支払う料金は実際のサービス費用よりも安く抑えられています。主要都市の費用目安は以下の通りです(2025〜2026年時点、各市公式HPより)。
| 自治体 | 宿泊型 | 通所型(1日) | 訪問型(1回) | 利用上限 |
|---|---|---|---|---|
| 名古屋市 | 3,520円/日 | 2,360円 | 1,560円 | 合算7日 |
| 横浜市 | 6,000円(1泊2日)+3,000円/延泊 | 2,000円 | ―(別事業) | 各7日 |
| 川崎市 | 15,000円(1泊2日)+7,500円/延泊 | 7,500円(6時間) | 5,000円 | 合算7日 |
| 大阪市 | 4,250円(1泊2日)+2,125円/延泊 | 1,500円 | 500円 | 宿泊・通所は合算7日、訪問は別途5回 |
| 熊本市 | 8,000円(1泊2日) | 3,000円(1日型) | 1,200円 | 合算10回 |
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補足事項は以下の通りです。
- 横浜市では、ふたごや三つごなど複数の赤ちゃんを同時に育てる「多胎児(たたいじ)」の家庭の場合、宿泊型のみ14日間まで利用できます(通所型は7日間まで)。
- 川崎市の通所型には、日帰りロング型(6時間・7,500円)のほかに、日帰りショート型(90分・4,000円)もあります。
- 熊本市では多胎児の場合、利用1回につき赤ちゃん1人あたり500円が加算されます。
生活保護世帯・住民税非課税世帯への減免
生活保護を受けているご家庭や、住民税が非課税(収入が一定額以下)のご家庭は、利用料が減額または無料になる場合が多いです(名古屋市・横浜市・川崎市・大阪市・熊本市 各HP)。
キャンセル料について
予約をキャンセルする場合、一定の期限を過ぎるとキャンセル料(利用料と同額程度)が発生することがあります。期限は自治体・施設によって異なります。
- 名古屋市:前日の正午まで
- 川崎市:利用日前日の12時まで
- 大阪市:前々日の17時まで
予定が変わりそうな場合は、なるべく早めに施設へ連絡しましょう。
申請の流れと利用開始までの目安
産後ケア事業は、自治体によって申請時期や予約方法が異なります。ここでは、一般的な流れを整理します。
① 妊娠中から申請できます
多くの自治体では、産後の利用に向けて妊娠中から申請を受け付けています。承認通知書が届くまでに時間がかかるため、妊娠中から余裕を持って準備しておくことが大切です。
- 名古屋市・川崎市:妊娠32週(妊娠8か月ごろ)から申請可能
- 大阪市:妊娠8か月以降から、サービスを利用したい日の2週間前までに申請
② 審査・承認通知書の受け取り
申請後、利用承認通知書が届くまでの目安は以下の通りです。
- 名古屋市:2〜3週間程度
- 川崎市:おおよそ10日程度
なお、熊本市は令和6年4月から事前申請が不要になり、直接施設へ予約できるようになりました。
③ 施設への予約・利用当日
通知書が届いたら、利用したい施設に直接予約します。当日は母子健康手帳と利用券(または承認通知書)を持参し、利用料は当日施設へ直接お支払いください。
申し込み先の調べ方
まずはお住まいの市区町村の公式ホームページ、または保健センター(区役所の保健師など)に問い合わせるのが基本です。神奈川県のように、都道府県が市区町村ごとの問い合わせ先一覧を公開しているケースもあります。
よくある質問
Q1. 産後ケア事業と産前・産後サポート事業はどう違いますか?
産前・産後サポート事業は、育児相談・情報提供・仲間づくりなどを通じた孤立防止が主な目的です。一方、産後ケア事業は助産師・保健師・看護師などの専門スタッフによる身体的ケアや育児技術の指導を行う、より医療・保健に近いサービスです。「話を聞いてもらいたい」なら産前・産後サポート事業、「身体のケアや授乳の悩みを専門家に診てもらいたい」なら産後ケア事業、というイメージです。
Q2. 産後うつが心配です。産後ケア事業は使えますか?
産後うつの不安や気分の落ち込みがある場合も、産後ケア事業を利用できます。専門スタッフによる心理的なケアや相談対応も事業内容に含まれています。ただし、すでに医療機関での治療が必要な状態の場合は、まずかかりつけの医師や保健師に相談することをおすすめします。
Q3. 上の子ども(きょうだい児)を連れて利用できますか?
施設や自治体によって対応が異なります。同伴を認めていない施設も多いため、予約時に必ず施設へ確認してください。
Q4. パートナーや家族は施設に同伴できますか?
宿泊型・通所型は基本的にお母さんと赤ちゃんが対象です。施設によってはパートナーの面会や送迎での入館ができる場合もありますが、詳細は施設ごとに異なるため、予約時に確認することをおすすめします。
Q5. 利用承認通知書を紛失した場合はどうなりますか?
自治体によって対応が異なります。名古屋市では再発行は不可、大阪市では再交付申請書の提出で対応、熊本市では利用当日に施設で新しい利用カードを受け取る仕組みです。紛失した場合はすみやかに担当窓口に連絡してください。
Q6. 前回の出産でも産後ケアを使いました。2人目でも使えますか?
利用日数・回数は「1回の出産につき」のカウントです。2人目の出産では改めて申請が必要ですが、上限日数・回数はリセットされます。
Q7. 帝王切開で出産しました。産後ケア事業は利用できますか?
帝王切開での出産であっても利用できます。むしろ経腟分娩(普通分娩)に比べて身体の回復に時間がかかることも多く、積極的に活用することをおすすめします。ただし、術後の経過によっては医療的な管理が優先されるため、退院のタイミングや状態について担当医と相談のうえ申請してください。
Q8. 外国籍ですが利用できますか?
住民票がある自治体の対象要件を満たしていれば、国籍に関わらず利用できます。ただし申請書類や施設でのコミュニケーションが日本語のみの場合もあるため、窓口で多言語対応の有無を確認することをおすすめします。
まとめ
産後ケア事業は、母子保健法に基づき全国の市区町村が実施する公的支援です。宿泊型・通所型・訪問型の3形態から、産後の状況や時期に合わせて選ぶことができます。
費用は自治体ごとに異なりますが、生活保護世帯・住民税非課税世帯については、利用料の減免制度を利用できることもあります。また、流産・死産を経験した方も対象に含まれており、孤立しがちな産後の時期を専門家に支えてもらえる制度です。
妊娠中から申請できる自治体が多いため、余裕を持って準備しておくことが重要です。サービス内容・費用・申請方法は自治体ごとに異なるため、まずはお住まいの市区町村の保健センターや公式ホームページで確認することが最初のステップです。
「使えるかな?」と思ったら、まず窓口に問い合わせてみてください。あなたと赤ちゃんの産後を、専門家がしっかり支えてくれます。
本記事の情報は各市区町村公式HP(2025〜2026年時点)およびこども家庭庁の公表資料に基づいています。制度の詳細や最新情報は、お住まいの市区町村の窓口または公式ホームページにてご確認ください。
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