
老舗の食品製造会社を経営するEさんは、長年続けてきた店舗営業の継続に悩んでいました。親世代から受け継いだ店舗には常連客も多く、簡単に閉じる決断はできません。しかし、設備の老朽化や原材料費・人件費の高騰、来店客数の減少により、従来の営業形態を維持することは年々難しくなっていました。
そこでEさんが検討したのが、採算の合わない店舗を廃業し、人気商品を活かした冷凍惣菜ブランドとして再出発する道です。廃業には、設備撤去費や原状回復費、在庫処分費などの費用がかかるため、資金面の不安も大きな課題でした。
そのような中でEさんが知ったのが、事業承継・M&A補助金「廃業・再チャレンジ枠」です。2026年2月27日から始まった14次公募に向けて申請準備を進め、2026年4月3日の締切までに申請を完了。その後、2026年5月15日に採択され、5月22日からの交付申請に向けて、契約内容や経費内容の確認を進めていきました。
本記事では、老舗食品製造会社が店舗廃業と冷凍惣菜ブランドへの再出発に取り組んだ、Eさんの申請体験談を紹介します。
老舗店舗を続ける難しさと、Eさんが抱えていた悩み
Eさんが経営する North Bridge Foods Ltd. は、地方都市で長年親しまれてきた食品製造会社です。親世代から受け継いだ店舗では、手づくりの惣菜や加工食品を販売しており、近隣住民や昔からの常連客に支えられながら営業を続けてきました。
創業から長い年月が経っていることもあり、地域では「昔からあるお店」として知られていました。Eさん自身も、店に立つたびに常連客から声をかけられることが多く、単なる商売以上に、地域とのつながりを感じていました。
しかし、その一方で、店舗営業を続けることは年々難しくなっていました。
特に大きな負担となっていたのが、設備の老朽化です。厨房設備や冷蔵設備は長年使い続けてきたもので、修理を重ねながら何とか営業を続けている状態でした。小さな不具合であればその都度対応できましたが、修繕費は少しずつ増え、まとまった設備更新を行うには大きな資金が必要でした。
さらに、原材料費や人件費、光熱費の上昇も経営を圧迫していました。売上が大きく落ち込んでいるわけではないものの、仕入れや固定費が増えたことで、以前のように利益が残りにくくなっていたのです。
来店客数の減少も課題でした。常連客は変わらず足を運んでくれるものの、新しい顧客の獲得は簡単ではありません。近隣の人口減少や生活スタイルの変化もあり、店頭販売だけに頼る営業形態には限界が見え始めていました。
Eさんは、店舗を続けたいという気持ちを持ちながらも、このまま同じ形で営業を続けることに不安を感じるようになりました。
特に2025年12月、年末商戦を終えたタイミングで、その不安はより現実的なものになります。年末は一年の中でも売上が伸びやすい時期でしたが、仕入れ価格や人件費、光熱費を差し引くと、思ったほど利益が残っていませんでした。
「忙しかったのに、手元に残るお金は少ない」
この現実を見たとき、Eさんは店舗営業の継続について本格的に考え直す必要があると感じました。
とはいえ、店舗を閉じる決断は簡単ではありませんでした。
長年通ってくれたお客様への申し訳なさ、親から受け継いだ店を自分の代で閉じることへの迷い、従業員への影響。そうした思いが重なり、Eさんはなかなか一歩を踏み出せずにいました。
また、廃業には費用もかかります。店舗を閉じる場合、設備の撤去、在庫の処分、賃貸物件の原状回復などが必要になります。営業をやめれば支出も止まると思っていたEさんにとって、「閉めるためにもまとまったお金が必要になる」という点は大きな負担でした。
この頃のEさんにとって、廃業は前向きな選択というよりも、できれば避けたいものという印象が強くありました。
しかし、数字を整理していくうちに、Eさんは少しずつ考え方を変えていきます。すべてを続けようとするのではなく、採算の合わない店舗部分を整理し、人気商品や長年培ってきた製造ノウハウを別の形で活かす道があるのではないか。
そう考え始めたことが、後の「廃業・再チャレンジ枠」の活用につながっていきました。
Eさんは、2026年1月に金融機関や支援機関へ相談することを決めます。店舗を閉じるかどうかだけでなく、会社として何を残し、どのように次の事業へつなげていくのかを整理するためでした。
この時点では、まだ具体的な補助金申請まで決まっていたわけではありません。ただ、2025年12月の年末商戦をきっかけに、Eさんは「このまま続ける」以外の選択肢を真剣に考え始めていました。
廃業は、会社を終わらせるためだけのものではない。
そう気づく前のEさんは、店舗を守りたい気持ちと、経営を立て直さなければならない現実の間で、大きく揺れていたのです。
支援事業者から補助金を紹介され、申請を検討
2026年1月、Eさんは金融機関と地域の支援機関に相談することにしました。
きっかけは、2025年12月の年末商戦を終えた後に感じた危機感です。売上は一定程度あったものの、原材料費や人件費、光熱費の上昇によって利益はほとんど残らず、老朽化した設備の修繕費も重くのしかかっていました。
このまま店舗営業を続けても、会社全体の体力が少しずつ削られていくのではないか。そう考えたEさんは、まず現在の事業を客観的に見直すことから始めました。
金融機関との面談では、直近の売上、利益、借入状況、今後必要になる修繕費などを整理しました。その結果、店舗販売を今の規模のまま続けるには、追加の設備投資や人員確保が必要になる一方で、それに見合う売上増加を見込むことは難しいという現実が見えてきました。
一方で、すべての事業に将来性がないわけではありませんでした。
Eさんの会社には、長年常連客に支持されてきた人気商品がありました。特に、手づくりの惣菜や加工食品の一部は、店頭販売だけでなく、近隣の飲食店や小規模スーパーからも問い合わせを受けることがありました。
支援機関との相談では、この点に注目しました。
店舗そのものを維持することは難しくても、人気商品のレシピや製造ノウハウ、地域での知名度を活かせば、別の形で事業を続けられる可能性があるのではないか。そこから、店舗販売中心の事業から、冷凍惣菜ブランドや法人向け卸へ転換する案が出てきました。
Eさんにとって、この提案は大きな転機でした。
それまでEさんは、店舗を閉じることを「事業を諦めること」だと感じていました。しかし、支援機関と話をする中で、採算の合わない部分を整理し、残せる商品や技術を次の形につなげる方法があると知ったのです。
そこで、Eさんは事業を大きく二つに分けて考えることにしました。
一つは、老朽化した店舗と一部の製造スペースです。ここは維持費が高く、今後も修繕や更新が必要になるため、廃業対象として整理する方向で検討しました。
もう一つは、人気商品のレシピ、製造ノウハウ、既存の取引先との関係です。これらは会社の強みとして残し、冷凍惣菜ブランドや法人向け卸、将来的なEC販売につなげていく方針を立てました。
このように整理してみると、Eさんの中で「廃業」という言葉の意味が少しずつ変わっていきました。
すべてを終わらせるための廃業ではなく、会社を次の形へ進めるための廃業。守るべきものを残すために、負担の大きい部分を整理するという考え方です。
ただし、計画を進めるには費用面の課題がありました。
店舗を閉じるには、設備撤去費、原状回復費、在庫処分費などが必要です。さらに、冷凍惣菜ブランドとして再出発するためには、商品設計や販路づくり、製造体制の見直しも必要になります。
2026年1月中旬、支援機関との面談の中で、Eさんは事業承継・M&A補助金「廃業・再チャレンジ枠」の存在を知りました。
この補助金は、廃業を伴う再チャレンジに取り組む事業者にとって、廃業費用の負担を軽減しながら次の事業展開を進めるための選択肢になります。Eさんのように、採算の合わない店舗を整理し、残せる経営資源を活かして新たな形に転換しようとするケースには、検討する価値がある制度でした。
Eさんは、すぐに申請を決めたわけではありません。
まずは、自社の取り組みが補助金の趣旨に合っているのか、どの経費が対象になり得るのか、どのようなスケジュールで準備を進める必要があるのかを確認することにしました。
2026年1月下旬には、店舗・旧製造スペースの廃業を前提に、冷凍惣菜ブランドへの再チャレンジ計画を具体化し始めました。あわせて、2026年2月上旬からは、原状回復費、設備撤去費、在庫処分費などの見積取得にも着手しました。
この時点でEさんは、ようやく前向きに考えられるようになっていました。
「店を閉めることと、会社を諦めることは違う」
そう思えたことで、Eさんは次の一歩を踏み出すことができました。
廃業は、失敗の印ではありませんでした。Eさんにとってそれは、長く続けてきた事業を守るために、形を変える決断だったのです。
短い期間で申請準備を進めた
Eさんが事業承継・M&A補助金「廃業・再チャレンジ枠」の活用を本格的に考え始めたのは、2026年1月下旬から2月上旬にかけてのことでした。
支援機関との相談を通じて、老朽化した店舗と一部の製造スペースを廃業し、人気商品を活かした冷凍惣菜ブランドへ再出発する方向性は見えてきていました。
ただし、補助金の申請では、「店舗を閉じたい」という事情だけでは十分ではありません。なぜ廃業が必要なのか、廃業によって何を整理するのか、そしてその後にどのような再チャレンジを行うのかを、具体的な計画として示す必要がありました。
14次公募の公募申請受付期間は、2026年2月27日(金)から2026年4月3日(金)17時までです。
Eさんは、公募開始を待ってから準備を始めたわけではありません。受付開始前の2026年2月上旬から、申請に必要となる情報の整理を進めていました。
まず取り組んだのは、廃業対象となる店舗と設備の洗い出しです。どの設備を撤去するのか、どの在庫を処分するのか、賃貸物件の原状回復としてどこまで対応が必要なのかを、支援機関と一緒に確認していきました。
あわせて、設備撤去費、原状回復費、在庫処分費などについて、複数の事業者から見積を取得しました。見積を取ることで、これまで漠然と不安に感じていた廃業費用が、具体的な金額として見えるようになりました。
Eさんはこの段階で、廃業には想像以上に多くの確認事項があることを実感します。
単に店を閉めるだけではなく、設備の扱い、在庫の処分、賃貸契約の確認、取引先への説明、従業員の働き方の見直しなど、整理すべきことは多岐にわたりました。
2026年2月27日(金)、14次公募の申請受付が始まると、Eさんは申請書類の作成を本格化させました。
申請書では、これまでの事業の状況、廃業を検討するに至った背景、廃業対象となる事業や設備の内容、再チャレンジ後の事業計画などを整理していきました。
特に時間をかけたのは、再チャレンジ計画の部分です。
Eさんの計画は、店舗販売を中心とした従来の営業形態から、冷凍惣菜ブランドと法人向け卸を軸にした事業へ転換するというものでした。そのため、どの商品を主力にするのか、どのような販売先を想定するのか、製造体制をどのように見直すのかを具体的にする必要がありました。
2026年3月上旬には、廃業対象となる店舗、厨房設備、冷蔵設備、処分予定の在庫などを一覧化しました。あわせて、撤去や原状回復にかかる見積内容を確認し、申請する経費との整合性を見直しました。
この作業を進める中で、Eさんは「何となく続けてきた事業」を、数字と計画の面から見直すことになります。どの部分に費用がかかっているのか、どの商品に強みがあるのか、今後どの販売方法なら継続できるのかが、少しずつ明確になっていきました。
2026年3月中旬には、冷凍惣菜ブランドとしての販売計画を整理しました。
まずは既存の人気商品を中心に、冷凍化に向いている商品を選定しました。そのうえで、近隣の飲食店や小規模スーパーへの卸販売、将来的なEC販売を見据えた商品展開を検討しました。
店舗を閉じることで、Eさんは地域とのつながりまで失ってしまうのではないかと不安を感じていました。しかし、支援機関と計画を整理していくうちに、店舗という形にこだわらなくても、商品を通じて顧客との関係を続けられる可能性があると考えられるようになりました。
2026年3月下旬には、申請内容の最終確認に入りました。
この時期に確認したのは、主に3つです。
1つ目は、廃業にかかる経費の内容です。見積書の金額、作業内容、実施時期に不自然な点がないかを確認しました。
2つ目は、再チャレンジ計画の実現可能性です。冷凍惣菜ブランドとして事業を始めるにあたり、必要な準備、販売先、製造体制、資金計画に無理がないかを見直しました。
3つ目は、スケジュールです。公募申請後、採択、交付申請、交付決定を経てから事業に着手する流れを踏まえ、いつ何を行うのかを整理しました。
Eさんは、申請準備を進める中で、補助金申請は単に書類を提出する作業ではないと感じるようになりました。
これまで感覚的に抱えていた経営課題を、数字や計画として整理する作業でもあったからです。
「何をやめるのか」
「何を残すのか」
「次にどのような形で事業を続けるのか」
申請書を作る過程で、Eさんはこの3つを何度も考えることになりました。
そして2026年4月3日(金)17時の締切までに、Eさんは電子申請を完了しました。
申請を終えた時点では、まだ採択されるかどうかは分かりません。それでもEさんにとって、この申請準備の期間は大きな意味を持っていました。
廃業を後ろ向きに捉えるのではなく、事業を次の形へ進めるための準備として考えられるようになったからです。
2026年2月27日の申請受付開始から、2026年4月3日の締切まで。約1か月強の期間で、Eさんは廃業費用の確認、再チャレンジ計画の作成、支援機関との相談、申請書類の整理を進めました。
慌ただしい期間ではありましたが、その過程でEさんは、自社のこれからの方向性をはっきりと言葉にできるようになっていったのです。
2026年5月15日の採択、そして5月22日の交付申請へ
に事業を始められるわけではありません。まずは採択結果を待ち、その後、交付申請を行い、交付決定を受けてから補助対象となる取り組みを進める必要があります。
Eさんもその点を支援機関から説明されていたため、申請後すぐに撤去工事や原状回復工事の契約を進めるのではなく、採択結果を確認したうえで、次の手続きに備えることにしました。
とはいえ、何もせずに待っていたわけではありません。
4月中旬から5月上旬にかけて、Eさんは支援機関と連絡を取りながら、採択された場合に必要となる書類や確認事項を少しずつ整理していました。申請時に提出した計画と、実際に進める予定の内容に大きなズレがないか。見積の有効期限は切れていないか。撤去や原状回復を依頼する予定の事業者と、今後のスケジュール調整が可能か。そうした点を確認していきました。
2026年5月15日(金)、採択結果が公表されました。
Eさんは支援機関とともに結果を確認し、自社の申請が採択されたことを知りました。長年悩んできた店舗整理と、冷凍惣菜ブランドへの再出発に向けた計画が一歩前に進んだ瞬間でした。
採択を確認したとき、Eさんは大きな安心感を覚えました。
廃業には、設備撤去費や原状回復費、在庫処分費など、まとまった費用が必要になります。これまで、店舗を閉じること自体に心理的な抵抗があっただけでなく、費用面の不安も大きな壁になっていました。
採択されたことで、その不安が少し軽くなりました。もちろん、補助金がすぐに入金されるわけではありません。それでも、計画が認められたことは、Eさんにとって大きな後押しになりました。
ただし、採択はゴールではありませんでした。
採択後には、交付申請という次の手続きがあります。交付申請では、申請時に計画していた内容をもとに、実際に実施する事業内容や経費内容をあらためて確認します。どの経費を補助対象として申請するのか、見積や契約内容に問題はないか、実施時期が制度上のスケジュールに合っているかを整理する必要があります。
Eさんは、2026年5月16日(土)から5月21日(木)にかけて、支援機関と採択後の流れを確認しました。
まず確認したのは、申請時の計画と実際の実施内容に差がないかという点です。廃業対象となる店舗や設備、在庫処分の内容、原状回復工事の範囲などを見直し、交付申請に向けて必要な情報を整理しました。
次に、見積書や契約予定先の確認を行いました。設備撤去や原状回復については、見積金額だけでなく、作業内容や実施予定時期も重要です。交付決定前に契約や発注を進めてしまうと、補助対象として認められない可能性があるため、Eさんは支援機関と相談しながら慎重に進めました。
また、冷凍惣菜ブランドへの再チャレンジに向けた準備も並行して確認しました。店舗を閉じたあと、どの商品を主力として残すのか。どの取引先に案内するのか。製造体制をどのように見直すのか。交付決定後にスムーズに動き出せるよう、実施前の準備を進めていきました。
そして2026年5月22日(金)、交付申請の受付が始まりました。
Eさんはこの日に合わせて、契約内容と経費内容の再確認を進めました。申請時に想定していた廃業費用と、実際に提出する見積内容が合っているか。原状回復や設備撤去の範囲に変更はないか。補助対象として申請する経費と、自社で負担する経費を正しく整理できているかを確認しました。
この作業は、採択前の申請準備とは少し性質が異なります。
申請時には、事業の方向性や再チャレンジの意義を整理することが中心でした。一方、交付申請では、実際にどの内容を、どの事業者に、いくらで依頼するのかを具体的に確認していく必要があります。
Eさんにとって、交付申請の準備は、いよいよ計画を実行に移すための最終確認のようなものでした。
ただ、ここでも焦りは禁物です。
交付決定日は、2026年6月上旬以降の予定です。補助対象となる事業は、原則として交付決定後に進める必要があります。そのためEさんは、5月22日の交付申請受付開始後も、すぐに工事や発注を開始するのではなく、交付決定を待ったうえで正式に動き出す準備を整えていきました。
採択によって、Eさんの再チャレンジは大きく前進しました。
しかし同時に、採択後も交付申請、交付決定、事業実施、実績報告、補助金交付手続きと、段階的に進めるべき手続きがあることも実感しました。
「採択されたときは、正直ほっとしました。ただ、そこで終わりではなく、交付申請に向けてもう一度内容を確認する必要がありました。ここからが本当のスタートだと感じました。」
Eさんはそう振り返ります。
2026年5月15日の採択、そして2026年5月22日の交付申請受付開始。
この1週間は、Eさんにとって、計画が認められた安心感と、実行に向けた責任感の両方を感じる期間でした。
長年続けてきた店舗を閉じる決断は、決して簡単なものではありません。それでもEさんは、廃業を単なる終わりではなく、次の事業へ進むための整理として受け止められるようになっていました。
交付決定後に始まる事業実施に向けて、Eさんは店舗廃業と冷凍惣菜ブランドへの再出発を、より具体的な行動へ移していく段階に入ったのです。
まとめ|廃業は終わりではなく、次に進むための整理だった
Eさんにとって、長年続けてきた店舗を閉じる決断は簡単なものではありませんでした。
親世代から受け継いだ店には、昔から通ってくれる常連客がいました。地域とのつながりもあり、自分の代で店舗を閉じることに対して、申し訳なさや迷いもありました。
しかし、設備の老朽化、原材料費や人件費の高騰、来店客数の減少といった課題は年々大きくなっていました。売上があっても利益が残りにくくなり、このまま同じ形で営業を続けることが、会社全体にとって大きな負担になる可能性がありました。
そこでEさんは、すべてを続けるのではなく、採算の合わない店舗部分を整理し、人気商品や製造ノウハウを活かした冷凍惣菜ブランドとして再出発する道を選びました。
その過程で活用を検討したのが、事業承継・M&A補助金「廃業・再チャレンジ枠」です。
2026年1月に金融機関や支援機関へ相談を始め、2月上旬からは廃業費用の見積取得や再チャレンジ計画の整理を進めました。そして、2026年2月27日から始まった14次公募に向けて申請準備を本格化させ、2026年4月3日17時の締切までに電子申請を完了しました。
申請準備の中で、Eさんは自社の事業を改めて見直すことになります。
どの部分に費用がかかっているのか。どの商品が強みなのか。何をやめて、何を残すのか。冷凍惣菜ブランドとして再出発するには、どのような販売先や製造体制が必要なのか。
こうした内容を整理することで、Eさんは廃業を単なる撤退ではなく、次に進むための準備として考えられるようになりました。
2026年5月15日に採択を確認したとき、Eさんは大きな安心感を覚えました。廃業にかかる費用面の不安が軽くなり、店舗整理と新たな事業展開に向けて前向きに動き出せるようになったからです。
ただし、採択はゴールではありません。
2026年5月22日からは交付申請の受付が始まり、Eさんは契約内容や経費内容の再確認を進めました。交付決定は2026年6月上旬以降の予定であり、実際の事業実施は交付決定後に進める必要があります。その後も、事業実施、実績報告、補助金交付手続きと、段階的な対応が続きます。
Eさんの事例から分かるのは、廃業は必ずしも後ろ向きな選択ではないということです。
採算の合わない事業を整理し、残せる商品や技術、取引先との関係を次の形につなげる。そうした前向きな事業整理の手段として、廃業という選択肢があるのです。
事業承継・M&A補助金「廃業・再チャレンジ枠」は、廃業費用の負担が大きく、次の一歩を踏み出せずにいる事業者にとって、再出発を後押しする制度の一つです。
店舗を閉じることは、会社を終わらせることではありません。
Eさんにとっての廃業は、長年培ってきた商品や技術を守り、次の世代に合った形で事業を続けるための整理でした。
同じように、事業の継続や廃業の判断に悩んでいる事業者にとって、Eさんの体験は「何を残し、何を変えるのか」を考えるきっかけになるはずです。
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