
建材や設備資材を扱う小さな卸会社では、長年FAXや電話、メールを使った受発注業務が続いていました。
しかし、インボイス制度への対応が始まってからは、請求書の確認や入力作業が増え、経理担当者の負担も少しずつ大きくなっていました。
そうした中で知ったのが、「デジタル化・AI導入補助金」のインボイス枠(電子取引類型)です。
受発注システムの導入や電子取引への移行に補助金を活用できる可能性があると知り、同社では第一次公募への申請を決めました。
この記事では、小さな建材卸会社が補助金を知ってから、社内稟議や取引先への確認を経て、第一次公募へ申請するまでの流れを体験談として紹介します。
FAXと手入力が残る受発注業務に限界を感じていた
Linx Works Inc.(仮名)は、愛知県で建材や設備資材を扱う小さな卸会社です。従業員は約30名で、地域の工務店や施工会社を中心に、日々多くの受発注業務を行っています。
同社では、長年にわたりFAXや電話、メールを使った受発注が中心でした。取引先によって注文方法が異なり、ある会社はFAX、別の会社はメール、急ぎの場合は電話というように、担当者が都度確認しながら対応していました。
特に負担になっていたのが、注文内容や請求情報の手入力です。FAXで届いた注文書を見ながら販売管理システムへ入力し、請求書発行時にはインボイス番号や金額、税率に誤りがないかを確認する必要がありました。
インボイス制度への対応が始まってからは、これまで以上に確認項目が増えました。請求書の形式や登録番号の確認、取引先ごとの対応状況の把握など、経理担当者の作業は少しずつ膨らんでいきました。
経理兼業務管理を担当するEさんは、当時の状況を次のように振り返ります。
「大きなトラブルが頻発していたわけではありません。ただ、毎月の請求処理や確認作業に時間がかかるようになっていて、このまま同じやり方を続けるのは難しいと感じていました。」
月末月初になると、受注内容の確認、納品書との照合、請求書の発行作業が重なります。ミスを防ぐために何度も確認する必要があり、結果として残業が発生することもありました。
社内でも「そろそろ受発注業務を見直した方がよいのではないか」という話は出ていました。
しかし、システム導入には費用がかかります。また、取引先にも使ってもらう必要があるため、簡単には踏み切れませんでした。
そのため、Linx Works Inc.では、すぐに全てをデジタル化するのではなく、まずはインボイス対応や請求処理に関わる部分から、少しずつ業務改善を進められないか検討し始めていました。
支援事業者から補助金を紹介され、申請を検討
受発注業務の見直しを考え始めていたものの、Linx Works Inc.では、すぐにシステム導入へ踏み切れずにいました。
理由のひとつは、導入費用です。
受発注システムや電子取引に対応した仕組みを整えるには、初期費用や月額利用料がかかります。小さな会社にとっては、決して軽い負担ではありませんでした。
もうひとつの理由は、取引先との調整です。
自社だけがシステムを導入しても、取引先が使いにくいと感じれば、結局FAXや電話でのやり取りが残ってしまいます。現場に無理なく使ってもらえるかどうかも、大きな不安でした。
そうした中、2026年4月上旬に、以前から業務システムについて相談していたIT導入支援事業者から「デジタル化・AI導入補助金」を紹介されました。
Eさんは、最初に話を聞いたときの印象を次のように振り返ります。
「補助金の名前に“AI”と入っていたので、最初は少し大がかりなものを想像しました。ただ、説明を聞いてみると、受発注システムの導入や電子取引への対応も対象になる可能性があると分かり、自社にも関係がある制度だと感じました。」
特に関心を持ったのは、AI-OCRや入力補助機能です。
FAXやPDFで届いた注文書や請求書の内容を読み取り、手入力の負担を減らせる可能性があると聞き、これまで課題に感じていた業務と結びつきました。
また、インボイス対応の面でも、電子取引システムを使うことで請求情報の確認や保存がしやすくなる点に魅力を感じました。
もちろん、新しい補助金ということもあり、分からない点は多くありました。
対象になるシステムなのか、申請にどのような準備が必要なのか、採択される可能性はあるのか。最初からすべてが明確だったわけではありません。
それでも、Eさんは「今のタイミングで一度検討してみる価値はある」と考えました。
「これまでも業務改善の必要性は感じていましたが、費用面で後回しになっていました。補助金を活用できる可能性があるなら、第一回の公募で申請してみようと思いました。」
こうして同社では、デジタル化・AI導入補助金のインボイス枠(電子取引類型)を活用し、受発注システムの導入に向けた具体的な検討を進めることになりました。
短い期間で申請準備を進めた
補助金の活用を検討することになったLinx Works Inc.では、まず申請に必要な準備を確認するところから始めました。
支援事業者から説明を受けると、申請には事業計画の作成だけでなく、事前に整えておくべき手続きがあることが分かりました。
そのひとつが、gBizIDプライムの取得です。
Eさんは、申請準備を始めた当時を次のように振り返ります。
「補助金の申請は書類を出せばよいだけだと思っていましたが、gBizIDの取得など、先に準備しておくことが意外と多いと感じました。」
2026年4月中旬には、gBizIDプライムの取得手続きとあわせて、SECURITY ACTIONへの対応も進めました。
どちらも申請に必要な準備だったため、支援事業者に確認しながら、一つずつ進めていきました。
並行して、導入を検討する受発注システムの比較も行いました。
重視したのは、インボイス対応ができること、取引先にも使いやすいこと、そしてFAXやPDFで届く書類の入力作業を減らせることです。
候補となるシステムの中には、AI-OCRによって注文書や請求書の内容を読み取り、入力作業を補助できるものもありました。
Eさんは、単に紙をなくすだけでなく、確認や入力の手間を減らせる点に期待を持ちました。
2026年4月下旬には、見積取得とあわせて社内稟議を進めました。
導入費用、補助金を活用した場合の自己負担額、導入後の運用イメージを整理し、経営陣へ説明しました。
また、主要な取引先にも簡単なヒアリングを行いました。
いきなり全取引先を電子取引へ切り替えるのではなく、まずは協力してもらいやすい取引先から始める方針です。
「取引先にも使ってもらう仕組みなので、自社だけで決めるのは難しいと感じました。まずは数社に確認し、無理なく始められる範囲を考えました。」
申請締切は2026年5月12日でしたが、同社では締切当日に提出するのではなく、少し前もって申請する方針を取りました。
ゴールデンウィーク前後は確認作業が止まりやすく、支援事業者側でも申請が集中する可能性があったためです。
そのため、4月下旬のうちに社内確認と取引先への簡易ヒアリングを終え、5月上旬には申請内容の最終確認に入りました。
短い準備期間ではありましたが、早めに支援事業者へ相談していたことで、必要な手続きを整理しながら進めることができました。
Eさんにとっても、補助金申請を通じて、自社の受発注業務を見直すよい機会になったといいます。
第一次公募へ申請。今後は段階的な導入を予定
申請に必要な準備を進めたLinx Works Inc.では、2026年5月上旬に申請内容の最終確認を行いました。
支援事業者と一緒に、導入予定の受発注システムの内容、補助対象となる費用、事業計画の説明に不足がないかを確認します。
特に、今回の申請では「インボイス対応」と「電子取引への移行」をどのように進めるかを分かりやすく整理することを意識しました。
Eさんは、申請直前の様子を次のように振り返ります。
「締切当日に慌てて提出するのは避けたかったので、少し前もって確認を終えるようにしました。支援事業者の方にも見てもらいながら進められたので、不安はかなり減りました。」
同社では、第一次公募の締切である2026年5月12日より少し前に申請を完了しました。
申請後は、交付決定の結果を待ちながら、採択された場合に備えて社内での運用準備を進めています。
ただし、すぐにすべての取引先を電子取引へ切り替える予定ではありません。
まずは、日頃からやり取りが多く、システム利用にも協力してもらいやすい取引先から始める方針です。
建材卸の現場では、FAXや電話での注文に慣れている取引先も少なくありません。
そのため、Linx Works Inc.では、既存のやり方を急にやめるのではなく、段階的に新しい仕組みに移行していくことを重視しています。
「FAXをすぐにゼロにするのは現実的ではないと思っています。まずは使いやすい部分から始めて、少しずつ電子取引に慣れてもらえればと考えています。」
採択後は、受発注システムの初期設定や社内説明、取引先への案内を進める予定です。
特に、注文内容の入力や請求情報の確認にかかる時間を減らし、月末月初の負担を軽くすることを目標にしています。
Eさんは、今回の申請を単なる補助金活用ではなく、これまで後回しにしてきた業務改善を進めるきっかけとして捉えています。
「補助金があるから導入するというより、以前から必要だと思っていた改善を、今回ようやく具体的に進められたという感覚です。」
第一次公募への申請を終えた段階では、まだ導入効果が出ているわけではありません。
それでも、申請準備を通じて課題を整理できたことは、同社にとって大きな一歩となりました。
まとめ|早めに相談したことで、第一次公募への申請に間に合った
Linx Works Inc.では、FAXや電話、メールが混在する受発注業務に以前から課題を感じていました。
特にインボイス制度への対応が始まってからは、請求書の確認や入力作業が増え、経理担当者の負担も大きくなっていました。
そのような中で、支援事業者から「デジタル化・AI導入補助金」を紹介されたことが、業務改善を具体的に考えるきっかけになりました。
新しい補助金で分からない点も多かったものの、早い段階で相談したことで、gBizIDプライムの取得やSECURITY ACTIONへの対応、システム選定、社内稟議までを短期間で進めることができました。
今回の申請は、まだ導入効果が出ている段階ではありません。
しかし、第一次公募への申請を通じて、自社の受発注業務やインボイス対応の課題を整理できたことは、大きな前進でした。
Eさんは、今回の取り組みについて次のように話します。
「補助金の申請をきっかけに、これまで何となく不便だと感じていた業務を見直すことができました。採択されたら、まずは一部の取引先から無理なく電子取引を始めていきたいです。」
デジタル化やAI導入というと、大きな会社の取り組みに感じるかもしれません。
しかし、日々の受発注や請求処理に手間を感じている小さな会社にとっても、業務を見直すきっかけになります。
Linx Works Inc.のように、まずは支援事業者へ相談し、自社に合った形で申請準備を進めることが、無理のないデジタル化への第一歩といえるでしょう。
資金調達マップ編集部が厳選 優良ファクタリング会社ランキング ファクタリングシークで
今すぐ確認する



