障害者雇用の定着を支えたキャリアアップ助成金|正社員化までの流れ

障害者雇用に取り組む企業の中には、「採用後にどのように定着を支援すればよいのか」「非正規雇用から正社員へ転換する際、どのような準備が必要なのか」と悩むケースも少なくありません。

ABC Support Inc.でも、障害のあるCさんを有期契約社員として採用した後、安定して働き続けてもらうための環境整備を進めていました。日々の勤務を通じてCさんの強みや適性が見えてきたことで、会社は正社員化を本格的に検討するようになります。

その際に活用したのが、キャリアアップ助成金の「障害者正社員化コース」でした。

この記事では、ABC Support Inc.がCさんを有期契約社員から正社員へ転換するまでの流れや、制度活用にあたって行った準備、正社員化後の変化について紹介します。

障害者雇用の定着を支えたキャリアアップ助成金|正社員化までの流れ

有期契約社員として働き始めたCさん

CさんがABC Support Inc.に入社したのは、2024年4月のことでした。

当時、ABC Support Inc.では、Web更新補助や資料整理、データ入力などのバックオフィス業務が増えており、正確にコツコツと作業を進められる人材を必要としていました。そこで、有期契約社員としてCさんを採用することになりました。

Cさんが担当したのは、主にデータ入力、社内資料の整理、Webサイトの更新補助、顧客メールの一次確認などです。入社当初は、業務量を無理に増やすのではなく、Cさんの得意な作業や負担を感じやすい場面を確認しながら、少しずつ担当範囲を広げていきました。

Cさんは、集中して正確に作業を進めることが得意でした。一方で、急な予定変更があったり、複数の業務が同時に重なったりすると、負担を感じやすい面もありました。

そのため、管理部マネージャーのHさんは、Cさんが安心して働けるよう、業務指示の出し方を工夫しました。口頭だけで指示を出すのではなく、チャットやタスク管理ツールにも内容を残し、Cさんが後から確認できるようにしたのです。

また、毎朝10分程度のタスク確認の時間を設け、その日に行う業務や優先順位を一緒に確認しました。締切が重なる場合には、Hさんが優先順位を整理し、「何から取り組めばよいか」が分かる状態にしました。

こうした取り組みによって、Cさんは少しずつ職場に慣れ、安定して業務に取り組めるようになっていきました。入社当初はデータ入力や資料整理が中心でしたが、勤務を重ねる中で、Web更新補助や顧客向け資料の確認なども任されるようになりました。

Cさんの丁寧な仕事ぶりは、社内でも徐々に評価されるようになりました。特に、ミスを防ぐために自分で確認リストを作成したり、不明点を早めに相談したりする姿勢は、チームにとっても安心材料となっていました。

有期契約社員としてのスタートではありましたが、Cさんは日々の業務を通じて、ABC Support Inc.にとって欠かせない存在になっていきました。

正社員化を検討するきっかけ

CさんがABC Support Inc.で働き始めてから半年が経つ頃、社内ではCさんの仕事ぶりを評価する声が増えていました。

入社当初は、データ入力や資料整理など、比較的取り組みやすい業務からのスタートでした。しかし、日々の勤務を重ねる中で、Cさんは少しずつ担当できる業務の幅を広げていきました。Web更新補助や顧客向け資料の確認なども任されるようになり、チームの中でも安定して業務を支える存在になっていったのです。

特に評価されていたのは、作業の正確さと確認の丁寧さでした。Cさんは、ミスを防ぐために自分でチェックリストを作成したり、不明点があれば早めにHさんへ相談したりしていました。こうした姿勢は、周囲の社員にとっても安心感につながっていました。

一方で、Cさん自身には、有期契約社員として働くことへの不安もありました。

仕事には慣れてきており、今後もABC Support Inc.で働き続けたいという気持ちはありました。しかし、有期契約という雇用形態である以上、契約更新の時期が近づくたびに「このまま働き続けられるのだろうか」という不安を感じることもありました。

Hさんは、定期面談の中でそうしたCさんの気持ちを知りました。そして、Cさんが安心して力を発揮し続けるためには、業務上の配慮だけでなく、雇用の安定も重要だと考えるようになりました。

会社としても、Cさんには今後も継続して働いてもらいたいという思いがありました。すでに日常業務の一部を安定して任せられるようになっており、Cさんが抜けてしまうと、チーム全体の業務にも影響が出る状況になっていたからです。

そこでABC Support Inc.では、Cさん本人の希望を確認したうえで、有期契約社員から正社員への転換を本格的に検討することになりました。

ただし、正社員化を進めるには、雇用契約を変更するだけでは不十分でした。就業規則や賃金規定、正社員転換後の業務内容、昇給や賞与の制度など、会社として整理すべき点がいくつもありました。

Hさんは、社内の制度を確認しながら、社会保険労務士にも相談しました。その中で、キャリアアップ助成金の「障害者正社員化コース」を活用できる可能性があることを知ります。

Cさんの働きぶりを評価し、長く安心して働ける環境を整える。そのための一つの手段として、ABC Support Inc.では助成金の活用を視野に入れながら、正社員化に向けた準備を進めていきました。

キャリアアップ助成金 障害者正社員化コースの活用

Cさんの正社員化を進めるにあたり、ABC Support Inc.では、キャリアアップ助成金の「障害者正社員化コース」を活用できるか確認しました。

この助成金は、障害のある有期雇用労働者などを正規雇用労働者へ転換し、継続して雇用した場合に活用できる制度です。ABC Support Inc.では、Cさんの働きぶりを評価し、長く安心して働ける環境を整えるための正社員化だったため、制度の趣旨にも合っていると考えました。

ただし、助成金を活用するには、単に雇用契約を変更するだけでは不十分でした。正社員転換の前に、キャリアアップ計画を作成し、管轄の労働局へ提出する必要があります。また、就業規則や賃金規定、正社員転換制度、昇給や賞与に関する制度なども確認しておく必要がありました。

Hさんは、社会保険労務士に相談しながら、まず社内の雇用管理体制を見直しました。有期契約社員と正社員の違いを整理し、Cさんを正社員へ転換した後の業務内容、勤務時間、賃金、昇給、賞与などの条件を確認していきました。

あわせて、申請に必要となる書類の準備も進めました。雇用契約書、出勤簿、賃金台帳、就業規則、賃金規定など、転換前後の労働条件や勤務実態を確認できる資料を整理しました。

2024年9月には、Cさんの正社員転換に向けてキャリアアップ計画を作成しました。計画の中では、キャリアアップ管理者を定め、労働者代表から意見を聴取したうえで、有期契約社員から正社員へ転換する方針を明確にしました。

その後、ABC Support Inc.は2024年9月24日に、管轄労働局へキャリアアップ計画を提出しました。Cさんの正社員転換予定日は2024年10月1日だったため、転換日の前日までに必要な手続きを済ませる形で進めました。

そして2024年10月1日、Cさんは有期契約社員から正社員へ転換しました。会社は新たに雇用契約書を取り交わし、正社員としての職務内容や労働条件を明示しました。

正社員転換後も、HさんはCさんの勤務状況を確認しながら、無理なく働き続けられるように配慮を続けました。業務指示を文章で残すことや、毎朝のタスク確認、業務量の調整といった取り組みは、正社員化後も継続しました。

また、助成金の支給申請に向けて、転換後6か月間の勤務実績や賃金支払いの記録を整えていきました。2025年4月25日に2025年3月分の給与を支給し、転換後6か月分の賃金支払いが完了したことで、第1期分の支給申請を行う準備が整いました。

ABC Support Inc.にとって、助成金の活用は単なる資金面の支援ではありませんでした。Cさんの正社員化をきっかけに、社内の雇用制度や書類管理を見直す機会にもなったのです。

正社員化後に生まれた変化

Cさんが正社員に転換したことで、まず大きく変わったのは、本人の安心感でした。

有期契約社員として働いていた頃は、契約更新の時期が近づくたびに、「このまま働き続けられるのだろうか」という不安を感じることがありました。仕事には慣れてきていても、雇用期間に区切りがあることで、将来の見通しを持ちにくい面があったのです。

正社員になったことで、Cさんは長く働き続ける前提で、自分の仕事や役割を考えられるようになりました。日々の業務にも落ち着いて取り組めるようになり、これまで以上に自分から確認や相談を行う場面も増えていきました。

会社側にとっても、Cさんの正社員化は大きな意味がありました。

有期契約社員の頃から、Cさんはデータ入力や資料整理、Web更新補助などを安定して担当していました。正社員化後は、そうした業務に加えて、顧客別の作業マニュアル作成や、新しく入社したスタッフへの業務説明など、より継続性のある業務も任せられるようになりました。

Hさんは、Cさんの変化を見ながら、障害者雇用では「採用すること」だけでなく、「安心して働き続けられる環境を整えること」が重要だと改めて感じました。

たとえば、業務指示を文章で残すことや、毎朝のタスク確認、優先順位の整理といった取り組みは、Cさんのために始めたものでした。しかし実際には、他の社員にとっても業務内容が分かりやすくなり、チーム全体の仕事の進め方を見直すきっかけにもなりました。

また、キャリアアップ助成金を活用する過程で、会社は就業規則や賃金規定、雇用契約書、出勤簿、賃金台帳などを改めて確認しました。これにより、Cさんの正社員化だけでなく、社内全体の雇用管理を整理する機会にもなりました。

Cさんにとっては、雇用の安定によって安心して働ける環境が整いました。会社にとっては、信頼できる人材に継続的な業務を任せられるようになりました。

ABC Support Inc.にとって、Cさんの正社員化は、単なる雇用形態の変更ではありませんでした。障害のある従業員が自分の力を発揮しながら働き続けるために、会社としてどのような支援や制度整備が必要なのかを考える、大きなきっかけとなったのです。

まとめ|助成金の活用が、障害者雇用の定着を後押しした

まとめ|助成金の活用が、障害者雇用の定着を後押しした

ABC Support Inc.では、Cさんの働きぶりを評価し、長く安心して働き続けてもらうために、有期契約社員から正社員への転換を行いました。

その過程で活用したのが、キャリアアップ助成金の「障害者正社員化コース」です。

助成金を活用するためには、キャリアアップ計画の作成や就業規則・賃金規定の確認、雇用契約書、出勤簿、賃金台帳などの書類整備が必要でした。Hさんは、社会保険労務士に相談しながら一つひとつ準備を進め、Cさんの正社員化に向けた体制を整えていきました。

正社員化後、Cさんは契約更新への不安が軽減され、より落ち着いて日々の業務に取り組めるようになりました。会社側も、Cさんに継続的な業務を任せやすくなり、顧客別の作業マニュアル作成や新入社員への業務説明など、担当できる範囲が広がっていきました。

また、Cさんのために始めた業務指示の文章化やタスク確認、優先順位の整理といった取り組みは、結果的にチーム全体の働きやすさにもつながりました。

障害者雇用の定着には、採用することだけでなく、本人が安心して働き続けられる環境を整えることが欠かせません。

Cさんの事例は、キャリアアップ助成金を単なる資金面の支援としてではなく、障害のある従業員の雇用安定と、会社の雇用管理体制の見直しにつなげたケースといえます。

この記事の著者

高橋美咲

高橋美咲(資金調達マップ編集部)

助成金や補助金制度に関する情報をリサーチ・編集。制度の概要や申請時の注意点などを、わかりやすくまとめることを得意とし、事業者や個人に役立つ情報提供を目指している。

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