
最低賃金の引き上げにどう対応するかは、小規模事業者にとって大きな悩みのひとつです。
スタッフの時給は上げたい。けれど、人件費だけが増えてしまうと、日々の経営が苦しくなるのではないか。そう感じている事業者の方も少なくないのではないでしょうか。
今回ご紹介するのは、埼玉県内で小さなクリーニング店を営む株式会社Bの体験談です。代表のKさんは、受付や会計、伝票作成、売上集計などを手作業で行っていたことから、スタッフの負担や作業ミスに悩んでいました。
そんな中、2024年秋ごろに商工会へ相談したことをきっかけに、業務改善助成金の存在を知ります。株式会社Bでは、POSレジと顧客管理システムを導入し、業務効率化を進めながら、パートスタッフの時給引き上げにも取り組むことにしました。
この記事では、株式会社Bが業務改善助成金を活用し、どのように申請準備を進めたのか、POSレジ導入によってどのような変化があったのかを、体験談としてわかりやすく紹介します。
高精度部品の相談が増え、設備投資の必要性を感じ始めた
株式会社Bは、埼玉県内で地域密着型のクリーニング店を営む小さな会社です。
店舗では、衣類のクリーニングを中心に、学生服、作業着、布団、カーテンなどの受付も行っていました。長年利用してくれる常連のお客様も多く、地域の方に支えられながら営業を続けてきました。
しかし、2024年秋ごろ、代表のKさんは大きな悩みを抱えていました。
そのひとつが、最低賃金の引き上げへの対応です。
株式会社Bでは、正社員2名とパートスタッフ4名で店舗を運営していました。パートスタッフの多くは、受付や会計、衣類の受け渡し、伝票整理などを担当しており、日々の営業には欠かせない存在でした。
Kさん自身も、できることならスタッフの時給を上げたいと考えていました。長く働いてくれているスタッフも多く、日ごろの頑張りにきちんと応えたいという気持ちがあったからです。
一方で、クリーニング店の経営環境は決して楽ではありませんでした。電気代やガス代、洗剤などの資材費は上がっており、売上が大きく伸びているわけでもありません。
そのため、時給を上げること自体には前向きでありながらも、人件費だけが増えてしまうことに不安を感じていました。
さらに、店舗内の業務にも課題がありました。
当時の株式会社Bでは、受付時の伝票作成や顧客情報の確認、売上集計などを手作業で行っていました。忙しい時間帯には受付に列ができることもあり、スタッフが慌ただしく対応する場面も少なくありませんでした。
手書きの伝票は確認に時間がかかり、記入ミスや転記ミスが起きることもありました。閉店後には、その日の売上を集計し、受付内容を確認する作業も必要でした。
特に繁忙期になると、Kさんやスタッフの負担は大きくなっていました。
「このまま時給だけを上げても、業務の負担が変わらなければ、会社としてもスタッフとしても苦しくなるのではないか」
Kさんは、そう感じるようになっていきました。
賃上げは必要。けれど、そのためには店舗の仕事の進め方も見直す必要がある。そう考えたKさんは、最低賃金への対応について、まずは地域の商工会に相談してみることにしました。
商工会で業務改善助成金を知り、POSレジ導入を検討した
最低賃金の引き上げにどう対応すればよいのか。
そう悩んでいたKさんは、2024年10月ごろ、地域の商工会に相談することにしました。
最初は、助成金を使うことが目的だったわけではありません。人件費の増加にどう備えるべきか、店舗の経営をどのように見直せばよいのか、まずは誰かに相談したいという気持ちでした。
商工会の担当者に現在の状況を説明すると、Kさんの店舗では、受付や会計、伝票管理、売上集計などに多くの時間がかかっていることが見えてきました。
そこで紹介されたのが、業務改善助成金でした。
業務改善助成金は、事業場内の最低賃金を引き上げるとともに、生産性向上につながる設備投資などを行う事業者を支援する制度です。
Kさんは最初、「助成金というと、もっと大きな会社が使うものではないか」と感じていました。
しかし、商工会の担当者から、小規模な店舗でも対象になる可能性があること、POSレジや顧客管理システムの導入が業務効率化につながる場合には、申請を検討できることを聞き、少しずつ現実味を持って考えるようになりました。
株式会社Bで特に課題になっていたのは、受付から会計、売上集計までの流れでした。
手書きの伝票を使っていたため、お客様の名前や預かり品の内容を確認するのに時間がかかり、忙しい時間帯にはスタッフが焦ってしまうこともありました。
また、閉店後にはその日の売上を確認し、伝票と金額を照らし合わせる作業が必要でした。少しのミスでも確認に時間がかかるため、Kさん自身が遅い時間まで残って作業することもありました。
そこでKさんは、POSレジと顧客管理システムを導入すれば、受付業務や会計処理をまとめて効率化できるのではないかと考えました。
顧客情報を登録しておけば、来店時の確認がしやすくなります。会計データも自動で記録されるため、売上集計の手間も減らせます。
さらに、パートスタッフでも操作しやすいシステムを選べば、業務の属人化を防ぎ、誰でも一定の品質で対応しやすくなると感じました。
もちろん、導入には費用がかかります。
レジ本体、周辺機器、システム利用料、初期設定費用などを考えると、小さなクリーニング店にとっては決して軽い投資ではありませんでした。
それでも、単に時給を上げるだけではなく、業務の進め方を見直すことで、スタッフの負担を減らしながら賃上げに取り組める可能性がある。
Kさんは、業務改善助成金を活用して、POSレジ導入とスタッフの時給引き上げをセットで進める方向で検討を始めました。
申請準備では、見積書と賃金引き上げ計画の整理に苦労した
POSレジと顧客管理システムの導入を検討し始めたKさんでしたが、すぐに申請できたわけではありません。
業務改善助成金を申請するには、導入したい設備の内容や費用だけでなく、賃金をどのように引き上げるのか、導入によってどのように業務が改善されるのかを整理する必要がありました。
株式会社Bでは、まずPOSレジを扱う業者に相談し、店舗の規模や現在の業務内容に合ったシステムを提案してもらいました。
レジ本体だけでなく、バーコードリーダー、キャッシュドロア、レシートプリンター、顧客管理機能、初期設定費用なども含めて見積もりを依頼しました。
しかし、Kさんにとって悩ましかったのは、単に「便利そうだから導入したい」と書くだけでは不十分だという点でした。
商工会の担当者からは、現在どの業務に時間がかかっていて、導入後にどの作業がどのように効率化されるのかを、できるだけ具体的に整理したほうがよいとアドバイスを受けました。
そこでKさんは、日々の業務を改めて振り返ることにしました。
たとえば、受付時にはお客様の名前を確認し、預かった衣類の点数や種類を手書きで記録していました。会計後も伝票を保管し、閉店後には売上金額と伝票内容を照合していました。
忙しい日には、受付対応だけでなく、伝票確認や集計作業にも時間がかかり、閉店後に30分以上残って作業することもありました。
POSレジと顧客管理システムを導入すれば、顧客情報の検索や会計処理がスムーズになり、売上集計も自動化しやすくなります。
こうした点を、申請書類の中で「受付時間の短縮」「売上集計の効率化」「記入ミスや確認作業の削減」として整理していきました。
もうひとつ重要だったのが、賃金引き上げ計画です。
株式会社Bでは、パートスタッフ4名のうち、事業場内最低賃金に近い水準で働いていたスタッフの時給を引き上げる方針にしました。
ただし、どのタイミングで、いくら引き上げるのかを決めるには、月々の人件費や今後の売上見込みも考える必要がありました。
Kさんは、商工会の担当者に相談しながら、無理のない範囲で賃上げを実施できるように計画を立てました。
このとき意識したのは、「助成金があるから一時的に賃上げする」のではなく、設備導入によって業務を効率化し、継続して時給を上げられる状態を目指すことでした。
申請書類の作成では、普段あまり使わない言葉や制度上の表現も多く、Kさんは何度も手が止まりました。
特に、業務改善の効果を文章で説明する部分では、「自分たちのような小さな店の取り組みを、どう書けばよいのか」と悩んだといいます。
それでも、商工会の担当者に確認してもらいながら、見積書、賃金引き上げ計画、導入後の業務改善内容をひとつずつ整理していきました。
そして、2024年12月ごろ、株式会社Bは業務改善助成金の申請書類を提出しました。
申請を終えたKさんは、ほっとした一方で、今回の準備を通じて、自分の店舗の課題を改めて見直すきっかけになったと感じていました。
POSレジ導入後、受付作業がスムーズになり賃上げにも踏み切れた
申請後、株式会社Bでは交付決定の連絡を待ちながら、POSレジ導入に向けた準備を進めていました。
助成金は、申請すればすぐに設備を購入できるというものではありません。原則として、交付決定を受けてから設備の発注や導入を進める必要があります。
Kさんもその点には注意し、商工会の担当者にも確認しながら、手続きの順番を間違えないよう慎重に進めました。
2025年1月ごろ、株式会社Bは交付決定を受け、POSレジと顧客管理システムの導入準備を本格的に始めました。
導入するシステムは、受付時に顧客情報を確認しやすく、会計処理や売上集計もまとめて行えるものを選びました。パートスタッフでも操作しやすいように、画面の見やすさや操作手順のわかりやすさも重視しました。
2025年2月ごろには、POSレジ本体や周辺機器の設置、初期設定、スタッフ向けの簡単な操作説明が行われました。
ただ、導入してすぐにすべてがスムーズに進んだわけではありません。
これまで手書きの伝票に慣れていたスタッフにとって、最初は画面操作に戸惑う場面もありました。顧客情報の登録方法や、預かり品の入力方法、会計処理の流れなど、覚えることも少なくありませんでした。
そのため、導入直後の数週間は、Kさんがスタッフと一緒に操作を確認しながら、少しずつ店舗の流れに合わせて使い方を整えていきました。
それでも、慣れてくるにつれて、少しずつ効果を感じられるようになりました。
以前は、来店したお客様の情報を伝票や過去の控えから探すことがありましたが、顧客管理システムを使うことで、名前や電話番号から情報を確認しやすくなりました。
会計処理もPOSレジ上で記録されるため、金額の確認や売上の集計がしやすくなりました。閉店後に伝票と売上金額を照らし合わせる作業も以前より短くなり、Kさんが残って確認する時間も減っていきました。
特に大きかったのは、受付業務の負担が軽くなったことです。
忙しい時間帯でも、操作手順が決まっていることで、スタッフが落ち着いて対応しやすくなりました。手書きの記入ミスや確認漏れも減り、スタッフ同士で業務を引き継ぎやすくなったといいます。
こうした業務効率化の見通しが立ったことで、Kさんは申請時に計画していたパートスタッフの時給引き上げを実施しました。
賃上げは、単に制度上必要だから行ったものではありません。日ごろから店舗を支えてくれているスタッフに、少しでも安心して働き続けてもらいたいという思いがありました。
スタッフからも、「作業が少し楽になった」「会計後の確認がしやすくなった」といった声が出るようになり、Kさん自身も、設備導入と賃上げをあわせて進めた意味を感じられるようになりました。
その後、株式会社Bでは、導入した設備の支払いを済ませ、必要な書類をそろえて実績報告と支給申請を行いました。
見積書や請求書、領収書、賃金台帳、出勤簿など、確認が必要な書類は多く、最後まで気を抜けるものではありませんでした。
それでも、申請時から商工会に相談しながら進めていたことで、必要書類を一つひとつ確認し、2025年春ごろには支給申請まで終えることができました。
今回の取り組みを通じて、Kさんは、業務改善助成金は単に設備導入の費用を支援してもらう制度ではなく、店舗の働き方そのものを見直すきっかけになる制度だと感じました。
最低賃金の引き上げは、最初は大きな負担に見えていました。しかし、業務効率化とあわせて考えることで、スタッフの負担軽減と賃上げの両方に取り組むことができたのです。
まとめ|業務改善助成金は、賃上げと業務効率化を考えるきっかけになる
今回ご紹介した株式会社Bの体験談は、小さなクリーニング店が業務改善助成金を活用し、POSレジ導入とスタッフの賃上げに取り組んだ事例です。
株式会社Bでは、最低賃金の引き上げに対応したいという思いがありながらも、人件費の増加や日々の業務負担に不安を感じていました。受付や会計、伝票作成、売上集計などを手作業で行っていたため、スタッフの負担も大きく、繁忙期にはミスや確認作業も発生していました。
そこでKさんは、商工会への相談をきっかけに業務改善助成金を知り、POSレジと顧客管理システムの導入を検討しました。
申請準備では、見積書の取得や賃金引き上げ計画の作成、導入後の業務改善効果の整理など、慣れない作業も多くありました。それでも、店舗の課題を一つひとつ見直すことで、どの業務に時間がかかっているのか、どこを改善すればスタッフの負担を減らせるのかを整理することができました。
POSレジ導入後は、受付時の顧客情報の確認や会計処理がスムーズになり、閉店後の売上集計にかかる時間も短くなりました。最初は操作に慣れるまで時間がかかったものの、少しずつ店舗の業務に定着し、スタッフも落ち着いて対応しやすくなりました。
そして、業務効率化の見通しが立ったことで、Kさんは予定していたパートスタッフの時給引き上げにも踏み切ることができました。
業務改善助成金は、単に設備導入の費用を支援してもらうためだけの制度ではありません。最低賃金の引き上げに対応しながら、業務の進め方を見直し、働きやすい職場づくりにつなげるきっかけにもなります。
もちろん、申請には書類の準備やスケジュール管理が必要です。設備の発注や導入のタイミング、賃金引き上げの内容、実績報告に必要な書類など、事前に確認しておくべき点も少なくありません。
それでも、賃上げに不安を感じている小規模事業者にとって、業務改善助成金は前向きな一歩を踏み出すきっかけになります。
最低賃金の引き上げを単なる負担として捉えるのではなく、自社の業務を見直す機会として活用することが大切です。株式会社Bのように、日々の作業を少しずつ改善していくことで、スタッフの働きやすさと店舗運営の安定につなげられる可能性があります。
参照元サイト
会社ランキング ファクタリングシークで
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