ものづくり補助金 グローバル枠の申請体験談|精密金属加工会社が海外向け部品受注に挑戦した事例

国内の取引先を中心に事業を続けてきた中小企業にとって、海外展開は大きな挑戦に感じられるものです。

愛知県岡崎市で精密金属加工業を営む株式会社Lも、長年にわたり国内メーカー向けの部品加工を中心に事業を行ってきました。しかし、2024年秋ごろ、東南アジアの産業機械メーカーから試作部品に関する問い合わせを受けたことをきっかけに、海外向けの部品受注に可能性を感じるようになります。

一方で、海外企業との取引には、高い加工精度や短納期対応、品質データの提示、英語資料の準備など、国内取引とは異なる体制づくりが必要でした。2025年初めごろには、既存設備のままでは十分に対応できないと感じるようになり、代表のTさんは設備投資を本格的に検討し始めます。

その後、2025年春ごろからものづくり補助金 グローバル枠への申請準備を進め、2025年夏ごろに申請。採択後は、海外向け受注に対応できる生産体制づくりを進めていきました。

今回は、精密金属加工会社である株式会社Lが、ものづくり補助金 グローバル枠に申請し、海外向け部品受注に挑戦した体験談をご紹介します。

ものづくり補助金 グローバル枠の申請体験談|精密金属加工会社が海外向け部品受注に挑戦した事例

海外メーカーからの問い合わせがきっかけだった

株式会社Lは、愛知県岡崎市で精密金属加工を行う中小企業です。自動車部品や産業機械に使われる小型の金属部品を中心に、国内メーカーからの受注を受けながら事業を続けてきました。

代表のTさんは、先代から受け継いだ加工技術を大切にしながら、日々の受注に対応していました。これまでは国内の取引先との関係も安定しており、大きく販路を変える必要性を感じる場面は多くありませんでした。

しかし、ここ数年は取引先からの単価引き下げや、短納期での小ロット対応を求められる機会が増えていました。国内市場だけに頼り続けることに、少しずつ不安を感じるようになっていたのです。

そんな中、2024年秋ごろ、東南アジアの産業機械メーカーから試作部品に関する問い合わせが入りました。相手先は、日本企業の精密加工技術に関心を持っており、株式会社Lの加工実績にも興味を示してくれました。

最初に問い合わせを受けたとき、Tさんは驚きと同時に、「自社の技術が海外でも評価される可能性があるのではないか」と感じました。これまで海外取引の経験は多くなかったものの、国内だけでなく海外にも販路を広げられるかもしれないと考えるきっかけになったのです。

一方で、海外企業との取引では、単に部品を加工できるだけでは不十分です。加工精度の説明、品質データの提示、納期管理、英語での資料対応など、国内取引とは違う準備が必要になります。

特に、海外メーカーからは「量産前に試作品の精度を確認したい」「検査データも一緒に提示してほしい」といった要望がありました。株式会社Lとしても対応したい気持ちはありましたが、既存設備や検査体制のままで十分に応えられるのか、不安もありました。

それでもTさんは、この問い合わせを一時的な話で終わらせたくないと考えました。2025年に向けて、海外向けの受注に対応できる体制を整えられないか、本格的に検討し始めたのです。

既存設備では海外向け受注に対応しきれないと感じた

海外メーカーからの問い合わせを受けたことで、Tさんは海外向け部品受注の可能性を感じるようになりました。

しかし、2025年初めごろ、試作品の見積もりや加工条件を具体的に確認していく中で、既存設備のままでは対応に限界があることも見えてきました。

株式会社Lでは、これまで国内メーカー向けの部品加工を中心に行ってきました。長年の経験があるため、通常の加工には対応できていましたが、海外メーカーが求める内容は、より高い加工精度と安定した品質管理が必要でした。

特に課題になったのが、加工時間と検査体制です。

複雑な形状の部品を加工する場合、既存の設備では工程が増えやすく、試作品を短納期で用意するには現場への負担が大きくなっていました。また、検査工程の一部は手作業で行っていたため、測定結果を整理し、海外企業へ提出できる形にまとめるまでにも時間がかかっていました。

国内の取引先であれば、これまでの関係性の中で細かな調整ができる場面もあります。しかし、海外企業との取引では、最初の段階から品質データや技術資料をわかりやすく示すことが重要になります。

Tさんは、海外展開を本気で進めるのであれば、営業資料を作るだけでは足りないと感じました。海外メーカーから安心して発注してもらうためには、加工精度を高める設備と、品質を説明できる検査体制の両方が必要だったのです。

とはいえ、新しい加工設備や検査体制を整えるには、大きな費用がかかります。自己資金だけで一度に投資するには負担が大きく、Tさんは資金面でも悩むようになりました。

そこでTさんは、2025年春ごろから、海外向け受注に対応できる体制づくりとあわせて、活用できる補助金がないかを調べ始めました。

ものづくり補助金 グローバル枠への申請を決意

2025年春ごろ、Tさんは海外向け受注に対応するための設備投資について、本格的に検討し始めました。

新しい加工設備を導入できれば、複雑な形状の部品でも加工時間を短縮しやすくなります。また、検査体制を整えることで、海外メーカーに対して品質データを提示しやすくなると考えました。

しかし、設備投資には大きな費用がかかります。海外展開に挑戦したい気持ちはあっても、すべてを自己資金だけで進めるには不安がありました。

そこでTさんが活用を検討したのが、ものづくり補助金 グローバル枠です。

株式会社Lの場合、海外メーカーからの試作依頼をきっかけに、海外向け部品の受注拡大を目指していました。そのため、単なる設備更新ではなく、「海外企業との取引に対応するための生産体制づくり」として計画を整理していきました。

申請準備では、まず海外メーカーからどのような問い合わせがあったのか、どのような部品の需要が見込まれるのかを整理しました。あわせて、既存設備では対応しきれない課題や、新しい設備を導入することで改善できる点もまとめていきました。

特に意識したのは、「なぜ今、海外展開に取り組む必要があるのか」を具体的に伝えることです。国内取引だけでは将来的な成長に限界があること、自社の精密加工技術に海外での需要が見込めること、設備導入によって加工時間や品質管理の面で改善が期待できることを、事業計画書に落とし込んでいきました。

普段の業務では、加工や納期対応に追われることが多く、自社の強みや将来計画を文章にする機会はあまりありませんでした。そのため、申請書類の作成には戸惑いもありました。

それでもTさんは、今回の問い合わせを会社の新しい成長につなげたいと考えていました。2025年夏ごろ、株式会社Lはものづくり補助金 グローバル枠への申請に踏み切りました。

採択後、海外向け受注に対応できる体制づくりへ

2025年夏ごろに申請を行ったあと、株式会社Lはものづくり補助金 グローバル枠に採択されました。

採択の知らせを受けたとき、Tさんは大きな安心感を覚えました。ただし、補助金は採択されて終わりではありません。交付申請や設備の発注、導入後の実績報告など、進めなければならない手続きがいくつもありました。

2025年秋ごろから、株式会社Lでは海外向け部品受注に対応するための設備導入を本格的に進めていきました。

まず導入したのは、高精度な加工に対応できるマシニングセンタです。これにより、これまで加工に時間がかかっていた複雑な形状の部品も、より安定して製造できるようになりました。

また、検査データの管理方法も見直しました。海外メーカーとの取引では、部品の品質を数値で説明できることが重要です。そのため、測定結果を整理し、必要に応じて提出できる体制を整えていきました。

あわせて、会社案内や加工実績をまとめた英語資料の準備も進めました。国内向けの資料だけでは伝わりにくかった加工技術や対応できる部品の種類を、海外企業にもわかりやすく説明できるようにしたのです。

2026年春現在、すぐに大きな海外受注が決まったわけではありません。しかし、問い合わせがあった際に、以前よりも具体的な提案ができるようになりました。

試作品の相談に対しても、加工方法や品質管理の流れを説明しながら対応できるようになり、Tさん自身も海外企業との商談に前向きに取り組めるようになっています。

今回の取り組みを通じて、Tさんは海外展開が特別な大企業だけのものではないと感じるようになりました。小さな会社であっても、自社の強みを整理し、必要な設備や体制を整えることで、海外市場に挑戦するきっかけを作ることができるのです。

まとめ|海外展開は小さな問い合わせから始まることもある

まとめ|海外展開は小さな問い合わせから始まることもある

今回ご紹介した株式会社Lの体験談は、国内メーカー向けの部品加工を中心に行ってきた精密金属加工会社が、海外メーカーからの問い合わせをきっかけに、海外向け部品受注へ挑戦した事例です。

2024年秋ごろに東南アジアの産業機械メーカーから試作部品の問い合わせを受けたことで、代表のTさんは海外展開の可能性を感じるようになりました。一方で、既存設備や検査体制のままでは、海外メーカーが求める加工精度や品質データの提示に十分対応できないという課題も見えてきました。

そこで株式会社Lでは、2025年春ごろから設備投資と補助金活用の検討を始め、2025年夏ごろにものづくり補助金 グローバル枠へ申請しました。採択後は、高精度な加工に対応できるマシニングセンタの導入や、検査データの管理体制、英語資料の整備を進めていきました。

すぐに大きな海外受注が決まったわけではありませんが、2026年春現在、海外メーカーからの問い合わせに対して、以前よりも具体的な提案ができる体制が整いつつあります。

ものづくり補助金 グローバル枠の申請では、単に「設備を新しくしたい」と伝えるだけではなく、海外展開の必要性や、導入設備によってどのように生産性や品質が向上するのかを整理することが大切です。

海外展開というと、大きな企業だけの取り組みに感じるかもしれません。しかし、株式会社Lのように、小さな問い合わせをきっかけに自社の強みを見直し、新しい販路づくりへ踏み出すこともできます。

海外向けの受注や販路拡大を考えている事業者は、自社の課題や強みを整理しながら、ものづくり補助金 グローバル枠の活用を検討してみるとよいでしょう。

この記事の著者

高橋美咲

高橋美咲(資金調達マップ編集部)

助成金や補助金制度に関する情報をリサーチ・編集。制度の概要や申請時の注意点などを、わかりやすくまとめることを得意とし、事業者や個人に役立つ情報提供を目指している。

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