2025年最新版|キャリアアップ助成金「賃金規定等改定コース」徹底ガイド ~実践手順・支給要件・申請のコツまで解説~

キャリアアップ助成金「賃金規定等改定コース」は、非正規雇用労働者の処遇改善を目的とし、就業規則や賃金規定の見直し・昇給制度の導入を通じて、従業員のモチベーション向上や定着率アップを支援する制度です。本記事では、2025年最新の制度改正点や具体的な活用手順、実際に申請を行った事業所の体験談など、現場目線で徹底解説します。初めての申請でも迷わず進められるよう、図表やチェックリストも交えながらポイントをわかりやすくまとめました。

キャリアアップ助成金には複数のコースがあります。各コースの解説記事は以下からご覧いただけます。

第1章 賃金規定等改定コースの概要と特徴

2025年最新版|キャリアアップ助成金「賃金規定等改定コース」徹底ガイド ~実践手順・支給要件・申請のコツまで解説~

キャリアアップ助成金の「賃金規定等改定コース」は、パートやアルバイト、契約社員など、いわゆる「非正規雇用」の方々の給料アップを実現したい企業・事業者のための支援制度です。

たとえば、「長く働いているパートさんにも年1回は必ず昇給できる仕組みを作りたい」「これまで個別の判断で決めていた時給や昇給ルールを、全員に公平な“規定”としてはっきり示したい」と考えている経営者や人事担当者にこそ、このコースはおすすめです。

このコースの最大の特徴は、「ただ1回きりボーナスを配る」のではなく、賃金の上げ方や昇給のルール自体を会社の“就業規則”や“賃金規定”として正式に決め、それをきちんと社内で運用していくことを求めている点です。

  • 毎年4月に全パート従業員の時給を一律20円アップする
  • 1年以上勤続した非正規社員には年1回必ず定期昇給の機会を設ける
  • これまで正社員だけだった昇給制度を、全従業員対象に広げる

こうした“ルール化”“見える化”こそが助成対象になります。

さらに、2025年度の改正では、「昇給額」や「昇給対象人数」など国が求める基準がより明確化され、「どんな規模の事業所でも、形式だけの名ばかり昇給」ではなく、実際に現場の非正規雇用スタッフにメリットが届くよう制度が見直されています。

第2章 賃金規定等改定コースの対象・助成の条件と支給額

2025年最新版|キャリアアップ助成金「賃金規定等改定コース」徹底ガイド ~実践手順・支給要件・申請のコツまで解説~

【対象となる企業・事業所】
このコースは、正社員以外の従業員(有期雇用・無期雇用のパート・アルバイト・契約社員・派遣スタッフなど)を1名以上雇用していれば、業種や企業規模を問わず原則どんな会社・お店でも申請が可能です。

なお、他の補助金や助成金と組み合わせて活用できるケースもありますが、「同じ内容・同じ目的」で重複して受給することはできません。たとえば、同じ昇給や雇用管理改善に対して複数の助成金で同時に申請する場合などは対象外となります。
また、以下のような場合も対象外となるため注意が必要です。

  • 雇用保険の適用事業所でない場合
  • 助成金の趣旨に反する業種や事業(例:風俗営業など)

他の助成金との併用については、内容や対象が明確に異なる場合に限り可能な場合もあります。詳しくは各制度の募集要項や労働局でご確認ください。

【助成金の主な支給要件】
・賃金規定等の新設・改定
就業規則や賃金規定に「昇給制度」や「賃金アップ」の仕組みを正式に記載し、従業員全員に周知する必要があります。
たとえば「毎年昇給を必ず行う」「昇給の基準や金額を明記」など、実態と整合した内容であることが求められます。

・対象となる従業員への昇給実施
有期・無期雇用の非正規従業員に対して、実際に規定に基づいた昇給を行い、昇給した人数や金額が国の基準を満たしている必要があります。

・昇給幅と昇給人数の基準
たとえば「2%以上昇給」や「全体の30%以上の非正規従業員が昇給対象」など、年度ごとに細かく条件が設定されているため、具体的な数値を必ず確認してください。

・申請までのスケジュール管理
昇給実施から一定期間内に申請手続きをしなければならず、申請が遅れると受給できません。

【助成金の支給額(2025年度基準)】
賃金規定等改定コースの支給額は、昇給を実施した人数や昇給額、会社の規模によって異なります。
例えば中小企業で5人の非正規従業員に昇給を実施した場合、
・1人あたり最大6万円~12万円程度
・昇給幅や昇給人数が多い場合は加算あり
・上限額は100万円前後
といった金額になります(最新の公募要項を必ずご確認ください)。

例:中小企業で昇給を実施した場合の支給額
人数昇給幅支給額(1人あたり)
3人2%以上6万円
5人3%以上12万円
10人5%以上18万円

※実際の金額は年度ごと・申請内容によって異なります

このように、制度の条件を正確に満たし、きちんとルール通り昇給を実施することが助成金を受け取るための最大のポイントです。

第3章 申請に必要な書類と準備のポイント

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賃金規定等改定コースの申請では、「どんな書類を用意するのか」「何に気を付けて準備すれば良いのか」が、実際の合否や手続きスピードを大きく左右します。
ここでは、現場でよくつまずくポイントや“申請直前に慌てないための準備”を徹底解説します。

申請で必要となる主な書類

以下は、2025年度時点で求められる主な書類です。
※詳細や追加資料は年度ごと・都道府県ごとで異なるため、事前に必ず最新の公募要項や労働局へ確認しましょう。

  • 就業規則・賃金規定
    昇給制度や賃金アップのルールが盛り込まれている最新版を提出。内容変更の場合は「新旧対照表」も必要。
  • 昇給実施を証明する資料
    昇給後と昇給前の賃金台帳・給与明細、昇給通知書など。「どの従業員が・いつ・どのくらい昇給したか」を明確に証明できるもの。
  • 労働条件通知書
    各従業員に交付している最新の労働条件通知書。未交付や記載不備はNG。
  • 雇用保険被保険者資格取得確認通知書
    昇給対象者全員分が必要。取得していない場合は申請不可。
  • 就業規則の届出受理通知書(労働基準監督署の受理印付き)
    変更・新設した場合は“届け出”が必須。受理印のない書類は無効。
  • その他、申請書類一式
    支給申請書、申立書、各種誓約書など、指定様式に従って記入・押印。

現場でよくある“つまずきポイント”

  • 就業規則や賃金規定が「周知」されていない
    実際に従業員に説明し、閲覧できるようにした記録(回覧・説明会・社内掲示など)も添付すると安心。
  • 昇給基準が曖昧、個別対応で規定と実態がズレている
    ルール通りの昇給が実施されているか、書類上でも確認。
  • 労働条件通知書が“昔のまま”で最新の条件を反映していない
    昇給後、すみやかに内容変更し、再度交付しておく。
  • 雇用保険の加入漏れ、保険証の紛失
    申請直前の“駆け込み加入”は原則NG。早めに社内体制を整える。
  • 助成金の最新様式を使っていない
    申請年度・都道府県によって指定様式が異なることも。必ず最新版を確認。

スムーズな準備のポイント

  • 必要書類は「昇給前から事前に整理・保管」しておく
  • 申請前に一度、社会保険労務士や労働局で「セルフチェック」を受ける
  • 就業規則・賃金規定の変更は、できるだけ早めに届け出・周知
  • 昇給した従業員ごとに、昇給理由や内容を“メモ”として残しておく

しっかり準備を進めておけば、「申請直前に慌てて書類を探す」「不備で再提出を求められる」といったトラブルを防げます。

第4章 実際の申請手順とスケジュール管理

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賃金規定等改定コースの申請手続きは、単なる「書類提出」ではありません。準備不足やタイミングのズレによる不支給も多く、正しい流れとスケジュール管理が成功のカギとなります。ここでは、現場でつまずきやすい各段階を具体的に解説します。

  • 就業規則・賃金規定の作成・改定と労働者への周知
    助成金申請の大前提は「昇給制度を明記した就業規則・賃金規定」が社内でしっかり機能していること。新設や改定の際は、必ず労働基準監督署に届け出を行い、受理印付きの控えを入手します。
    「規定を作っただけ」で満足せず、社内掲示や説明会、回覧などで従業員全員にルールが伝わっていることも証明できるよう記録を残しましょう。
  • 昇給の実施と実態確認
    助成金対象となる非正規従業員に対して、規定に基づく昇給を実際に行います。昇給日や金額、対象者などが規定通りかどうか、賃金台帳や給与明細などで確認し、「どの従業員がどのタイミングで昇給したのか」を明確に証明できるようにします。
  • 昇給後の労働条件通知書の再交付
    昇給を実施したら、必ず最新の労働条件通知書を該当従業員へ再交付し、内容が最新かつ正確であることを担保します。「通知書の控え」「本人サインの受領記録」なども残しておくと安心です。
  • 必要書類の整理・準備
    昇給実施から申請までは期間が定められており、書類の不備・不足があるとスムーズな申請ができません。
    「申請書類のひな形は年度や都道府県ごとに異なることがある」「不明点があれば早めに労働局へ相談」など、事前に複数回チェックする習慣を付けておきましょう。
  • 支給申請書の提出
    書類一式がそろったら、管轄の労働局へ期日までに提出します。特に「昇給実施日から○か月以内」などの期限は厳守が必要。遅れると審査自体を受け付けてもらえません。
  • 審査・実地調査
    提出後、書類審査や必要に応じて実地調査(ヒアリング)が行われます。不備や虚偽がないか細かくチェックされるため、事前準備を徹底しましょう。
  • 支給決定・助成金の入金
    審査を通過すれば、支給決定通知が届き、その後、指定口座へ助成金が振り込まれます。不備がある場合は追加書類の提出や再申請が求められることもあります。

スケジュール管理の例:一連の流れ

ステップ具体的な作業内容目安となる時期
就業規則・賃金規定の作成労働基準監督署への届け出・社内周知助成金申請の2~3か月前
昇給の実施非正規従業員への昇給規定改定後すぐ
労働条件通知書の再交付昇給実施後すぐ昇給実施日~1週間以内
申請書類の整理・準備必要書類一式の作成とチェック昇給後すぐ
労働局への支給申請書類提出・不備対応昇給実施日から2か月以内
審査・実地調査労働局からの問い合わせ対応申請後1~2か月
支給決定・助成金の入金通知受領後、指定口座に振込申請から2~4か月後目安

現場のポイント

  • 書類作成や証拠集めは「できるだけ前倒し」が安心
  • 不安な場合は社労士など専門家に“申請前セルフチェック”を依頼
  • 審査で不明点が出たときは、すぐに追加書類や補足説明を用意できる体制を作る

こうした流れ・段取りをきちんと押さえておくことで、「申請したのに助成金がもらえなかった」「書類不備で何度もやり直し」といったトラブルを最小限にできます。

第5章 体験談・現場のリアルとよくある失敗例

2025年最新版|キャリアアップ助成金「賃金規定等改定コース」徹底ガイド ~実践手順・支給要件・申請のコツまで解説~

賃金規定等改定コースは、制度の説明や必要書類だけを見ると「手続きさえすれば簡単にもらえそう」と思いがちです。しかし実際に取り組んでみると、思わぬトラブルや手間が発生したり、「申請して本当に良かった」と感じるケースもあれば、「想像よりずっと大変だった」という声も聞かれます。
ここでは、実際に経験した現場のリアルな体験談や、よくある失敗例などをご紹介します。

  • 【体験談1:小規模企業で「形だけ昇給」ではNGだった例】
    東京都内のサービス業・従業員15名。もともと非正規スタッフにも昇給を年1回実施していたが、「就業規則や賃金規定は昔のまま」「従業員に内容周知もしていない」状態。
    → 申請準備で社労士から「規定の届け出・全従業員への周知・記録」が不十分だと指摘され、いったん申請をストップ。
    【学び】「制度化しているつもり」でも、書類と実態の両方で“見える化”されていなければ不支給リスクが高まる。
  • 【体験談2:複数事業所で書類管理がバラバラに】
    地方の製造業・パート30名。支店ごとに賃金規定が微妙に違い、現場で昇給基準が曖昧。「本社と現場で台帳の記録や昇給通知が食い違い、労働局から追加資料を何度も求められて苦戦」。
    【学び】「本部で一元管理」「規定・通知・賃金台帳を整理してから申請」の重要性。
  • 【体験談3:現場の理解が進み、“離職率”も改善】
    飲食業・スタッフ20名。新規で助成金活用を決意し、「全従業員へ制度説明会→新しい昇給ルールを掲示→昇給後に個別面談」。
    現場の非正規スタッフから「自分たちの働き方が“ちゃんと評価されている”と実感できた」と好評。

    【成果】制度をきっかけに従業員の定着率が向上し、「経営者目線でも“書類のため”でなく“現場のため”の見直しにつながった」と実感。

よくある失敗例とその対策

  • 昇給額や昇給タイミングが規定に明記されていない → 具体的なルールを必ず明文化
  • 就業規則は作ったが、従業員に周知していない → 説明会・社内掲示・サイン記録など必須
  • 昇給台帳や通知がバラバラ → 本部での一元管理がカギ
  • 申請書類が旧様式・別年度のものだった → 申請前に最新様式を必ずチェック
  • 労働条件通知書が昔のまま → 昇給ごとに必ず最新版を再交付

現場目線での“成功のコツ”

  • 書類作成を「経営者や担当者だけ」で抱えず、現場の声も吸い上げる
  • 日頃から昇給実績や就業規則の運用記録をこまめに残す
  • 不安があれば、早めに社労士や専門家へ相談
  • 制度改正や自治体独自の要件変更も“毎年チェック”が必須

第6章 まとめ

2025年最新版|キャリアアップ助成金「賃金規定等改定コース」徹底ガイド ~実践手順・支給要件・申請のコツまで解説~

賃金規定等改定コースは、パート・アルバイトや契約社員など非正規雇用の従業員に対しても、公平かつ継続的な昇給や賃金改善の仕組みを導入したい事業者を支援する制度です。助成金の受給には、就業規則や賃金規定の整備、昇給ルールの明文化、従業員への周知といった実務的な取り組みが求められます。

2025年度の制度改正により、昇給額や対象人数などの要件が明確化され、形式的な規定だけでなく実際の運用状況がより厳しく審査されるようになっています。これにより、実態として昇給が反映される環境づくりや、従業員が制度の変化を納得して受け入れられる運用体制が重要視されています。

申請を検討する際は、まず現行の就業規則や昇給ルールを見直し、自社の体制や現場の声を反映させた形で制度設計を進めることが大切です。不明点や運用上の疑問がある場合は、早めに社会保険労務士や労働局に相談し、トラブルの予防やスムーズな申請を目指しましょう。

賃金規定等改定コースの活用は、従業員の定着率向上や働きがいの醸成、企業の人材確保など、さまざまなメリットにつながります。制度の目的を理解し、現場で実効性のある運用を進めることで、企業と従業員双方の成長を後押しできるはずです。

参考リンク・外部情報(実際に閲覧可能ページ)