第1章 個人事業主向け新事業進出補助金とは?
補助金の目的と制度の背景
こうした時代背景を受けて、国や自治体は事業者の新規ビジネスの立ち上げや第二創業、業種転換などを積極的にサポートしています。補助金は、その第一歩となる設備投資やサービス開発、販路開拓などにかかる初期費用を支援することで、地域社会や日本経済全体の活性化を図るという政策的な目的があります。
なぜ個人事業主にもチャンスが広がるのか
たとえば、1人または少人数のスタッフで運営している方や、地域密着型のビジネス、専門スキルを活かした新分野進出など、多様な働き方や挑戦が正当に評価される時代です。今こそ、「法人でないから無理」とあきらめていた方にも、新規事業補助金を活用する大きなチャンスが巡ってきています。
支援される内容・メリット
最大のメリットは、返済不要の資金を受け取れること。これは金融機関からの借入とは大きく異なり、事業主の資金リスクを大幅に軽減します。また、自己資金の負担が減ることで、思い切った投資や新しい取り組みに挑戦しやすくなり、ビジネスの成長スピードも加速します。実際に補助金を活用して新しい分野へ進出し、売上や知名度を大きく伸ばしている個人事業主の事例も多数報告されています。
第2章 補助対象者と対象事業(個人事業主向け)
補助対象となる個人事業主の条件
新事業進出補助金の対象は、日本国内で税務署へ開業届を提出している個人事業主です。以下の要件を必ず満たす必要があります:
- 開業から1年以上の営業実績があること
- 申請時点で常勤従業員を1名以上雇用していること
- 過去に本補助金での支援を受けたことがない、または重複して申請していないこと
これらの要件を満たすことで「個人事業主」でも法人と同等に申請資格があります。ただし、従業員がゼロの場合や、開業から1年未満の場合は原則として対象外となります。公募要領をよく確認しましょう。
対象となる事業・経費の範囲(例)
補助対象となる事業と経費は、個人事業主と中小企業で重なる部分が多いですが、スケールや対象経費に差があります。以下の表で整理しました:
項目 | 個人事業主 | 中小企業 |
---|---|---|
対象事業 | 新商品・新サービス開発、IT導入、販路拡大、業種転換、地域資源活用など、 少人数で実施可能な規模・フレーム | 個人と同様+工場建設、大規模設備投資、 研究開発プロジェクトなど大規模案件も可 |
対象経費(一例) | 機械・設備購入、ITシステム導入、広告宣伝、 外注費、専門家への相談料、研修費、市場調査費など | 個人と同様+建物費(改修・構築物)、 大型機械、グループプロジェクト費など |
審査基準と申請のポイント
審査において重視されるのは以下の視点です:
- 新規性:他にない独自性のある事業か
- 実現可能性:計画に根拠と裏付けがあるか
- 成長性:売上・付加価値の見込みは明確か
- 地域貢献:雇用創出や地域活性化に繋がるか
個人事業主は少人数体制を前提に、具体的で現実的な数値計画や準備状況を丁寧に示す必要があります。一方で中小企業は、雇用創出や地域波及効果といったスケール感もアピール要素となります。
詳細は「公募要領」を参照してください。
個人事業主向けまとめ表
比較項目 | 個人事業主 | 中小企業 |
---|---|---|
要件 | 開業後1年以上・従業員1名以上 | 中小企業基本法に基づく法人格・資本金・従業員数等 |
対象事業 | 少人数で実行可能な小規模・柔軟型事業 | 大規模な設備・開発・プロジェクトも可 |
対象経費 | 設備、システム、研修、広告など一般投資 | 加えて建物、構築物、大規模機材など |
審査視点 | 具体性・実現性・地域波及性が鍵 | 雇用・投資規模・地域への貢献が評価対象 |
第3章 申請資格の証明と実務上の注意点
個人事業主であることを証明する書類・提出方法
申請時には、税務署に提出した開業届の控えや直近の確定申告書が必要です。場合によっては住民票や事業所の賃貸契約書など、事業実態を示す書類が求められることもあります。申請書と証明書類の内容が一致しているか、提出前に必ず確認しましょう。
実態との整合性(事業所・従業員・開業日など情報の統一)
申請内容と事業実態が一致しているかが審査のポイントです。所在地、電話番号、開業日、従業員数や氏名などが証明資料や過去の申請書類と食い違っていないか確認してください。特に従業員については、雇用契約書や給与明細、雇用保険・社会保険の加入状況が求められる場合もあります。
法人成りや事業継承に関する申請上の留意点
個人事業主として申請後に法人成りや事業承継をした場合でも、事業の継続性が証明できれば申請可能な場合があります。ただし事業内容や拠点、体制が大きく変わった場合や継続性の説明が不十分な場合は対象外となることもあります。詳細は公募要領や公式FAQで事前に確認し、不明点は事務局に相談してください。
過去の受給履歴や他制度利用と重複に関するリスク
同じ内容や経費で過去にこの補助金を受給していたり、他の補助金や助成金と重複して申請している場合は原則として対象外です。また、過去に不正受給や返還命令を受けた経歴がある場合は審査で不利になることがあります。申請や受給状況を整理し、不明点や不安があれば早めに事務局や専門家に相談しましょう。不正や重複が判明した場合、補助金返還やペナルティのリスクがあります。

第4章 必要書類と注意点(個人事業主向け)
直近1期分以上が必要。e-Taxで申告の場合は「受信通知」や申告日時がわかる書類も添付。白色申告でも確定申告書が必須。
よくあるミスと注意点:e-Tax受信通知を忘れる/受付印や申告日時がない/古い年度の提出。必ず最新分、公募要領の年分指定も確認。
常勤従業員1名以上の条件を証明(雇用契約書、給与台帳、雇用保険・社会保険加入記録など)。
よくあるミスと注意点:パート・アルバイトや家族従業員のみでカウント/古い資料・記録の提出。必ず申請時点の最新記録で雇用形態も確認。
運転免許証・マイナンバーカード・パスポート等の顔写真付きが原則。顔写真付きがない場合は、健康保険証+住民票(発行3か月以内)など2種以上を組み合わせて提出。
よくあるミスと注意点:顔写真なし書類のみ提出や有効期限切れ書類の提出。顔写真付き推奨、なければ追加書類必須・審査遅延リスクあり。
住民票、賃貸契約書、水道光熱費の請求書などで所在地を証明。
よくあるミスと注意点:申請書記載と住所が異なる/古い・失効済みの書類提出。同一住所か必ず確認。
公式テンプレートに沿って、事業の新規性・目的・実施計画・数値目標・補助金の使途・根拠データを具体的に記載。
よくあるミスと注意点:テンプレ外の様式/新規性や使途・目標が曖昧/必須項目の不足。公式テンプレと審査項目を必ず確認。
設備・システム導入の場合、購入予定は見積書、契約済みは契約書や注文書の写し。金額・内容・日付が明記されているもの。
よくあるミスと注意点:古い・金額や内容が曖昧な書類提出。必ず最新かつ内容明記のもの。
公式指定のフォーマットで作成。
よくあるミスと注意点:古いフォーマットや記載漏れ。不備は審査対象外リスクあり。必ず最新様式・全項目記入。
年度や区分ごとに誓約書・委任状など追加書類が指定される場合あり。
よくあるミスと注意点:公募要領やFAQの確認漏れによる未提出。必ず公式で最新情報をチェック。
※法人の場合に必要な「登記簿謄本(履歴事項全部証明書)」は、個人事業主の場合は不要です。
※最新情報・詳細な様式や注意点は、必ず公式ページ(公募要領・FAQ等)でご確認ください。
第5章 補助額・補助率・採択の基準・採択後の流れ
個人事業主が利用できる新事業進出補助金は、上限500万円、補助率は原則2/3(66.7%)です。たとえば総事業費600万円の場合、補助金は最大400万円、自己負担は200万円となります。
採択から交付決定までに所定の審査・手続きがあり、交付決定後に事業・経費支出がスタートできます。
事業の実施期間は原則「交付決定日から14か月以内」または「採択発表日から最長16か月以内」のいずれか短い方までです。
この期間内に事業の実施・経費支出・完了報告まで終える必要があり、超過すると補助対象外となります。
事業開始は「交付決定日」以降、それ以前の支出は一切対象外となるので注意。
- 美容サービス(例:美容室がオンライン予約・決済システムを導入し営業時間外も予約・決済できる環境を整備)
- 食品製造・販売(例:地元農産物を使ったスイーツを企画し、自社ECサイトで全国販売を開始)
- 飲食業(例:カフェがキッチンカーを導入し、イベントや住宅街で移動販売を実施)
- 印刷業(例:ネット注文システムを開発し全国から小ロット注文に対応)
- 配食・宅配(例:飲食店が高齢者向け健康弁当の宅配サービスを新たに開始)
- 新規性や成長性が認められない単純な設備更新(例:事務機器や空調設備の通常の買い替え)
- 補助対象外経費の申請(例:自宅の家賃、生活費、運転資金など)
- 公序良俗に反する・射幸性の高い業種(例:ギャンブル性の高い事業、新規性のないアフィリエイトサイト等)
- オンライン予約・決済システムの導入
- 地元食材を活用した新商品・ブランド開発
- キッチンカーによる新規販路拡大
- ITを活用したオンライン受注サービス
- 高齢者向け配食・宅配サービスの立ち上げ
- 単なる設備や事務機器の買い替え
- 運転資金や家賃、生活費の補填
- ギャンブルや風俗営業など射幸性の高い事業
- 著作権・法令違反の可能性がある新事業
- 新規性や社会性が認められない模倣ビジネス
※補助率や審査基準・期間ルールは年度ごとに変更される場合があるため、必ず公式の公募要領・FAQで最新情報をご確認ください。
第6章 個人事業主が補助金を活用するメリットと実際の効果・完了報告までの流れ
- 返済不要の資金で、新規事業への挑戦がしやすくなる
- 自己資金負担を大幅に軽減できるため、リスクを抑えて設備投資やサービス開発が可能
- 補助金の利用で経営の安定や新規顧客の獲得、売上拡大が期待できる
- 補助金活用の実績が信用力アップや、次回以降の申請時のプラス材料になる
- 新しい事業分野に参入し、売上の柱を増やせた(例:既存飲食店が高齢者向け宅配弁当を始め新規顧客を獲得)
- IT投資や業務効率化で従業員の負担が減り、サービス品質・生産性が向上した
- ブランド力向上や販路拡大、地域との新たなつながりづくりに成功した
- 自己資金が少なくても新しいチャレンジができ、事業の成長スピードが格段に上がった
- 補助金の使い道や報告義務には厳格なルールがあり、事務手続きが煩雑になることもある
- 交付決定前に支出した経費は補助対象外となる場合が多く、タイミング管理が重要
- 不正受給やミスがあると補助金返還やペナルティのリスクがあるので、最新の公募要領を必ず確認して申請・運用する
採択後は交付決定通知を受け、そこから14か月以内(または採択発表日から16か月以内のいずれか短い方まで)に事業を実施・経費執行・実績報告(完了報告)まで完了させます。
完了報告が遅れると補助対象外になるためスケジュール管理は厳守が必要です。

第7章 2025年最新版の公募スケジュールと最新動向・採択後のフロー
新事業進出補助金は2025年度から新設された制度です。今年度の初回公募は4月22日から案内が始まり、申請受付は6月17日18:00~7月10日18:00で終了しました。
現時点で申請は締め切られていますが、過去の国の類似補助金では年間2~3回の追加公募が行われる傾向があり、秋~冬(9月~12月頃)に追加募集が実施される可能性もあります。今後の追加公募や来年度の募集については、公式ページや公募要領で必ず最新情報をご確認ください。
- 【採択発表】申請審査後、公式サイトで採択者一覧が発表
- 【交付申請・交付決定】採択後、交付決定まで追加資料提出や手続きが必要
- 【事業実施】交付決定日以降に着手、交付決定前の経費は一切対象外
- 【実績報告・完了報告】交付決定日から14か月以内、または採択発表日から最長16か月以内に事業終了・報告
- 【補助金の請求・入金】完了報告審査後に補助金が支払われる
スケジュールの管理と手続き漏れ防止が重要です。
今年度から書類様式や審査基準の変更など新しい運用が始まっています。過去の補助金の書類や体験談だけでなく、必ず「2025年度公募要領」や公式FAQで最新の情報をチェックしてください。
補助金の申請競争は年々激しくなっています。募集のタイミングや様式変更をいち早くキャッチできるよう、公式サイトの定期的なチェックと早めの事前準備が大切です。
第8章 まとめと今後のアクションプラン
新事業進出補助金は、個人事業主が新しい事業に挑戦しやすくするための貴重な支援制度です。返済不要の資金でリスクを抑えつつ、事業の拡大や経営の安定化につなげることができます。
補助金を有効活用した体験談や成功事例も多く、積極的な情報収集と準備が成果に直結します。手続きはやや複雑ですが、公式情報を活用しながら進めることで、個人事業主でも十分にチャンスを掴めます。
- 公式サイトや公募要領を必ず定期的に確認する
- GビズIDなど電子申請に必要な準備を早めに進める
- 事業計画書・経費見積書の作成、書類の事前整理
- 過去の採択事例や体験談を参考に、事業内容や数値目標を具体化する
- 商工会議所や支援機関の無料相談を活用する