2025年最新版|キャリアアップ助成金「障害者正社員化コース」徹底ガイド ― 支給額一覧・申請手順・活用ポイントまで解説

キャリアアップ助成金の各コースについて、以下からご覧いただけます。

障害者の安定した雇用機会を確保し、職場定着を促進する「障害者正社員化コース」。
有期契約や無期契約で働く障害者を正社員へ転換した事業主に対し、国が助成金を支給する制度です。
本記事では、中小企業と大企業で異なる支給額の一覧、申請の流れ、支給要件、計算例、活用のコツまでわかりやすく解説します。
制度のメリットや注意点も網羅しているため、これから申請を検討している企業担当者の方は必見です。

第1章 障害者正社員化コースの概要

2025年最新版|キャリアアップ助成金「障害者正社員化コース」徹底ガイド ― 支給額一覧・申請手順・活用ポイントまで解説

「障害者正社員化コース」は、障害のある有期・無期雇用労働者を
期間の定めのない正社員(勤務地限定・職務限定・短時間正社員を含む)へ
転換した事業主に対して支給されるキャリアアップ助成金です。
目的は、安定度の高い雇用形態への転換を通じて、障害者の職場定着を図ることにあります。

制度のねらい

  • 障害者の長期的な就労機会の確保
  • 正社員転換による待遇改善・安定収入の実現
  • 法令への適切な対応とコンプライアンスの強化
  • ダイバーシティ経営/CSRの推進

正規雇用の定義と要件

本助成金でいう「正規雇用」とは、雇用期間の定めがない雇用形態であり、
以下の条件を満たす必要があります。

  • 就業規則に昇給制度が明記され、対象者に適用されていること
  • 賞与または退職金制度のいずれかが適用されていること
  • 勤務地限定正社員・職務限定正社員・短時間正社員も要件を満たせば対象

支給の基本イメージ

助成額は、転換パターン(有期→正規/有期→無期/無期→正規)と
企業規模(中小企業/大企業)で決まります。判定は
「1年=2期(各6か月)」に分けて行われ、各期の上限は
その期に実際に支払った賃金総額です(詳細は後章で表にまとめます)。

活用のメリット

  • 採用・定着コストの抑制(離職抑制・再採用コストの減少)
  • 社内制度の整備を促すことで生産性・エンゲージメントが向上
  • 公共調達・取引先評価におけるプラス効果が期待できる

第2章 支給対象者の要件

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「障害者正社員化コース」の助成金は、対象となる労働者と事業所の双方が
厚生労働省の定める要件を満たす場合に支給されます。
要件を満たさない場合は申請できませんので、必ず事前に確認してください。

対象となる労働者の要件

  • 障害者手帳の所持
    身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳など、
    公的機関から交付された手帳を所持していること。
  • 転換前の雇用形態
    有期契約労働者または無期契約労働者であること(正社員は除く)。
    ※有期契約=契約期間があらかじめ決まっている契約。
    ※無期契約=期間の定めはないが職務や勤務地が限定される場合がある。
  • 転換後の雇用形態
    雇用期間の定めがない正社員(勤務地限定・職務限定・短時間正社員を含む)であること。
  • 所定労働時間が週30時間以上であること
  • 雇用保険および社会保険の被保険者であること
  • 転換前後で労働条件通知書や就業規則等の整備が行われていること
  • 申請日より前6か月間、事業主都合による解雇や退職勧奨をしていないこと

対象となる事業所の要件

  • 労働保険・社会保険の適用事業所であること
  • 障害者雇用促進法、労働基準法、最低賃金法など関係法令を遵守していること
  • 過去に助成金の不正受給や重大な法令違反を行っていないこと
  • 対象労働者の転換を適正な手続きで行っていること(契約更新や雇用契約書の取り交わし等)
  • 助成金の申請や受給に必要な帳簿・書類を整備・保管していること
  • 申請対象労働者の雇用管理改善に必要な就業規則・賃金規程等が明文化されていること

用語整理

有期契約労働者
契約期間が決まっており、期間満了で雇用終了の可能性がある労働者。
無期契約労働者
期間の定めがなく働く労働者。ただし勤務地や職務が限定される場合がある。
限定正社員
勤務地・職務・労働時間が限定されるが、雇用期間の定めがない正社員。

第3章 支給額と計算方法(障害者正社員化コース)

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支給額は ①転換パターン(有期→正規/有期→無期/無期→正規)と ②企業規模(中小企業/大企業)で決まります。支給は「1年=2期(各6か月)」に分けて判定・支給され、各期の支給額はその期に実際に支払った賃金総額を上限とします。

1. 支給額(障害区分 × 転換パターン)

① 重度身体・重度知的・精神

転換パターン中小企業(各期 × 2期=年間)大企業(各期 × 2期=年間)
有期 → 正規60万円 ×2 = 120万円45万円 ×2 = 90万円
有期 → 無期30万円 ×2 = 60万円22.5万円 ×2 = 45万円
無期 → 正規30万円 ×2 = 60万円22.5万円 ×2 = 45万円

② 重度以外の身体・重度以外の知的・発達・難病・高次脳機能障害

転換パターン中小企業(各期 × 2期=年間)大企業(各期 × 2期=年間)
有期 → 正規45万円 ×2 = 90万円33.5万円 ×2 = 67.5万円
※第2期は34万円
有期 → 無期22.5万円 ×2 = 45万円16.5万円 ×2 = 33万円
無期 → 正規22.5万円 ×2 = 45万円16.5万円 ×2 = 33万円

※「各期の上限」は、その期に実際に支払った賃金総額です(上限超の支給は不可)。

2. 企業規模の判定(中小企業か大企業か)

どちらか片方でも満たせば「中小企業」です(資本金がない場合は従業員数で判定)。

業種中小企業の基準(いずれか)
製造業・建設業・運輸業資本金3億円以下 または 従業員300人以下
卸売業資本金1億円以下 または 従業員100人以下
小売業資本金5,000万円以下 または 従業員50人以下
サービス業資本金5,000万円以下 または 従業員100人以下

3. 簡単な計算例

例:中小企業で「有期 → 正規(重度以外)」に転換。各期の賃金総額は40万円。

  • 各期の上限:45万円だが、実賃金が40万円なので各期40万円まで支給可
  • 2期合計:40万円 ×2 = 80万円(年90万円の上限に達していないため、実賃金ベースで80万円)

※就業規則・同意・賃金減額禁止・雇保/社保の適用等、事業主・労働者側の要件を満たすことが前提です(前章参照)。

第4章 申請手続きの流れと注意点

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障害者正社員化コースを利用するには、雇用契約の変更だけでなく、申請書類や証拠資料の整備が必要です。以下は、標準的な申請の流れです。

1. 手続きの流れ

  1. 事前準備

    • 助成金の制度内容と要件を確認
    • 就業規則や賃金規程の改定(必要な場合)
    • 労働者本人の同意取得
    • 変更後の雇用契約書・職務内容の明確化
  2. キャリアアップ計画の提出

    • 事業所単位で計画書を作成し、労働局へ提出
    • 提出期限:転換実施日の前日まで
  3. 雇用形態の転換実施

    • 実際に雇用契約を有期→正規/有期→無期/無期→正規へ変更
    • 転換日以降、対象労働者は新条件で勤務開始
  4. 支給申請

    • 転換後6か月ごと(1期)に賃金支払い実績を証明する書類とともに申請
    • 賃金台帳、出勤簿、雇用契約書などを添付
  5. 審査・支給決定

    • 労働局が審査後、問題がなければ指定口座に助成金が振り込まれる

キャリアアップ計画とは、非正規雇用労働者のキャリア形成や処遇改善を目的として、事業主が今後実施する取り組み内容をまとめた計画書です。
本助成金では、どの従業員を対象に、いつ・どのように雇用形態を転換し、賃金や福利厚生をどの程度改善するのかを明確に記載します。
例えば「2025年4月1日にAさんを有期から正社員へ転換し、基本給を○万円引き上げる」など、対象者・実施日・改善内容を具体的に盛り込み、転換実施日の前日までに労働局へ提出する必要があります。

2. 注意点

  • 計画書の事前提出が必須:転換後に提出しても認められないため、スケジュール管理が重要です。
  • 雇用契約の実態が伴っていること:名ばかりの正社員化や形式的な契約変更では不支給となります。
  • 賃金総額の確認:支給額は実際の賃金総額が上限となるため、計画段階で見込み額を試算しておくとスムーズです。
  • 就業規則や賃金規程の未整備は減額・不支給の原因:制度変更は文書化し、労働基準監督署への届け出も忘れないようにします。
  • 障害者手帳や診断書の有効性:対象者の障害区分は証明書類で確認されるため、最新のものを準備します。

第5章 活用事例と成功のポイント

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障害者正社員化コースは、制度要件を満たせば確実に助成金を受けられる可能性がありますが、
実際にどのように活用されているのかを知ることで、自社の取り組みに応用できます。
ここでは、代表的な活用事例と、受給までスムーズに進めるための成功ポイントを紹介します。

1. 活用事例

事例1:製造業A社(中小企業)

  • 従業員数:80名(うち障害者3名)
  • 有期雇用の精神障害者1名を正社員へ転換
  • 転換にあわせ、職務内容を明確化し、研修制度を導入
  • 支給額:90万円(重度以外・有期→正規、中小企業区分)
  • 効果:離職率の低下と生産ラインの安定稼働を実現

事例2:ITサービスB社(大企業)

  • 従業員数:500名(うち障害者12名)
  • 無期雇用の身体障害者2名を正社員へ転換
  • 転換後のキャリアプランと賃金体系を改善
  • 支給額:90万円(重度身体・無期→正規、大企業区分)
  • 効果:エンゲージメント向上とCSR評価の上昇

2. 成功のポイント

  • 要件の事前確認を徹底:労働者・事業所双方の要件を満たしているか、申請前にチェックリストで確認。
  • キャリアアップ計画の精度:対象者、実施日、改善内容を具体的かつ数値で明示する。
  • 証拠資料の保管:雇用契約書、出勤簿、賃金台帳、就業規則改定記録などを転換日から整理・保管。
  • 転換後のフォロー:職場適応や業務遂行に必要なサポート体制を整えることで、離職防止につながる。
  • 専門家の活用:社会保険労務士や障害者雇用コンサルタントに事前相談するとミスや不備を防げる。

3. よくある失敗例

  • 転換実施後に計画書を提出してしまい、不支給になった。
  • 賃金改善が形式的で、実質的な待遇改善と認められなかった。
  • 障害者手帳の有効期限が切れており、対象外と判断された。
  • 書類不備や誤記で審査が長期化し、受給までに半年以上かかった。

まとめ

障害者正社員化コースは、単なる助成金制度ではなく、障害者雇用の質を高め、
企業の持続的成長に寄与する取り組みです。
成功の鍵は、要件の遵守と計画的な制度運用、そして転換後の定着支援です。
本章の事例やポイントを参考に、自社の状況に合わせた最適な活用方法を検討してください。

第6章 FAQとまとめ

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1. よくある質問(FAQ)

Q1. 障害者雇用の経験がない企業でも申請できますか?

はい、可能です。ただし、対象となる労働者が要件を満たしていることが必要です。
具体的には、障害者手帳(身体・知的・精神)や特定疾患医療受給者証など、
制度で定められた証明書を有している必要があります。

Q2. 転換後に退職された場合、助成金はどうなりますか?

支給対象期間(6か月)を満たさずに退職した場合、その期の助成金は支給されません。
また、次期以降の支給も行われませんので、転換後の定着支援が重要です。

Q3. 契約社員から無期雇用への転換も対象になりますか?

はい、対象です。無期雇用への転換も支給対象ですが、正社員化よりも支給額は低く設定されています。
また、無期雇用への転換は賞与・退職金制度や昇給制度の適用義務はありません。

Q4. キャリアアップ助成金の他コースと併用できますか?

原則として、同一労働者・同一転換について他コースと併用はできません。
ただし、異なる対象者や別の制度であれば併用可能な場合がありますので、
事前にハローワークや労働局へ確認してください。

Q5. 申請書類の作成は自社で行うべきですか?

自社で作成可能ですが、要件や書類が複雑なため、社会保険労務士などの専門家に依頼する企業も多いです。
特に初めて申請する場合は、専門家のチェックを受けると安心です。

2. 全体のまとめ

障害者正社員化コースは、障害者の安定雇用と企業の人材確保を同時に実現できる有効な助成金制度です。
成功の鍵は、要件の正確な把握、計画的な転換実施、転換後の定着支援にあります。
本記事で紹介した要件、支給額、事例、成功ポイント、FAQを参考に、
自社に適した形で制度を活用してください。
また、制度は年度ごとに変更される場合があるため、最新情報の確認を怠らないことが重要です。