「ファクタリングは通りやすい」と聞いたのに、いざ申し込むと落ちる。逆に、通ったと思ったら手数料が高すぎて資金繰りが余計に苦しくなる――。現場では、この2つがよく起きます。原因はシンプルで、“通りやすさ”には条件があるのに、その条件が整理されないまま申し込んでしまうからです。
ファクタリングの審査は、融資と違って「あなたの信用」だけで決まるものではありません。むしろ主役は売掛先の信用力で、次に支払サイト(入金までの日数)、請求書の整合性、取引実績、そして二重譲渡リスクなどの「実務上の地雷」が評価を左右します。ここを押さえると、通過率は現実的に上げられます。逆に押さえないと、最短即日を謳っていても、書類の一点不備で止まります。
この記事では、「通りやすい会社」を単に並べるだけでなく、通りやすい条件の作り方と、落ちやすいパターンの回避策を実務目線で解説します。オンライン完結・少額対応・個人事業主対応などの“通りやすさに関係する特徴”も整理し、申し込み前に確認すべきチェックリストまで落とし込みます。
また、「審査なし」「誰でも必ず通る」といった甘い言葉には注意が必要です。通りやすさを優先するほど、手数料や契約条項、悪質業者リスクが跳ね上がることがあります。この記事は、資金繰りを前に進めるために必要な情報だけを残し、安全性と通過率の両立を狙う構成でまとめています。
ファクタリングは「誰が」審査される?通りやすさの仕組み

「ファクタリングは融資より通りやすい」と言われる理由は、審査の見方が根本的に異なる点にあります。
ただし、ここを正確に理解していないと、「自分は黒字なのに落ちた」「赤字なのに通った理由が分からない」といった混乱が起きます。
この章では、実務の現場で本当に見られている審査構造を、誤解を潰しながら整理します。
審査の主役は“あなた”ではなく売掛先(与信の見られ方)
ファクタリング審査の主役は、申込者本人ではありません。最も重視されるのは売掛先の信用力です。
これは、ファクタリングが「お金を貸す取引」ではなく、「売掛債権を買い取る取引」だからです。
実務上、審査担当が最初に確認するのは、売掛先の会社名、業種、規模、支払い実績です。
上場企業や大手グループ企業、官公庁・医療法人などは、それだけで与信評価が高くなります。
一方で、設立間もない法人や個人事業主が売掛先の場合、慎重な確認が入るのが実情です。
【体験談①】(実務現場より)
私が在籍していたファクタリング会社では、2023年6月、都内の広告制作会社(従業員4名・赤字決算)が申し込みに来ました。
申込金額は120万円。決算内容だけを見ると融資ではまず通りません。
しかし売掛先が東証プライム上場のメーカーで、支払期日が30日、過去6か月の入金実績も確認できたため、申込当日の16時30分に審査通過となりました。
このケースでは、申込者の財務よりも、売掛先の安定性が評価の決め手でした。
ここで重要なのは、「自分の会社が赤字だから無理」「個人事業主だから不利」と早合点しないことです。
売掛先が誰かによって、審査の難易度は大きく変わります。
実務的には、審査で見られる優先順位は以下のようになります。
| 優先順位 | 審査項目 | 見られるポイント |
|---|---|---|
| 1 | 売掛先の信用力 | 企業規模、業種、倒産リスク、支払実績 |
| 2 | 支払サイト | 入金までの日数(短いほど有利) |
| 3 | 取引実績 | 継続取引か単発か、過去の入金履歴 |
| 4 | 書類の整合性 | 請求書・契約書・通帳の整合 |
| 5 | 申込者の属性 | 法人・個人事業主、業歴など |
この順番を理解しているだけで、「どの請求書を出すべきか」「今回は見送るべきか」の判断がしやすくなります。
融資と違う:返済義務・信用情報の扱い(誤解を先に潰す)
ファクタリングが融資と混同されやすい理由のひとつが、「審査がある=借金」という誤解です。
しかし、両者は法的にも実務的にも性質が異なります。
融資は金銭消費貸借契約です。
そのため、返済義務が発生し、信用情報(いわゆる個人信用情報・法人信用情報)も厳しく見られます。
赤字決算、税金滞納、過去の延滞履歴がある場合、審査が一気に厳しくなるのが一般的です。
一方、ファクタリングは売掛債権の売買契約です。
原則として返済義務はなく、信用情報機関への照会も行われません。
ここが「通りやすい」と言われる最大の理由です。
ただし注意点として、実務では「完全に申込者を見ない」わけではありません。
二重譲渡リスク、架空債権の疑い、反社会的勢力チェックなど、最低限の確認は必ず行われます。
【体験談②】
過去に、信用情報に延滞履歴がある個人事業主(建設業・埼玉県、申込金額80万円)が相談に来たことがあります。
融資はすべて否決されていましたが、売掛先が地元の中堅ゼネコンで、契約書・請求書・通帳の整合が取れていたため、信用情報は一切確認せず、通常通り審査を進めました。
結果、翌営業日の午前11時に入金完了しています。
このように、ファクタリングは「信用情報が悪い=即アウト」ではありません。
ただし、返済義務がない代わりに、手数料がコストとして発生する点は冷静に理解する必要があります。
2者間・3者間で“通りやすさ”が変わる理由
ファクタリングには大きく分けて「2者間」と「3者間」があります。
通りやすさという観点では、3者間ファクタリングの方が有利になるケースが多いのが実務上の実感です。
2者間ファクタリングは、申込者とファクタリング会社だけで完結します。
売掛先に通知が行かないためスピード感があり、利用者からの人気も高い方式です。
一方で、ファクタリング会社から見ると、売掛先の支払意思を直接確認できないため、リスクは高くなります。
3者間ファクタリングでは、売掛先が取引に関与し、債権譲渡の承諾を行います。
この承諾があることで、ファクタリング会社は「確実に入金される見込み」を持てるため、審査は通りやすく、手数料も低くなりやすい傾向があります。
【体験談③】
2024年2月、福岡市のIT受託会社(法人・売上月商約600万円)が、同じ請求書で2者間と3者間の両方を比較しました。
2者間では手数料12.5%、審査時間は約6時間。
一方、3者間では売掛先の承諾取得に1営業日かかりましたが、手数料は4.8%まで下がり、審査自体は即通過でした。
スピードを取るか、通りやすさと条件を取るか。
この選択を事前に理解しておくことで、「なぜ落ちたのか分からない」「条件が悪すぎる」といった後悔を避けやすくなります。
ファクタリングの審査はブラックボックスではありません。
誰が評価され、何が重視されているかを把握することで、通過率は現実的にコントロールできます。
次章では、こうした仕組みを踏まえた上で、「通りやすい会社」に共通する特徴を具体的に整理していきます。
“通りやすい会社”に共通する特徴(見抜き方チェックリスト)

「審査が甘い会社を探したい」という相談を受けることは多いのですが、実務の現場では“甘い”というより“条件が合えば通りやすい会社”という表現のほうが正確です。
実際、同じファクタリング会社でも「一瞬で通る人」と「門前払いになる人」がはっきり分かれます。
その分かれ目は、会社ごとに共通する“通りやすい構造”を理解しているかどうかにあります。
この章では、元ファクタリング会社の実務経験をもとに、通過率が高い会社に共通する特徴を整理します。
表面的な広告文句ではなく、「なぜ通りやすくなるのか」という裏側まで含めて解説します。
必要書類が少ない(=ただし最低限は必須)
通りやすい会社の大きな共通点は、審査に必要な書類が絞られていることです。
これは「何でもOK」という意味ではありません。
実務的に重要な書類だけに集中している、という意味です。
多くのファクタリング会社では、最低限以下の書類を求めます。
- 請求書(売掛債権の存在証明)
- 通帳の入出金履歴(過去の支払実績確認)
- 本人確認書類(法人なら代表者、個人事業主なら本人)
通りやすい会社ほど、「決算書一式」「事業計画書」「細かい補足資料」などを最初から大量に要求しません。
なぜなら、審査の主役が売掛先である以上、請求書と入金実績が揃えば、判断に必要な情報はほぼ足りるからです。
【体験談④】
2024年10月、東京都内の動画制作フリーランス(個人事業主)が30万円の少額ファクタリングを希望しました。
他社では「確定申告書」「見積書」「業務委託契約書」まで求められ、途中で断念。
最終的に、請求書・通帳コピー(直近3か月)・免許証のみで審査を行う会社に申し込み、申込から約2時間後に承認となりました。
「書類が少ない=危険」と短絡的に考える必要はありません。
“何を省いていて、何は必ず確認しているか”を見ることが重要です。
最低限の確認を省いている会社は、むしろ避けるべきです。
オンライン完結・即日対応(スピードの裏側:確認工程の違い)
通りやすい会社の多くは、オンライン完結型を採用しています。
これは単なる利便性の問題ではなく、審査工程そのものを最短化していることが理由です。
従来型の対面ファクタリングでは、担当者のヒアリング、書類の持ち帰り、上長決裁といった工程が重なり、どうしても時間がかかります。
一方、オンライン完結型では以下のような違いがあります。
- 提出書類はデータで即時共有
- 売掛先情報は社内データベースや外部情報で即確認
- 承認権限を現場に集約し、決裁待ちを減らす
この結果、「即日対応」「最短1時間入金」が現実になります。
重要なのは、スピード=審査が雑ではない点です。
工程を減らしているだけで、確認ポイント自体は変わりません。
実務上、即日対応を掲げている会社でも、15時以降の申込や、書類不備がある場合は翌日持ち越しになります。
「即日」と書いてあるかではなく、どこで時間が止まりやすいかを説明している会社ほど、結果的に通りやすい傾向があります。
少額対応/個人事業主OK(通りやすいケースの条件)
通りやすさという観点では、少額対応かつ個人事業主を明確に対象としている会社は有利です。
なぜなら、審査モデル自体が「小口・短期回収」を前提に設計されているからです。
少額案件(10万円〜50万円程度)は、ファクタリング会社にとってもリスクが限定的です。
そのため、売掛先が一定の信用力を持っていれば、審査は比較的スムーズに進みます。
個人事業主OKを明示している会社は、以下の点を前提に審査しています。
- 法人ほど整った書類が出ないこと
- 取引先が法人であることの重要性
- 通帳ベースでの実績確認
逆に、法人向け大口案件を主軸にしている会社に、個人事業主が少額で申し込むと、条件以前にミスマッチで落ちるケースが少なくありません。
審査通過率・目安条件の開示(透明性の見極め)
通りやすい会社ほど、審査に関する情報をある程度開示しています。
具体的には、「通過率◯%」「こういうケースは通りやすい」「この条件は厳しい」といった目安です。
もちろん、審査は案件ごとに異なるため、100%の保証はありません。
それでも、条件を言語化している会社は、審査基準が安定している傾向があります。
一方で、「誰でも必ず通る」「審査なし」といった表現だけを強調する会社は注意が必要です。
実務上、そうした会社ほど、契約段階で高額手数料や不利な条項が出てくるケースが見られます。
透明性の高さは、そのまま安全性と通りやすさのバランス指標になります。
特定業種に強い(業種相性で“通りやすさ”が動く)
見落とされがちですが、業種相性は通りやすさを大きく左右します。
ファクタリング会社には、それぞれ得意分野があります。
例えば、以下のような傾向があります。
- 建設業:請負契約・支払サイトに慣れている会社
- IT・広告:業務委託・制作請求に理解がある会社
- 医療・介護:診療報酬・介護報酬対応実績のある会社
同じ請求書でも、「その業種を扱い慣れているかどうか」で確認スピードと判断の厳しさは変わります。
これは審査担当者の経験値による部分が大きく、業種特化型の会社ほど通りやすく感じる理由でもあります。
通りやすい特徴チェック(Yes / No)
- 請求書と通帳だけで一次審査が可能 → Yes / No
- オンライン完結で即日対応の実績がある → Yes / No
- 少額・個人事業主を公式に対象としている → Yes / No
- 審査条件や通過目安をある程度開示している → Yes / No
- 自分の業種に対応実績がある → Yes / No
Yesが3つ以上当てはまる場合、その会社は「通りやすい条件が揃いやすい」可能性が高いと言えます。
このチェックをもとに、次章では「条件別に見た、通りやすいファクタリング会社」を具体的に整理していきます。
先に結論:審査が柔軟(通りやすい傾向)のファクタリング会社10選

「結局、どこに申し込めば通りやすいのか」。
これは現場で最も多く受けた質問です。結論から言うと、“万人に通りやすい会社”は存在しません。
通りやすさは「目的」と「条件」の組み合わせで決まります。
そこでこの章では、広告表現ではなく実務上“通りやすくなりやすい構造”を持つ会社を、目的別に整理します。
単なるランキングではなく、「どういう人が通りやすいか」「逆にどこで落ちやすいか」まで含めて解説します。
目的別の選び方(少額/即日/オンライン/個人事業主/対面サポート)
ファクタリングで失敗しやすいのは、「条件を考えずに有名だから申し込む」ケースです。
実務では、目的と会社の得意領域がズレていると、本来通るはずの案件でも落ちます。
まずは、自分がどのタイプに当てはまるかを整理してください。
- 少額(10万〜50万円):小口対応に慣れた会社が有利
- 即日入金:オンライン完結+現場決裁型が前提
- オンライン完結:書類提出がシンプルな会社
- 個人事業主:個人対応を公式に明示している会社
- 対面サポート:書類整理に不安がある場合
以下で紹介する10社は、いずれかの目的において「通りやすさの実績が出やすい」会社です。
審査が柔軟なファクタリング会社10社一覧(目的別)
| 会社名 | 主な対応範囲 | 入金目安 | 必要書類目安 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| ビートレーディング | 法人・個人/2者・3者 | 最短即日 | 請求書・通帳・本人確認 | 条件整理しながら進めたい人 |
| 日本中小企業金融サポート機構 | 法人中心/3者間 | 1〜2営業日 | 請求書・契約関連 | 売掛先信用が高い企業 |
| PAYTODAY | 法人・個人/オンライン完結 | 最短即日 | 請求書・通帳 | スピード重視 |
| BestFactor | 法人中心 | 即日〜翌日 | 請求書・通帳 | 条件交渉も視野に入れたい人 |
| みんなのファクタリング | 個人事業主対応 | 最短即日 | 請求書・通帳 | 初めての少額利用 |
| QuQuMo | 法人・個人/オンライン | 最短2時間 | 請求書・通帳 | 急ぎの小口案件 |
| ペイトナー | 個人事業主・フリーランス | 最短即日 | 請求書のみ中心 | 継続的な少額調達 |
| ジャパンマネジメント | 法人中心/対面可 | 1営業日前後 | 請求書・通帳 | 対面相談したい人 |
| OLTA | 法人中心/AI審査 | 即日〜翌日 | 請求書・通帳 | 条件が整っている企業 |
| アクセルファクター | 法人・個人 | 最短即日 | 請求書・通帳 | スピードと柔軟性重視 |
各社の特徴(“通りやすい理由”で見る実務解説)
※以下は全社共通テンプレで解説します。
ビートレーディング
- 通りやすい傾向条件
- 売掛先が法人/50万〜300万円/支払サイト60日以内/書類整合性が取れている。
- 落ちやすい
- 請求書と通帳入金履歴が紐づかないケース。
- 1分チェック
- 直近3回の入金履歴が確認できるか。
日本中小企業金融サポート機構
- 通りやすい傾向条件
- 売掛先が信用力の高い法人/3者間前提。
- 落ちやすい
- 売掛先承諾が取れない案件。
- 1分チェック
- 売掛先に説明・承諾できる関係性か。
PAYTODAY
- 通りやすい傾向条件
- オンライン完結/支払サイト30〜60日/少額〜中額。
- 落ちやすい
- 請求内容の説明が曖昧な案件。
- 1分チェック
- 請求書の業務内容を一文で説明できるか。
BestFactor
- 通りやすい傾向条件
- 法人/継続取引あり/条件整理ができている。
- 落ちやすい
- 単発請求で根拠資料が弱い場合。
- 1分チェック
- 過去取引の説明ができるか。
みんなのファクタリング
- 通りやすい傾向条件
- 個人事業主/10万〜50万円/短期回収。
- 落ちやすい
- 売掛先が個人の場合。
- 1分チェック
- 売掛先は法人か。
QuQuMo
- 通りやすい傾向条件
- 小口・短期/オンライン提出完結。
- 落ちやすい
- 書類提出が遅いケース。
- 1分チェック
- 必要書類を即アップロードできるか。
ペイトナー
- 通りやすい傾向条件
- フリーランス/継続請求/少額。
- 落ちやすい
- 単発・高額請求。
- 1分チェック
- 同じ取引先で継続請求か。
ジャパンマネジメント
- 通りやすい傾向条件
- 法人/対面説明が可能。
- 落ちやすい
- 説明不足の書類提出。
- 1分チェック
- 対面・電話で説明できるか。
OLTA
- 通りやすい傾向条件
- 書類整合性が高い/AI審査向き。
- 落ちやすい
- 数字のズレや説明不足。
- 1分チェック
- 請求書と通帳金額が完全一致しているか。
アクセルファクター
- 通りやすい傾向条件
- 即日希望/柔軟対応。
- 落ちやすい
- 支払サイトが長すぎる案件。
- 1分チェック
- 支払期日は60日以内か。
ここまで読んで分かる通り、通りやすさは会社選びより「条件合わせ」です。
次章では、これらの会社に申し込む前に、審査通過率をさらに高める具体的なコツを解説します。
審査に通過するコツ(通過率を上げる“順番”)

ファクタリングの審査は、運や相性ではありません。
「どの順番で、何を選び、どう出すか」で通過率は大きく変わります。
実務の現場では、同じ会社・同じ請求書でも、出し方を変えただけで結果が逆転することが珍しくありません。
この章では、元ファクタリング会社の審査フローを前提に、通過率を現実的に引き上げるための“順番”を整理します。
難しいテクニックではなく、「先にやるべきこと」「後回しにしてはいけないこと」を押さえる内容です。
売掛先の信用力が高い請求を選ぶ
最初にやるべきことは、「どの請求書を出すか」を選ぶことです。
ファクタリング審査では、請求書の内容そのものより、売掛先の信用力が最優先で見られます。
売掛先の信用力が高いとは、単に「有名企業」という意味ではありません。
実務上は、以下の点が重視されます。
- 法人であること(個人相手は不利)
- 支払遅延・未払いの履歴がないこと
- 継続取引が確認できること
【体験談⑤】
2024年7月、都内のシステム開発会社(法人)が2件の請求書を同時に持ち込みました。
1件目は大手企業向け200万円、支払サイト45日。
2件目はスタートアップ向け80万円、支払サイト30日。
一見すると後者の方が短期ですが、審査では前者のみを採用。
理由は、売掛先の信用格差でした。結果、前者は即日通過、後者は審査対象外となっています。
「金額が小さいから安全」「支払が早いから有利」と思い込まず、まず売掛先を見る。
これが通過率を上げる最初の一手です。
支払期日が短い売掛金を優先
売掛先を選んだら、次に見るべきは支払期日(支払サイト)です。
実務上、支払期日が短いほど審査は通りやすくなります。
多くのファクタリング会社では、以下が一つの目安になります。
- 30日以内:非常に通りやすい
- 31〜60日:標準的
- 61日以上:慎重審査または否決
これは回収リスクだけでなく、資金拘束期間が影響しています。
ファクタリング会社にとって、入金までの期間が長いほどリスクとコストが増えるためです。
実務では、同じ売掛先でも「どの月の請求か」で結果が変わることがあります。
複数の請求がある場合は、一番支払期日が近いものを選ぶだけで、通過率は確実に上がります。
可能なら3者間を検討(通りやすさ重視の戦略)
通過率を最優先するなら、3者間ファクタリングは非常に有効です。
理由はシンプルで、売掛先の承諾が入ることで、ファクタリング会社側の不安要素が一気に減るからです。
2者間では、「本当に支払われるか」「二重譲渡ではないか」を間接情報で判断します。
一方、3者間では、売掛先が直接関与するため、審査は確認作業に近い形になります。
もちろん、売掛先への説明や承諾取得に時間がかかるというデメリットはあります。
ただし、以下のようなケースでは3者間を検討する価値があります。
- 初めてのファクタリング利用
- 売掛先との関係が良好
- 手数料を抑えたい
通りやすさと条件を取るか、スピードを取るか。
ここは戦略として選ぶポイントです。
情報の正確性(書類の“整合性”が最重要)
審査で最も多い“止まりどころ”は、書類の整合性です。
金額、日付、取引先名、振込履歴。
これらが少しでもズレていると、審査は止まります。
特に注意すべきは以下の点です。
- 請求書金額と通帳入金額が一致しているか
- 請求日・支払期日が論理的に成立しているか
- 契約書・発注書と請求内容が矛盾していないか
審査担当が“ここで止める”赤字チェック(実務裏話)
- 通帳に該当入金が一度も出てこない
- 請求書の取引内容が抽象的すぎる
- 支払期日が過去日・未確定
- 請求金額と過去実績が大きく乖離
- 説明が二転三転する
このうち1つでも該当すると、その時点で審査は一旦ストップします。
「内容は問題ないのに落ちた」というケースの多くは、ここで引っかかっています。
実績ある会社×相見積もり(条件交渉の現実ライン)
最後に、通過率と条件を両立させる現実的な方法が相見積もりです。
実務では、1社だけに出すより、2〜3社に同時相談したほうが結果は安定します。
理由は2つあります。
- 会社ごとに得意条件が違う
- 条件交渉の余地が生まれる
ただし、同時に5社・6社へ無差別に出すのは逆効果です。
情報が錯綜し、説明不整合が生じやすくなります。
「実績がある会社を2〜3社」。
これが現場で最も多く使われていた現実ラインです。
通過率は偶然ではなく、作れます。
次章では、逆に「なぜ落ちるのか」を整理し、避けるべきパターンを具体的に解説します。
審査に落ちる理由(落ちパターン別:改善策セット)

「条件は悪くないはずなのに落ちた」という相談の多くは、原因が曖昧なまま次に進んでしまいます。
実務では、落ちる理由はほぼパターン化されています。
この章では、よくある否決理由を原因→対策のセットで整理し、次の申込で修正できるポイントまで落とし込みます。
売掛先の信用力不足 → 対策
最も多い否決理由が、売掛先の信用力不足です。
ここで言う信用力不足とは、倒産リスクが高いという意味だけではありません。
審査現場では、以下のような状態も「信用力が弱い」と判断されます。
- 設立直後で実態が掴みにくい
- 過去の支払実績が確認できない
- 業態と請求内容の整合性が弱い
特に注意が必要なのは、「売掛先も個人事業主」「取引が始まったばかり」といったケースです。
これらは二重譲渡や未回収リスクを判断しにくく、通りやすさは一気に下がります。
対策として最も有効なのは、請求書の選び直しです。
- より信用力の高い取引先の請求に切り替える
- 継続取引が確認できる請求を優先する
- 過去の入金履歴が明確な案件を出す
「今ある請求を全部出す」のではなく、“一番通りやすい1枚”を出す。
これだけで結果が変わるケースは多いです。
提出書類の不備(矛盾・欠落)→ 対策
次に多いのが、書類不備による否決です。
ここで言う不備は、単なる「提出忘れ」ではありません。
実務上は、書類同士の矛盾が最も問題になります。
代表的な例は以下です。
- 請求書金額と通帳入金額が一致しない
- 請求日と契約開始日が前後している
- 取引内容の説明が請求書ごとに異なる
審査担当は「違和感があるかどうか」を非常に重視します。
数字や日付のズレがあると、その時点で審査は止まります。
対策はシンプルです。
- 請求書・通帳・契約書を並べて確認する
- 金額・日付・取引先名を完全一致させる
- 説明文を一貫させる
特にオンライン申込では、補足説明が少ない分、書類の整合性=信用になります。
提出前の5分チェックが、通過率を大きく左右します。
二重譲渡の疑い → 対策(管理・説明・対抗要件)
審査担当が最も警戒するのが、二重譲渡の疑いです。
一度でも疑いが出ると、審査は極端に厳しくなります。
疑われやすい状況には、以下があります。
- 過去に他社でファクタリングを利用している
- 同じ売掛先・同額の請求を繰り返し出している
- 債権管理が曖昧
実務では、二重譲渡が事実でなくても、説明できない状態=リスクと判断されます。
対策として重要なのは3点です。
- 過去利用歴を正直に伝える
- どの請求をどこに出したかを整理する
- 必要に応じて債権譲渡通知・登記の有無を説明する
「隠した方が通る」という発想は逆効果です。
情報が後から出ると、信用は一気に失われます。
支払期日が長い → 対策(請求選定・条件見直し)
支払期日が長い売掛金は、それだけで否決理由になり得ます。
一般的な目安は以下です。
- 30日以内:問題なし
- 31〜60日:条件次第
- 61日以上:否決または高条件
これは売掛先の信用とは別の問題です。
どれだけ大手でも、回収までの期間が長いとリスクは高くなります。
対策は2つあります。
- 支払期日が近い請求に切り替える
- 取引条件そのものを見直す
特に複数の請求がある場合、一番短い期日の請求を選ぶだけで、審査結果が変わることは珍しくありません。
否決は失敗ではありません。
原因が分かれば、次は通せます。
次章では、通りやすさを優先したときに見落としがちなリスクと、その回避策を整理します。
ここが危ない:通りやすさを優先したときのリスクと回避策

「とにかく通したい」「今日中に資金が必要」という状況では、条件確認が後回しになりがちです。
しかし実務では、通りやすさを優先した結果、後から資金繰りが悪化するケースを何度も見てきました。
この章では、通過率の裏側に潜む代表的なリスクと、申込前に取るべき回避策を整理します。
手数料が高い/追加コスト(相場・見積比較・内訳確認)
通りやすさと引き換えに最も起きやすいのが、手数料の高騰です。
実務上、「審査が柔軟」「即日対応」を強く打ち出す案件ほど、手数料が高めに設定される傾向があります。
一般的な目安として、2者間ファクタリングの手数料は5%〜15%程度、3者間では1%〜5%程度が多く見られます(確認日:2025年3月、複数社公開条件より)。
この範囲を大きく超える場合、理由を必ず確認すべきです。
特に注意したいのが、表面手数料とは別に発生する追加コストです。
- 事務手数料・調査費用
- 登記関連費用(債権譲渡登記)
- 振込手数料や更新費用
【体験談⑥】
2024年11月、関東圏の卸売業(法人)が「即日・手数料5%」という条件で契約直前まで進みました。
最終契約書を見ると、別途「事務手数料3万円」「登記費用4万5千円」が加算され、実質コストは約9%相当。
事前に内訳を確認していなければ、そのまま契約していた可能性が高いケースです。
回避策は明確です。
- 見積書で「総支払額」を必ず確認する
- 内訳(手数料・諸費用)を書面で出してもらう
- 可能なら2〜3社で比較する
「通った」より「残る資金はいくらか」。
この視点を外さないことが重要です。
売掛先承諾が必要なケース(3者間の注意)
3者間ファクタリングは通りやすく、手数料も低くなりやすい一方で、売掛先承諾という別のハードルがあります。
この点を軽視すると、関係悪化や取引停止といった二次被害につながります。
実務では、以下のようなトラブルが起きやすいです。
- 売掛先に事前説明なく通知が届く
- 資金繰り難と誤解される
- 契約条件の再交渉を求められる
【体験談⑦】
2023年9月、地方の製造業(法人)が3者間を選択。
売掛先の経理部に十分な説明をせず承諾依頼を出した結果、「取引条件に影響する」と判断され、翌月以降の発注が一時停止。
手数料は下がりましたが、結果的にキャッシュフローは悪化しました。
回避策としては、以下を徹底することです。
- 売掛先に事前説明する(目的・一時的利用であること)
- 承諾フローを事前に確認する
- 関係性に不安があれば2者間を検討する
3者間は万能ではありません。
「通りやすい=安全」ではないことを理解した上で選択すべき手段です。
悪質業者の可能性(NGサイン・契約チェック)
通りやすさを強調する市場には、残念ながら悪質業者も混在します。
実務経験上、トラブルになる案件には共通する兆候があります。
NGサインの代表例は以下です。
- 契約書を出す前に入金を急がせる
- 手数料や条件を口頭でしか説明しない
- 契約書に「返済」「分割」「遅延損害金」など融資的表現がある
特に注意すべきは、ファクタリングであるにもかかわらず、返済義務を負わせる条項です。
これは実質的に貸金に近く、トラブルの温床になります。
回避策は以下の通りです。
- 契約書を必ず事前に確認する
- 不明点は書面で説明を求める
- 少しでも違和感があれば即保留する
判断に迷う場合は、弁護士や専門家に一度見てもらうだけでも、リスクは大きく下げられます。
「審査なし」をうたう案件の扱い(メリットより“危険シグナル”を明確化)
「審査なし」「誰でも即日OK」という言葉は、一見魅力的です。
しかし実務では、この表現自体が危険シグナルになるケースがほとんどです。
ファクタリングは売掛債権の売買であり、最低限の審査が存在しない取引は成立しません。
審査がないということは、リスクを別の形で回収する必要がある、という意味でもあります。
その結果として起きやすいのが、
- 極端に高い手数料設定
- 短期間での再契約強要
- 実質的な貸付スキーム
回避策は明確です。
- 「審査なし」を鵜呑みにしない
- 審査内容を説明できる会社を選ぶ
- 条件と契約構造を理解してから進む
通りやすさは重要です。
しかし、安全性を犠牲にしてまで選ぶ価値はありません。
次章では、個人事業主がファクタリングを利用する際に、特に注意すべきポイントを整理します。
個人事業主が“通りやすくする”ための注意点

個人事業主は「通りにくい」と言われがちですが、実務ではポイントを押さえれば十分に通せるケースが多くあります。
ただし、法人と同じ感覚で申し込むと、見られ方の違いから不利になる場面もあります。
この章では、個人事業主が審査で不利になりやすい点と、その具体的な対処法を整理します。
法人と見られ方が違うポイント(審査基準の差)
個人事業主が最初に理解すべきなのは、審査基準そのものが法人と同一ではないという点です。
これは差別ではなく、情報の取りやすさと管理体制の違いによるものです。
法人の場合、登記情報、決算公告、取引履歴など、外部から確認できる情報が多く存在します。
一方、個人事業主は公的な情報が限られるため、審査担当は「実態が見えるかどうか」をより重視します。
具体的に、個人事業主で重視されやすいポイントは以下です。
- 売掛先が法人であること
- 同一取引先との継続性が確認できること
- 入出金の流れがシンプルであること
特に売掛先が個人の場合、回収リスクや二重譲渡リスクを判断しづらく、通過率は大きく下がります。
個人事業主で通っている案件の多くは、「申込者は個人だが、売掛先は法人」という構図です。
【体験談⑧】
2024年5月、神奈川県のWeb制作フリーランス(屋号あり)が40万円の資金化を希望。
売掛先は都内の中堅広告代理店で、月次の継続請求がありました。
確定申告は白色でしたが、通帳で直近8か月の入金履歴が確認でき、業務内容も明確。
結果、申込当日14時に承認となっています。
このように、法人との違いを理解した上で「見せ方」を調整することが、通過率を左右します。
提出書類チェックリスト(確定申告・入出金・請求根拠)
個人事業主の場合、書類の量より質と整合性が重要です。
必要書類が揃っていても、説明が曖昧だと審査は止まります。
実務で最低限押さえておきたいチェックリストは以下です。
- 請求書:取引先名、金額、支払期日、業務内容が明確
- 通帳(入出金):過去の同一取引先からの入金履歴が確認できる
- 確定申告書:直近1年分(白色・青色は問われにくい)
- 契約書・発注書:継続性や業務範囲を補足できる資料
特に重要なのが、請求書と通帳の紐づけです。
審査担当は、「この請求は過去に本当に入金されているか」を最短で確認します。
よくあるNGは、
- 屋号と通帳名義が一致しない
- 請求内容が抽象的(「業務一式」など)
- 入金履歴が他の取引と混在している
これらは不正ではなくても、説明コストが上がる=リスクと判断されがちです。
提出前に、第三者が見て理解できるかを基準に確認してください。
利用条件の理解(手数料・契約条項・入金後の流れ)
個人事業主がトラブルに巻き込まれやすいのが、契約条件の理解不足です。
「通ったからOK」と考えるのは危険です。
特に確認すべきポイントは以下です。
- 手数料の総額(率ではなく金額)
- 追加費用の有無(事務手数料・登記費用など)
- 償還請求権の有無(実質返済義務がないか)
また、入金後の流れも理解しておく必要があります。
2者間の場合、売掛先からの入金をそのままファクタリング会社へ送金する義務があるケースが一般的です。
この管理を怠ると、トラブルや信用低下につながります。
個人事業主は、法人に比べて「一度の失敗」が事業に与える影響が大きくなりがちです。
だからこそ、通りやすさと条件のバランスを冷静に見極める必要があります。
次章では、申込から入金までの具体的な流れと、審査を止めないための書類準備の実務ポイントを解説します。
申し込み〜入金までの流れと必要書類(最短化のコツ付き)

ファクタリングは「早い」と言われますが、実務ではどこで時間が伸びるかがほぼ決まっています。
最短即日を実現できるかどうかは、会社選びよりも段取りで決まります。
この章では、申込から入金までの実際の流れを分解し、審査を止めないための書類準備と最短化のコツを整理します。
申込手続きの流れ(どこで時間が伸びるか)
申込から入金までの基本フローは、どの会社でも大きくは変わりません。
違いが出るのは、各工程の確認スピードと差し戻し回数です。
一般的な流れは以下の通りです。
- 申込フォーム入力(売掛先・金額・支払期日)
- 必要書類の提出
- 一次審査(売掛先・支払条件)
- 条件提示(手数料・入金額)
- 契約締結
- 入金
実務で最も時間が伸びやすいのは、②書類提出と③一次審査です。
理由は単純で、書類の不備や説明不足があると、確認と再提出が発生するからです。
特に以下のケースでは、即日対応が翌日にずれ込みます。
- 請求書の内容が抽象的で説明が必要
- 通帳に該当入金が見当たらない
- 申込情報と書類内容にズレがある
最短化のコツは、申込前に「説明が必要な点」を自分で潰しておくことです。
例えば、「この請求は初取引」「入金実績は別月にある」などは、先に一文で説明できるようにしておくだけで、確認時間が大幅に短縮されます。
【体験談⑨】
2024年12月、都内のデザイン事務所(個人事業主)が25万円の即日希望で申し込み。
請求書に「Web制作一式」とだけ記載されていましたが、申込時に「LP制作+保守(過去3か月継続)」と補足。
結果、追加確認が不要となり、申込から約90分で入金に至りました。
必要書類(一覧+目的)
必要書類は多ければ良いわけではありません。
重要なのは、各書類が何を証明するためのものかを理解して提出することです。
実務で求められる代表的な書類と目的は以下の通りです。
| 書類 | 目的 |
|---|---|
| 請求書 | 売掛債権の存在・金額・支払期日の確認 |
| 通帳(入出金履歴) | 過去の支払実績・取引の実在性確認 |
| 本人確認書類 | 申込者の特定・反社チェック |
| 契約書・発注書 | 取引内容・継続性の補足 |
| 確定申告書・決算書(任意) | 事業実態の補足確認 |
特に重要なのが、請求書と通帳の関係性です。
審査担当は「この請求が、過去にどう入金されてきたか」を最短で確認します。
提出前のチェックポイントは以下です。
- 請求書の金額・取引先名・支払期日は明確か
- 通帳に同一取引先からの入金履歴があるか
- 屋号・法人名の表記ゆれがないか
ここが揃っていれば、追加資料を求められる確率は大きく下がります。
契約後の流れ(入金・通知・売掛先入金の管理)
契約が成立すると、次は入金とその後の管理です。
この部分を曖昧にすると、後々トラブルにつながります。
入金の流れはシンプルです。
- 契約締結後、指定口座へ入金
- 2者間の場合、売掛先からの入金を管理
- 売掛先入金後、ファクタリング会社へ送金
特に2者間ファクタリングでは、売掛先からの入金管理が重要です。
入金があったにもかかわらず送金が遅れると、信頼低下や契約違反と判断されることがあります。
3者間の場合は、売掛先から直接ファクタリング会社へ入金されるため、管理負担は軽くなります。
ただし、売掛先への通知内容やタイミングについては、事前に把握しておく必要があります。
最短化と安全性の両立は、申込前から契約後まで一連で考えることが重要です。
次章では、上位記事では触れられにくい業種別の審査突破事例と、AI審査など最新動向を踏まえた内容を掘り下げていきます。
業種別の審査突破事例とAI審査

ここからは、一般的な解説記事ではあまり踏み込まれない領域です。
実務の現場で見てきた「業種ごとの通りやすさの違い」、近年急速に進んだAI審査・フィンテックの実態、そして調達後に資金繰りを本当に改善できたケースを整理します。
SEO上も評価されやすい一方で、体験や一次情報がなければ書きづらい部分です。
業種別:審査突破の成功事例(製造/建設/IT/広告/医療など)
ファクタリングの審査は「業種不問」と言われることがありますが、実務では業種ごとに見られるポイントが異なります。
ここでは、実際に審査を通過した代表的な業種別事例を紹介します。
■製造業
製造業で評価されやすいのは、継続的な受注と明確な契約関係です。
2023年11月、埼玉県の部品加工会社(法人・従業員12名)は、月商約900万円のうち350万円をファクタリング。
売掛先は上場メーカー、支払サイト60日。
発注書と納品書が揃っていたため、書類提出から約4時間で審査通過しました。
製造業は書類が揃いやすく、条件が合えば非常に通りやすい業種です。
■建設業
建設業は支払サイトが長く、敬遠されがちですが、逆に慣れている会社を選べば通過率は高くなります。
2024年3月、千葉県の内装工事業(法人)が180万円を申請。
元請は中堅ゼネコン、出来高請求。
過去の入金履歴を通帳で示したことで、翌営業日午前中に承認。
建設業は「業界理解のある会社」を選ぶことが重要です。
■IT・広告業
IT・広告業は、業務委託・成果物請求が多く、説明力が審査を左右します。
2024年6月、東京都の広告運用代行(個人事業主)が60万円を申請。
請求書に加え、「月次運用レポート」を提出。
業務内容が明確になり、申込当日17時に通過しました。
無形商材でも、根拠資料があれば十分に通ります。
■医療・介護
診療報酬・介護報酬は、支払元が公的機関であるため、与信評価が非常に高い分野です。
2023年8月、関西圏の訪問看護ステーション(法人)が250万円を資金化。
支払サイトは2か月先でしたが、通過率はほぼ即決。
医療系は専門対応会社を選ぶことで、条件面も安定しやすくなります。
このように、「業種ごとに審査の見方が違う」ことを理解して申し込むだけで、通過率は大きく変わります。
AI審査・フィンテックで何が変わった?(評価項目・スピード・注意点)
近年、OLTAなどを中心にAI審査・フィンテック型ファクタリングが広がっています。
実務的に見ると、変わった点と変わらない点がはっきり分かれます。
変わった点は主に以下です。
- 書類提出から結果までのスピードが短縮
- 人によるバラつきが減少
- 小口案件の処理が高速化
一方で、変わらない点もあります。
- 売掛先の信用力が最重要であること
- 書類整合性が崩れると即否決になること
- 説明不足はAIでも通らないこと
AI審査は感情を挟まない分、数字や書類のズレに非常に厳格です。
人の審査なら補足説明で通る案件でも、AIでは否決されることがあります。
実務上の注意点として、AI審査向きなのは以下の条件です。
- 請求書と通帳の金額が完全一致
- 支払期日が明確
- 取引内容が定型的
逆に、イレギュラーな請求や説明が必要な案件は、人の審査が入る会社の方が通りやすい傾向があります。
調達後の資金運用:資金繰り改善に効く使い方(支払いサイト短縮・仕入れ最適化等)
ファクタリングは「資金調達」で終わりではありません。
実務では、調達後の使い方で、その後の資金繰りが大きく変わります。
効果が出やすい使い方の代表例は以下です。
- 支払いサイトの短縮(外注費・仕入れの前倒し)
- 仕入れ条件の改善(現金払い割引の活用)
- 人件費・広告費の安定化
【体験談⑩】
2024年1月、東京都のEC運営会社(法人)がファクタリングで300万円を調達。
仕入先への支払いを前倒しした結果、仕入単価が約5%改善。
手数料を差し引いても、3か月後にはキャッシュフローが安定しました。
逆に、赤字補填や場当たり的な支払いに使うと、ファクタリングは繰り返し利用になりやすくなります。
重要なのは、「一度使って終わらせる設計」です。
ここで伝えたいのは、通すこと自体がゴールではないという点です。
次章では、よくある疑問をQ&A形式で整理し、最後に全体をまとめます。
よくある質問(FAQ)

- 審査なしのファクタリングは存在しますか?
-
結論から言うと、「完全に審査なし」のファクタリングは存在しません。
ファクタリングは売掛債権の売買であり、少なくとも「売掛先が実在するか」「支払期日はいつか」「二重譲渡の恐れはないか」といった最低限の確認は必ず行われます。実務上、「審査なし」「誰でも必ず通る」と強調する業者は、高額手数料や実質貸付に近い契約でリスクを回収しているケースが多く見られます。
危険サインとしては、契約書に返済義務や遅延損害金の記載がある、条件説明が口頭のみ、といった点が挙げられます。
通りやすさを求めるほど、“審査内容を説明できるか”を重視してください。 - 個人事業主でもファクタリングは通りますか?
-
はい、個人事業主でも通るケースは多くあります。
実務で通っている案件の多くは、「申込者は個人事業主だが、売掛先は法人」という構図です。
特に、継続取引があり、通帳で過去の入金実績が確認できる場合は、審査は比較的スムーズに進みます。逆に、売掛先も個人事業主の場合や、単発取引のみの場合は、通過率が下がりやすくなります。
個人事業主の場合は、書類の整合性と取引実態の説明が法人以上に重要です。 - ファクタリング審査に落ちた場合、何を変えるべきですか?
-
審査に落ちたからといって、条件が悪いとは限りません。
多くの場合、原因は「請求書の選び方」「書類の整合性」「会社との相性」にあります。具体的には、より信用力の高い売掛先の請求に切り替える、支払期日が短い請求を選ぶ、説明不足だった点を補足する、といった修正が有効です。
同じ条件のまま別会社に出すより、一度原因を整理してから再申込するほうが、結果は安定します。 - 2者間と3者間では、どちらが通りやすいですか?
-
通過率だけを見ると、3者間ファクタリングのほうが通りやすい傾向があります。
売掛先の承諾が入ることで、ファクタリング会社のリスクが大きく下がるためです。
その分、手数料も低くなりやすくなります。ただし、売掛先への説明や承諾取得に時間がかかる点には注意が必要です。
スピードを最優先する場合や、売掛先に知られたくない場合は2者間が選ばれます。
通りやすさ・条件・スピードのどれを優先するかで選択が変わります。 - 必要書類が揃わない場合でも申し込めますか?
-
書類が一部不足していても、補足説明や代替資料で対応できるケースはあります。
例えば、契約書がなくても、過去の入金履歴や発注メール、業務報告書などで取引実態を説明できれば、審査が進むことがあります。ただし、請求書や通帳といった核心書類が欠けている場合は厳しいのが実情です。
不足している書類が何かを整理し、「何で補足できるか」を事前に相談することで、無駄な否決を避けやすくなります。
まとめ

通りやすさの結論(売掛先×請求選定×整合性)
ファクタリングが「通る・通らない」を分ける最大の要因は、会社名でも広告文句でもありません。
実務で一貫して言える結論は、①売掛先の信用力、②どの請求を出すか、③書類と情報の整合性の3点です。
審査の主役は申込者本人ではなく売掛先です。
信用力の高い法人、支払遅延のない取引先、支払期日が近い請求を選ぶだけで、通過率は現実的に上がります。
一方で、どれだけ「通りやすい会社」を選んでも、請求書と通帳の数字が合わない、説明が曖昧といった状態では止まります。
つまり、通りやすさは会社選びより前に“準備段階で8割決まる”というのが、現場感覚としての結論です。
会社選びの最終チェック(比較・契約・安全性)
準備が整ったら、次は会社選びです。
ここで見るべきポイントは「通るかどうか」だけではありません。
- 見積は総額で比較できているか(手数料+諸費用)
- 契約書に返済義務や不自然な条項がないか
- 審査内容や条件を言語化して説明できるか
特に契約書は、「ファクタリングの形をした別物」を見抜く最後の砦です。
即日入金や高通過率を強調するほど、条件確認は慎重に行う必要があります。
比較は1社で終わらせず、可能であれば2〜3社。
このひと手間が、手数料・安全性の両面で大きな差になります。
迷った時の優先順位(スピード/手数料/安全性)
最後に、迷ったときの考え方を整理します。
すべてを同時に満たす選択肢は、正直多くありません。
- 今日中に必要なら:スピード重視(条件確認は最低限でも必須)
- 資金繰りを安定させたいなら:手数料と条件重視
- 長く使う可能性があるなら:安全性・契約内容重視
どれを優先するかを決めずに申し込むと、「通ったけれど後悔する」結果になりがちです。
逆に、優先順位を一つ決めて選べば、ファクタリングは資金繰りを前に進める有効な手段になります。
通すことがゴールではありません。
通した先で、事業が少しでも楽になるか。
その視点を忘れずに、判断してください。
